湿地帯を抜けて隣の村へ
週末の土曜日となった今日は、いつもよりも少し足を伸ばして、グランチェスター・メドウという隣村まで散歩に行ってきました。片道、50分程度。
ところで、池田潔『自由と規律』(岩波新書)という本をご存じでしょうか。慶應義塾大学文学部教授であった池田潔氏が、イギリスのパブリック・スクールのリース校での日々を綴った美しい叙情的な回想であり、またイギリス教育論でもあります。1949年に書かれた著作ですがいまでも長く読み継がれ、私のゼミでもだいたい毎年、3年生のみなさんに一冊目のテキストとして読んで頂いています。
そのリース校、地図を見たら、なんと私の住んでいるフラットから5分ぐらいとのころにあるんですね。ちょうどダウニング・カレッジからグランチェスター・メドウまで向かう同じ方角にあり、その横を通って目的地に向かうことに。記念に写真もとってきました。古い校舎と新しい校舎が混在しており、古い校舎できっと池田少年がかつて学んでいたのですね。もう一世紀近く昔のことですが。
週末ですが駐車場で、中学生らしき少年が車で来た母親とずっと抱擁し合っていたのは、寮生活をしていた息子に久しぶりに会ったからでしょうか。なかなかよい光景です。
『自由と規律』のなかでは、自転車に乗っていた池田少年が、ケム川沿いを自転車で走っていて、転がって落ちるというシーンがあります。その後、生徒の安全を何よりも大切にする先生から愛情を込めた叱責を受ける場面が出て来ますが、きっと今日私が歩いた付近で、そのような出来事があったのかも知れません。舗装されていない道で、自転車ではきっと走りにくかったことと想像します。
自宅を出て歩き始めて10分程度しか経っていないのに、もう辺りは一面緑地となり、牛まで見られるのどかさとなりました。牛を眺めながら、大量に落ちている巨大な牛糞を避けつつ、美しい景観を楽しみながら散策を続けます。楽しい時間です。
Meadowというのは、英語の辞書では、「牧草地、草地」という意味と「川辺の低湿地」という意味と、二つあるようですが、まさにこの二つが混ざっているのがこのグランチェスター・メドウ。1時期間ほどの散歩時間も、あっという間でした。
到着した場所では、以前にケンブリッジの大学院に留学していた方からお薦め頂いたThe Orchard Tea Gardenという屋外を中心としたレストランに向かいました。そこでは美しい庭にチェアがあふれていて、そこでテイクアウトの飲み物や食べ物が食べられます。天国のようですが、みなさんコロナ禍の後の解放感からは、ほぼ満席。そして、私が到着した15分前にすでに食べ物などの販売は終了。その近くのRed Lionというパブでは、こちらも満席で、看板には「夜10時まで席は予約が埋まっています。とってもすいません。」と書かれています。
え、こんなに三密で大丈夫?しかも誰もマスクもしてないし。
イギリスでは今、毎日3万人ほどの新規感染者が出ていて、かなり感染が広がっています。おそらくは、7割以上が二回のワクチンをしているので、一定程度はデルタ株のブレイクスルー感染だと思います。こちらにいる方でも、かなり気を遣っている方と、まあ感染したらしょうがないよね、と諦めて通常通りの生活をしている方といますが、割合では、前者が1割ぐらい、後者が9割ぐらいでしょうか。
ケンブリッジは比較的に、感染予防の意識が高い方が多いと思いますが、それでもみなさん、イギリス人の方々は制限されたり、拘束されたりするのが、好きではないとのこと。このあたりは、アジア諸国の多くと、英米の自由主義諸国では、意識がだいぶ違うのかも。
美しい自然を満喫し、体内にマイナスイオンを吸収して、少しは免疫があがったかもしれません。コロナ禍での在外研究。戸惑うことや、考えることが多い毎日ですが、安全を意識しながら、貴重な時間を有意義に使って行ければと思っています。フェイスブックの投稿など書いている暇があったら、頼んだ仕事をちゃんとしろとお怒りの方、メールを返信しろとご不満の方、これから少しずつ対応していきますので、どうかご海容くださいませ…。
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