見出し画像

禍福はあざなえる縄のごとし

イギリスに来て1ヶ月。予想以上に順調に生活が立ち上がっていると感じるときど、どうしてこう、うまく物事が進まないのだろうと焦るときとが、交互にやってきます。

「禍福はあざなえる縄のごとし」という言葉があります。

これは、慶應義塾の石川忠雄元塾長が書かれた著書のタイトルにもなっていますが、「禍い(わざわい)」と、「幸福」が、まるでよりあわせた「縄」のように交互にやってくる、という意味のようです。まさに、小さな禍いと、小さな幸福が、交互にやってくるという感じでしょうか。

たとえば、今日のお昼のカレッジのダイニングホールで、好物である、毎週金曜日恒例のフィッシュ・アンド・チップスを食べて美味しいなあと小さな幸せを感じたと思ったら、その後胃がもたれて、やはり二日連続であのこってりした油に包まれたメニューは重たいな、と小さな禍いがやってきたり。

画像1

(こちらは、ロンドンのキングス・クロス・ステーションで食べたもの)

まあ、人間の禍や福は、本人に切実であっても、周りから見るとけっこうどうでもよかったりしますよね。私の場合は、自分でも、どういでもよいと思うことばかりですが。


ひさしぶりにイギリスに住んで感じたこと。

まず、お料理がおいしくなっている。これは間違いなく、EU加盟の恩恵ですよね。たとえば、スーパーで、フランス産のPresidentのカマンベールチーズが安く食べられたり、冷凍のピザのクオリティがかなり上がっていたり、これは嬉しい。

四半世紀前に、私が大学院生時代に、史料を見に通ったキューガーデンズ駅の前にあった安価な食堂で、コーヒーを頼むと、インスタントコーヒーが出てきた。目の前で、イギリス製の安いインスタントコーヒー(せめてネスカフェにしてほしい!)をティースプーンで入れているのを見て、ひっくり返りそうになりました。

当時は、「レギュラーコーヒー」というと、インスタントコーヒーが出てきて、「グラインドコーヒー」というと、ちょっとお高い豆を引いたいわゆるふつうのコーヒーが出てくる。流石に今ではそれはないですね。むしろ、スタバもそうですが、イギリスはシアトル系コーヒー店などが溢れていて、歩いているとすぐにカフェがあって結構ありがたい。

外食も美味しいですよね。パブも、イタリアンやフレンチも、けっこうおいしくなっている。とはいえ、ブレグジットで美味しいイタリアンやフレンチを作ってくれていたシェフ、ずいぶんといなくなってしまうんでしょうね。となると、また、インスタントコーヒーの暗黒時代がやってくるのでしょうか?

画像2

個人的にはけっこう、イギリス料理って好きなんですよね。結構美味しいなあというお料理と、これはちょっとひどいかな、と思うことがあるのですが、最近は後者の経験が減ってきた。お金と人が集まると、やはり、よい食材とよいシェフが集まる。ただし、資本主義の原理で、ロンドンのレストランはとにかく高いですよね。パリで、本当に家の近所のちょっとしたビストロとかで、ひっくり返るぐらい美味しいお料理が当たり前に出てきて、すごいな、と思ってました。

そうそう、私が学生の頃に、林望さんの書くエッセイを読むのがすごく好きでした。ユーモアもあり、文体も美しく、抒情的な描写がすばらしい。その林望さんの本の、『イギリスはおいしい』という本が、とてもよく売れましたよね。エッセイを書くお手本のような作品ですよね。なんだか、イギリス料理は美味しいということを書いていたら、あの名著を思い出しました。

林望さんも、ケンブリッジで生活をしていて、大学図書館の日本関連書籍の書肆をまとめるのにご尽力されたと記憶しています。ちょうど、グレートブリテン・ササカワ財団の理事として、短期間ご一緒した時には、子供の頃に憧れていたアイドルに会うような、ちょっと嬉しい気持ちになりました。当時ご尽力されていた、『源氏物語』の現代語訳版が刊行されて、そちらを頂いたことが嬉しかったことを覚えています。

で、イギリスによくいらっしゃる方に人気があるのが、こちらのイングリッシュブレックファスト。つい数日前にロンドンに滞在したホテルで出てきたもので、こちらのレストランはなかなか評判が良いということで、朝食もすごく美味しかったです。なかなか贅沢な時間を楽しみました。とはいいながらも、奥の方にあるiPad Proで、三田にいるゼミ生と繋がって、自主的なオンラインゼミをしながらの朝食でしたが。あまり大きな声ではしゃべれません。

それで、バーミングハムにいた大学院時代は、寮での自炊で簡単なパスタとか作っていました。それが、もう最近はその体力もなくて、カレッジのすぐ目の前のセンズベリーで出来上がったカレーとか、ピザとか、パイとか、そういうのを買って電子レンジやオーブンで温めていただいています。これでも結構美味しいんですよ。さすが大英帝国。インド料理は本当に美味しい。ちょっとした日本でのインド料理店のメニューのよう。

画像3

ということで、秋も更けて来て、気温も低くなり、日照時間も短くなって来ましたので、それ以外の食生活や、小旅行、街中の散策や読書など、こういったところでこちらの滞在を楽しんでいこうと思います。

日本もだいぶ、コロナ禍も収束して、人の動きも以前よりも活発になって来たようですね。とてもいいことだと思います。人生も、研究も、コロナ禍へお対応も、うまくブレーキとアクセルを使いながら、安全かつ堂々を前に進んでいきたいものです。

画像4

画像5

画像6

画像7

画像8

画像9

画像10

画像11

画像12

画像13

画像14

画像15


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?