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阿部圭史『感染症の国家戦略』と日本経済新聞編『パクスなき世界』

夏休みの寛いだ時間を過ごしておられる方も、まったくそのような贅沢がなくむしろ普段よりも忙しいという方もおられると思います。この季節は、ふだんゆっくりと読書をできない中で、なかなか読めない本を読む貴重な時間が得られるという方も多いかも知れません。今回は、2冊お薦めの本を。

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一冊目は、前WHO健康危機管理官を務めた、阿部圭史さんのはじめてとなる単著で、『感染症の国家戦略』。阿部さんは北大医学部を出た後に医師になり、その後ジョージタウン大学大学院で国際政治を学び、帰国後は厚労省勤務、さらには出向でWHO勤務という、国内外、そして医学と感染症学、危機管理学、国際政治学といった垣根を間内でご活躍される珍しいかたです。その阿部さんが、自らのご専門を活かして、感染症に対して日本がどのように向き合い、どのようにそれを克服すべきかを書かれておりますので、ほかにはない貴重な1冊となっています。阿部さんとはAPIのシンクタンクで、なんどかご一緒する機会があり、またそのご縁もあり帯に推薦文を寄せさせて頂きました。なお、東洋経済新報社から刊行されて、私が共編者となっている『新しい地政学』をご担当を頂いた編集者の方に、こちらの本を編集頂いていたようです。


もう一冊は、日経新聞でずいぶんと注目された特集、「パクスなき世界」をまとめて一冊の本にしたもので、『パクスなき世界 ーコロナ後の正義と自由とは』です。その中心で活躍された日経新聞記者の島田学さんには、紙面(ウェブ)での特集の時から、歴史的視座から現代の危機を捉えた素晴らしい特集だとお伝えしていて、是非一冊の本としても読みたいと希望をお話ししたところ、すでに書籍化の準備をしているとのことで喜んでおりました。それがこのように、一冊の本としてまとまって読めるのは嬉しいことです。


とにかくこちらは、視点が独特で、現在の危機を多面的に捉え、それを世界秩序や、世界史の中に位置づけるというスケールの大きな企画です。私は関わっておりませんが、68人の著名な専門家の方々のインタビューが所収されており、それだけでも読む価値があります。海外からは、ダロン・アセモグル、ラリー・ダイアモンド、フランシス・フクヤマ、ウォルター・シャイデルといった、なかなかうなるような人選。これは素晴らしい。国際政治学者としては、納家政嗣先生や岩間陽子先生、市原麻衣子先生らがインタビューでお話ししておられます。こちらは、上記の『新しい地政学』と同じ装丁家による装丁のデザインということを、島田さんから教えて頂きました。

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どちらもすでに、草稿の段階や、ウェブで掲載された段階で内容の一部を読ませて頂いておりますが、いずれも読み応えがあり、また目の前の危機に直面する中でどのようにそれを管理し、克服していったら良いかについての、多様なヒントや叡智が含まれています。休暇中に読むには「重たい」本かも知れませんが、書店などで見かけた際には、どうぞ手に取ってみて頂ければと、お薦めしたいと思います。


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