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Claude能力検証④-法律相談にどこまで対応できるのか?
能力が高いと最近評判の「Claude」を実際に使ってみて、どれほど能力が高いか検証しています。
テーマは、「Claude」は法律相談にどこまで対応できるかです。相続放棄を例に、弁護士らしい回答ができるか、試してみました。
生成には、Claude3.5 Opusを使っています。
入力したプロンプト
弁護士の立場から、次のような相談を受けたときに、どのように回答すべきか、5000字程度で解説してください。
相談内容:
私の父が、先月亡くなりました。相続人は、私と、兄と、妹の3人です。兄によれば、父は、昔、多額の借金をしていたそうですが、現時点で父に借金があるかどうかは分かりません。父の遺産は、築40年の一戸建ての家と、預貯金100万円程度です。一戸建ての家については、売却すると、おそらく300万円くらいになります。もし、父の借金が現在も400万円以上残っているならば、相続放棄をしたいと思っていますが、借金がいくらあるか分かりませんので、相続放棄をすべきかどうか判断ができません。どうすればよいですか。
Claudeの回答
弁護士の立場から、このような相談を受けた場合、以下のように回答することが適切だと考えます。
1. 相続放棄の検討
まず、相続放棄をするかどうかについては、慎重に検討する必要があります。相続放棄をすれば、亡くなった父親の借金を相続人が引き継ぐ必要はなくなりますが、同時に父親の資産も相続できなくなります。
2. 相続放棄の期限
相続放棄をするには、法律上の期限があります。相続人が相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなるので注意が必要です。
3. 相続財産の調査
相続放棄をするかどうかを判断するためには、亡くなった父親の財産と債務の全体像を把握する必要があります。預貯金や不動産などの財産については、金融機関や法務局等に照会をかけて調査することができます。
一方、債務については、債権者に問い合わせをするほか、亡くなった父親の自宅にある書類を確認するなどして、可能な限り調査をする必要があります。ただし、債務の存在が明らかでない場合、債権者から請求がない限り、相続人が積極的に債務を調査する義務まではないと考えられています。
4. 限定承認の検討
債務があることが判明した場合でも、その額が財産の額を上回らないのであれば、相続放棄をする必要はありません。むしろ、積極財産が消極財産を上回る場合には、限定承認を検討することをおすすめします。
限定承認とは、相続人が相続財産の限度でのみ被相続人の債務を弁済する意思表示をすることです。これにより、相続人は自身の固有の財産で債務を弁済する必要がなくなります。他方で、プラスの財産を相続することができます。
限定承認をするには、家庭裁判所に対して申述する必要があります。申述の期限は、相続人が相続開始と相続財産の状況を知った日から3ヶ月以内です。
5. 単純承認との比較
限定承認をせずに、単純に相続を承認した場合、相続人は被相続人の債務をすべて引き継ぐことになります。もし、債務が相続財産を上回っていた場合には、相続人が自身の財産で債務を弁済しなければならなくなるリスクがあります。
したがって、相続財産の状況が不明な場合には、単純承認はリスクが高いと言えます。
6. 具体的なアドバイス
以上を踏まえ、本件の相談者に対しては、以下のようにアドバイスをするのが適切でしょう。
まず、亡くなった父親の財産と債務の状況をできる限り調査してください。預貯金については金融機関に、不動産については法務局に照会をかけるとよいでしょう。債務については、亡くなった父親の自宅にある書類を確認するほか、心当たりのある債権者に問い合わせをしてみてください。
その上で、債務の存在が明らかになり、その額が相続財産を上回るようであれば、相続放棄を検討してください。他方、債務の存在が不明な場合や、債務があったとしても相続財産の額がそれを上回る場合には、限定承認を検討してください。
いずれにせよ、相続放棄や限定承認の熟慮期間や申述期限が3ヶ月と短いので、早めに調査と検討を始める必要があります。調査を進める中で、必要があれば弁護士や司法書士など専門家に相談することをおすすめします。
7. まとめ
相続人が被相続人の借金の存在を心配しているケースでは、相続放棄か限定承認かの選択が重要になります。相続財産の調査を可能な限り行い、プラスとマイナスを比較考量した上で、適切な選択をする必要があります。
期限が迫っている場合には、専門家に相談しつつ、早めに行動することが大切です。最終的には、相続人自身が調査の結果を踏まえて判断をする必要がありますが、その判断が適切になされるためにも、弁護士としてはしっかりとサポートをしていくことが求められるでしょう。
以上が、弁護士の立場から、ご相談者様に回答する際のポイントです。ご相談者様の置かれた状況を十分にお聞きした上で、丁寧にアドバイスをしていくことが大切だと考えます。
相続放棄の問題で一般にアドバイスしなければならないことは、網羅されている印象です。Claudeの能力の高さを、改めて思い知らされました。
一方で、3か月の申述期間を過ぎてしまうリスクを考えて相続放棄の期間の伸長を申し立てるべきか、他の相続人とはどのような話合いをしておくことが望ましいか、手続の煩雑さも踏まえて限定承認を選択肢に入れてよいかなど、事案に即した回答までは難しいようです。
生成AIの能力が発展したいま、私たち専門家には、一般的、抽象的な回答を超えて、事案に即したアドバイスの能力が求められることを、しみじみと感じました。
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