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利用規約の定義規定はどう書くか?

利用規約を作成する際につまずきがちなのが、定義規定の書き方です。定義する用語はどうやって選べばよいのか、どうやって用語の意味を説明すればよいのかなど、重要なポイントを解説します。

定義規定は何のためにある?

多くの利用規約の初めのほうには、用語の意味を説明するための条項が置かれています。このような条項を、一般に「定義規定」といいます。

(用語の意義)
第◇条 本規約における用語の意義は、次のとおりです。
(1)〇〇とは、・・・ことをいいます。
(2)・・・

「定義規定」は、ユーザーが利用規約の意味を勘違いしないために重要な役割を果たします。例えば、次のような例を考えてみましょう。

(投稿することができる動画)
第◇条 本サービスにおいて投稿することができる動画は、ユーザー自らが講演者となったセミナーに限られます。

さて、このサービスにおいて、「私が好きな日本酒の話」を撮影して投稿することは許されるのでしょうか。この疑問への答えは、許される派/許されない派に分かれるように思います。

では、運営者が、「私が好きな日本酒の話」はセミナーには該当しないと考えて、投稿を削除することに問題はないでしょうか。

これは、問題大あり!です。なぜなら、利用規約違反かどうかが不明瞭なままにユーザーに不利な取扱いをすると、そのユーザーから法的責任を問われるおそれがあるからです。

アメリカでは、利用規約の解釈があいまいなケースではその作成者に不利な解釈を採用すべきとの考え方があり、日本でもそのような考え方が一般に受け入れられつつあります。利用規約に曖昧な部分が残っていると、ユーザーに有利な解釈を採用せざるをえなくなるおそれがあります。

定義規定は、利用規約で使用する言葉の曖昧さを解消し、紛争を予防するために重要なものです。

定義規定で定義しなければならない言葉の洗い出し方

定義規定において定義しなければならない言葉は、具体的には次のようなものがあげられます。

複数回登場する長い表現

例えば、次のような表現があげられます。

第◇条 他のユーザーが本サービスにおいて公開する動画に関して、意見、感想、評価その他これらに類する内容を、当社が指定する方法により、本サービスにおいて公開する行為は、・・・。

このような表現を利用規約において何度も繰り返すと、大変読みにくいものになります。それを防ぐためには、この表現を端的に示す言葉を選んで、定義規定を置くことが適当です。

(1) 本規約において、「レビュー」とは、レビュー投稿により公開される情報をいいます。
(2) 本規約において、「レビュー投稿」とは、ユーザーが、他のユーザーが本サービスにおいて公開する動画に関して、意見、感想、評価その他これらに類する情報を、当社が指定する方法により、本サービスにおいて公開する行為をいいます。

この例では、あえて、「レビュー投稿」と「レビュー」の両方を定義しました。これにより、レビューの内容自体のルールを定めたいときも、レビューを投稿する行為のルールを定めたいときも、端的な表現をすることができます。

意味の曖昧な表現

人によって意味の捉え方が少しずつ異なる表現は、様々あります。例えば、「児童」という表現は、未成年者のことか、小学生までのことかなど、意味が曖昧な言葉です。「高価品」という表現は、具体的にどこまでの価値のものを指すのか、人によって捉え方が異なります。世の中は、このような曖昧な表現であふれています。

意味の曖昧な表現は、きちんと定義をして、「運営者はその言葉をどのような趣旨で使っているか」を明らかにしなければなりません。

また、前述した「レビュー」のように、一般の方に十分定着しているとはいえない言葉は、ユーザーの誤解を避けるために、きちんと定義をしておかなければなりません。

気をつけなければならないことは、「業界の常識は一般常識ではない!」ということです。業界内では共通認識とされている意味が、一般にはあまり知られていなかったり、異なる意味で使われていたりすることは、よくあります。

あくまでも、業界に詳しくない一般の方を想定して、定義すべき言葉を洗い出すことが大切です。

定義規定の書き方

次に、具体的に定義規定を書くときに気をつけるべきポイントを、説明します。

動作表現は、だれが、何を(に)、どうする、を明確する

定義規定のうち、「投稿」「配信」「募集」など、ユーザーの動作を表す言葉は、だれが、何を(に)、どうする行為であるかを明確にすることが大切です。

利用規約は、一種の「作文」です。ですから、国語の授業でならった作文ルール、「だれが」「なにを(に)」「どうした」ルールが、利用規約の作成においても、ほぼそのまま適用されるのです。

このように説明すると、だれもが「当たり前」のことのように感じますが、意外に、世の中の利用規約を見ていると、この点が徹底されていないものが少なくありません。

曖昧な言葉を曖昧な言葉で説明しない

こちらも当たり前のことですが、意外に徹底されていないものが少なくありません。

定義規定で用いる言葉は、できる限り、だれもが同じ意味を思い起こせるものがベストです。

定義しようとする言葉の辞書的な意味を(できれば複数の辞書で)調べてみると、適切な説明にたどり着きやすくなります。

簡潔さよりも正確さを重視する

一般に、利用規約は簡潔に書くのがよいといわれます。冗長な表現が多いと、ユーザーに読み飛ばされてしまうからです。

ただ、定義規定については、簡潔さよりも、(たとえ冗長になっても)正確な説明を心がけるほうがよいと思います。

なぜなら、定義規定に曖昧さが残ると、利用規約に及ぼす影響の範囲が大きいからです。

定義規定は最後に完成する

定義規定は、冒頭にあることが多いため、利用規約作成で1番はじめに検討しなければならない条項であると誤解されている方が多いかもしれません。

はじめに定義したい言葉は、利用規約を作成していくプロセスの中で、「この言葉は定義しておかないと誤解を招くかもな」「この表現は何度も登場するから一言で示したいな」など、要所要所で思い至るものです。

ですから、定義規定をはじめに検討する必要は全くありません。適宜、定義したい言葉を追加していって、一番最後に完成させればよいのです。

まずは利用規約を書いてみましょう

定義規定について留意すべきポイントを説明しましたが、利用規約を作成したご経験のない方には、イメージしにくいことが多かったと思います。

まずは、利用規約を書くことから始めてみてください。そうすれば、定義規定をどうやって活かせばよいのか、イメージがつかめると思います。

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