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勝田全国マラソン体験記:勝田の風を浴びて、成長実感
人生3回目のフルマラソン。
天気にも恵まれ、とても良い経験になったので、感想を書き残しておきたいと思います!
勝田全国マラソン
参加したのは、勝田全国マラソン。
茨城県ひたちなか市で開催される、今年72回目を迎えるかなり歴史のある大会だ。
参加者のレベルが高いことでも有名。
一般的には、サブ4(フルマラソンで4時間を切ること)は日本のランナーの上位約25%に入ると言われているのだが、過去の勝田マラソンの記録を見ると、半分以上がサブ4を叩き出している。つまり、サブ4でも上位50%に入れないのだ。なんというハイレベル…
経緯は分からないが、猛者たちが集まる大会のようだ。
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https://katsutamarathon.jp/course/
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ひたちなか市と東海村をぐるっとまわるコース。
前半は風の吹き続ける長い直線があったり、大きなアップダウンがあったり。終盤35km以降にもアップダウンがあったり。決して平坦ではない、ほどよい試練を課してくるコースだ。
朝
6:30起床。
いつものように、大量の和菓子でカロリーチャージ。糖質が多く脂質の少ない和菓子は、マラソン向きの食べ物らしい。
3個目くらいからきつかったけど、ゆっくりよく噛んで体に詰め込んだ。1800kcalくらい摂取できた。
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現地の天気は晴れ~曇り。気温は7~10℃。
これでもかというほどのマラソン日和。ラッキー!
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目標とレースプラン
今回の目標はサブ4。これまで切れなかった4時間の壁を超えたいと思って練習してきた。
レースプランとしては、
1〜30km:5分30秒/km
30〜42km:6分/km
これ通りにいけば、3時間58分17秒。ギリギリ4時間を切れる計算だ。
いざ。
スタート〜10km
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大会委員長(?)の「On your mark…」というアナウンスのあと、パァン!という号砲。
それに続けてドン!ドン!ドドン!と白い花火も空に打ち上げられた。運動会の朝とかに鳴ってるあれだ。
スタート地点はA〜Hにブロック分けされている。おそらくベストタイムによって、速い人から順にA,B,C…Hと振り分けられている。
私はFブロック。号砲が鳴ってからスタート地点までは5〜6分かかった。
ゆっくり歩き→早歩き→ジョギング、とだんだん速くなり、バタバタバタと足音が増えてくるあの時間は、独特の高揚感。
スタート地点を通過し、さぁ行くぞ!といきたいところだが、初めはそんなにスピードを出せない。
人が多すぎて、好きな速さで走れないからだ。
「もともと10kmまではアップのつもりだったから、焦らず気楽に走るか」と思っていたら、最初の1kmは6分かかった。
まずい。貯金をつくるべき序盤で、早速負債をつくってしまった。
ペースアップし、2km目からはいい感じのペースに。
途中、子どもたちの和太鼓パフォーマンスがあった。
ドン!という太鼓の音が、私の心臓の鼓動と重なる。
ドン!という音の響きで、ギュッ!と拍動し、血液を全身に送り出す。酸素を筋肉に届けてくれる。いいコンディションだ。
「自分のいいペースでー!」という応援の声。
「自分のいいペース」って良い言葉だな。
何がいいペースかは、人によって異なる。
目標は、人に勝つことではない。
自分の目標タイムを達成するために、最適なペースで走ろう。
そんなことを改めて教えてくれた言葉。
10km手前辺りから、うっすら尿意。どうしよう、トイレに行くか迷う。行けばタイムロスになるし、せっかくできてきた走りのリズムがリセットされる。
「よほどやばくない限り、トイレはスルーしよう」そう決めた。
10〜20km
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海沿いの長い直線。風がびゅうびゅう吹いていた。もう体は温まっているので、寒くない。それどころか、体がオーバーヒートするのを抑えてくれているような、ほどよい涼しさ。
とにかく綺麗な姿勢で走り、ラクに楽しく走ることを意識した。前半は温存するのだ。
20kmは練習でも走ってきたので、このペースでも走れることは分かっている。分かっているけど、予想外の痛みとかがなくて一安心。初めてのコースを10km以上走っているのだから、何があってもおかしくはない。
いいラップタイムが出たときは「そのペースで42km走りきれるか?」と問いかけ、飛ばしすぎないよう注意した。
「まだ無理しなくていいですよー!まだ前半ですよー!」という応援の声。
そうだ。けっこう走ってきたけどまだ前半じゃあないか。無理せず、気楽に行こう。FUN RUNで行こう。そう思い、姿勢をまっすぐ伸ばした。
20〜30km
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ここまでは5分30秒/kmを維持できているが、練習ではこのペースで30kmまでは走ってない。
しかし、少なくともあと10kmはこのペースでいかないとサブ4が危うい。
そんなほどよい緊張感で走った区間。
徐々に疲労も蓄積してきたのか、両脚のひざ裏と、右脚つけ根にちょっとした違和感が。
これ以上ペースを上げると、ピキッと来てしまいそうだ。
終盤に坂もあると聞いているし、そこまでに脚を負傷するわけにはいかない。
自分の体の声に耳を澄ませながら、悪化しないように繊細に対応する。
普段、こんなに自分の体の隅々に意識を張り巡らすことはあるだろうか。
そんな意味でも、フルマラソンは特別な時間。マインドフルネス。
坂にさしかかると、平坦な道のときと違い、大勢の人が坂を上り下りしているのが見える。
思わず笑みがこぼれる。「いいね、望むところじゃねぇか」と坂を肯定的に捉える。脚を痛めないように、姿勢を正し、一歩一歩丁寧に上っていく。
ふと気づいたが、やはり勝田マラソンはレベルが高い。
前回の横浜マラソンでは、20km付近から脚がつったであろう人たちが道端でストレッチをしていたが、今日はほとんどいない。すごいぜ。
勝田マラソンは給水所・給食所がたくさんあり、だいたい2kmおきには何かしらエイドステーションがあった気がする。沿道の人たちもチョコや飴、おにぎりなんかを配っていた。
半分に切ったバナナを配っていたスタッフさんが「あっ!熟してきた!」と小ボケをかましており、笑ってしまった。活力が湧いてくる。
また、家族ぐるみでの応援もとても多かった。小さい子どもたちも「がんばれー!」と一生懸命に応援していた。えらい。素晴らしい地域だ、勝田。
丸坊主の少年の「あ゛んばれぇ―!」という声を聞いたときは「さすがに頑張るしかないっしょ」と思わされた。
30〜40km
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予定通り、30kmまでは5分30秒/kmで来れた。
ここからは、6分/kmを守れれば、サブ4は達成できる。しかし、いいリズムで走れていたので、急にペースを落とすのは良くないと判断。35kmくらいまで、いけるところまではペースを維持しよう。6分を超えない限りぜんぶ貯金になるから。と、予定より速めのペースで走った。
このあたりから、左ひざに違和感が。膝の皿をぼんやり包む、怪しい感覚。それに両ひざ裏と右脚つけ根も、痛みの一、二歩手前みたいな前兆が定期的にやって来ている。
無理をすればひざに痛みが走り、最悪の場合、続行できなくなる。レース後、日常のジョギングもしばらくできなくなるかもしれない。
それは何としても避けたいので、より一層、体の声に耳を澄ませながら走った。油断大敵。
痛みはないものの、さすがに疲労は溜まってきている。しんどくなってきた35kmあたりだろうか。
自分の中から「底力くん」が湧いてくるのを感じた。
まだまだいける。ここからが勝負。辛いときほど、自分の中の底力くんに会うチャンスなのだ。
これは夏まゆみ先生(数々のアイドルやアーティストを指導してきた素晴らしいダンサーの方)が唱えているもので、私はこの「底力くん」という考え方が好きなのだ。
また、おそらく30km台の後半あたりで、ロッキーのテーマ(Gonna Fly Nowというらしい)を大音量で流しているおじいさんがいた。
彼は前半にもおり(その時はEye of the Tiger)、どうやったのか分からないが移動してきてまたこの地点でも我々を応援してくれていた。
彼は椅子に腰かけており、一言も発しない。我々ランナーのいるあたりを見つめ、手を小さくゆっくり上げ下げしているだけ。それでも、その音楽と音量からは強烈なエールをもらえた。よく見たら「ロッキーになれ」みたいな紙も貼ってあった。熱い気持ちになった私は彼を見つめ、頷いた。そしたら彼もこちらを見て頷いてくれたように見えた。
底力くんや応援の力により、気力は湧いている一方で、フィジカル的には確実にダメージがたまってきていた。歩いている人もちらほら増えてきている区間。
上り坂でどうしてもペースが落ちるときや、脚の動きが固くなってきたときはSexyZoneの「RUN」を脳内再生した。曲名がそのまま走ることだし、歌詞が良いのだ。「ここでやめんな やめんなよ」「止まらないで 止まらないでよ」という言葉の力で、足を一歩一歩前に進めた。
37kmを超え、あと5km!となったあたりから「なんかサブ4いけそうだぞ」という感覚が湧いてきた。
6分ペースであと5kmなら、ゆっくり走っても行けそうだ。
しかし、かと言って手を抜いてチンタラ走るのは良くない。これは真剣な挑戦なのだ。
いつどこで脚に限界が来るか分からない。自分にできるのは、驕らず、理想の一歩を積み重ねることだけ。
そう意識を改めて、集中して走った。
38km。あと4km!
39km。あと3km!
40km。あと2km!
1kmが積み重なるごとに、「いけるぞ!」「やればできんじゃん!」「最後まで油断すんなよ!」「一歩一歩に集中!」と自分で自分を励ましながら走った。
40km〜ゴール
最後の2kmは、自分でも驚くほど脚が止まらなかった。一番疲労している区間のはずだが、不思議と気力が保てていた。「ケガしない範囲でベストを尽くそう」とペースアップした。まわりがペースダウンしていることもあり、たくさんの人を抜いた。スーッと体が前に進んだ。
横浜マラソンでは35km以降が特にキツく、「走っても走ってもなかなか1km進まない」という鈍い時間感覚の中で走っていたが、今日は違う。走った分だけゴールに近づいている。ラストを鼓舞する声援を受けながら、気持ちの良い前進感を伴って、石川運動ひろばに帰って来られた。
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走り終えてみて<良かったこと>
①ケガなく完走&サブ4達成!
これを両立できたのが一番良かったこと。
ケガしないように慎重に走ってタイムが遅くなるのも違うし、サブ4に入るために無理をしてケガするというのも嬉しくない。
正直、サブ4いけるかギリギリの戦いになった場合は最後だけ無理する必要があるかも、と覚悟していたが、中盤までにしっかり貯金をつくれていたのでその心配はなかった。
サブ4いけそう、と分かった後も油断せずにケガしないように丁寧に走る精神的余裕と集中力もあって良かった。
②成長実感を得られた
①に伴ってだが、前回の横浜マラソンより成長しているのをひしひしと感じた。
30kmを超えても前回ほどのペースダウンはなかったし、脚も前回ほどカチカチにならなかった。特に心肺機能は好調で、ほぼ最後までラクに呼吸ができていた。酸素運搬能力の向上を感じた。
「サブ4ってこういう感じでいけるんだ」という身体感覚を得られた気がしている。
③レースを楽しめた
これは沿道の方々の応援や、良い環境・雰囲気を作ってくれたスタッフさんたちによるところがとても大きい。勝田駅に着いた時のワクワクから、ゴール後のストレッチをするまで、基本的にずっと楽しかったなと思う。
また、コンビニの店員さんが店先で応援していたり、おじいちゃん・おばあちゃんがご自宅(おそらく)の前で旗を振っていたりして、「町ぐるみで勝田マラソンを盛り上げよう」という空気感をとても感じた。
いつか運営スタッフもやってみたいな、という気持ちになった。
走り終えてみて<今後の課題>
①さらなる体づくり(心技体の"体")
次の目標であるサブ3.5に向けて、今の練習では厳しそうだと感じている。
これまではほぼすべての練習がジョグだったので、ポイント練習(より負荷の高い練習)も取り入れて、より速いペースで・より長い距離を走れるようになる必要がある。必然的に、心肺機能も。より高い心拍数で・より長い時間運動できるよう鍛える必要があるだろう。
また、普段ジョグをしていると、けっこう体の芯が左右にブレる。左右にブレてしまうと、せっかく脚力が増しても、前に進むベクトルが小さくなり、ラン効率が落ちてしまう。ブレない体幹を身につけることも重要そうだ。
②フォーム改善(心技体の"技")
体づくりと並行して、よりラン効率の良い、速く・長く・ラクに走るためのフォームを身につける必要がある。
今は、痛む場所にバラツキがあることから、左右差があるフォームだと感じており、左右均等で走れるようになりたい。
また、より正確にミッドフット(足裏の真ん中)で蹴り、地面からの推進力をしっかり得られるような接地もできるようになりたい。(今はたぶん、かかとから接地していることが多い)
ちなみに、心技体の"心"は比較的順調なので、体・技を優先に鍛えていきたい。体・技が向上することで、つよい心を発動しなくてはならない場面は減ると思うからだ。
③補給食を食べられなかった
これは番外編だが、わずかな心残りなので書いておく。
エイドステーションでもらえる補給食は食べたいものがあったが、走りながら補給しづらいものが多かったので、今回はタイムを優先して諦めた。
きんつば、おにぎり、甘酒、おじさんが「うまいぞぉ!」と差し出していた謎のお菓子など…。特にお寺?で配っていた甘酒はめちゃくちゃ飲みたかった!
いつか「タイムより道中の体験を楽しむ」という参加の仕方もしてみたいと思う。
励みになったTシャツ語録
走っている最中、様々な人の背中を見てきた。そこに書かれていた言葉にはたくさん励まされたので、メモしておく。(本当はもっとたくさんあったけど、忘れてしまったので一部だけ…)
目標サブ3.5
(Tシャツじゃないけど)忍装束
5キロ走ってから出直してこい!
Take action. Be better.
THRC(つくば変態ランニングクラブ)
挑戦者
あと、Tシャツではないが、沿道でハリセン?でランナーにケツ叩きしている超サイヤ人のおじさんや、上裸+パンツ+マントの猪木コスプレをしたおじさん、無言で愛想を振りまいているアニメ風美少女(着ぐるみ)もいたりした。
こういった多様な応援者の存在は、マラソンの醍醐味のひとつでもある。
非日常感を演出するとともに、「応援の在り方は人それぞれ」ということを教えてくれる存在でもある。
さいごに(雑感)
「マラソンって人生だな」と言う人の気持ちが、ちょっと分かりました。
大きなゴールに向かって、歩を進めていく。
平坦な道だけでなく、アップダウンもある。
自分のコンディションも一定とは限らない。
ラクな時もあれば、つらい時もある。
天気や気温もどうなるか分からない。
変化に対応すべく、その時その時に柔軟な判断が求められる。
短期的には○でも、長期的に×だったら、あまりよろしくない。
自分にできるのは、理想の一歩を積み重ねること。つまり、瞬間瞬間のベストを尽くすこと。
年末に『1にこだわるランニング理論』という本を読んだ影響もあってか、そんな感覚が降りてきました。
とにもかくにも、4時間の壁という大きな壁を超えることができて、とても嬉しいです!
これまでは無理だと思っていても、しっかり準備して挑戦すれば、意外といけることもあるんだなということを実感できました。
最後まで走り切れた幸運に感謝です。
次は3.5時間の壁を越えられるよう、楽しみながら練習を積んでいきたいと思います。
一緒に練習してくれた方、
アドバイス・応援くださった方、
ありがとうございました!!
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