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JETROからSilicon ValleyのVCへ。異色の経歴を持つMitchさんにインタビューをしてみた。

今回は、ボストン大学の経営学修士を修了後、JETROを経て現在シリコンバレーVCとしてご活躍されている Mitch 北村さんにお話を伺った。

個人的に印象的だったのが、自分の様々な質問に対して、時には時間をとり、真剣に考えてくださったこと。また、質問に対して、一方向に偏らず、常に全体観を持って客観的な意見をお持ちだと感じた。他にも、大阪弁で、「何でも聞いていいよ!」と非常にフランクで、質問もしやすかった。

Mitchさんについて

1.経歴

高校卒業後、オーストラリアの大学に進学。その後、アメリカのボストン大学で経営学修士を修了、97年にニューヨークのJETROに入社。新テクノロジーの関するレポートや新しい米国製品の日本への紹介を3年ほど行い、2000年に日系のVCのシリコンバレーオフィス立ち上げに参加。2011年にDraper Nexusを立ち上げ、現在はManaging Directorとして働かれている。

2.高校→海外大学→大学院に進学した理由

高校卒業後は、大学受験に失敗し、パチンコなど遊ぶ日々を過ごしながら浪人をしていた。みかねた親に海外の大学を勧められ、オーストラリアの大学に進学することに。進学先の、オーストラリアの大学在学中に「世界にインパクトを与える仕事がしたい」と思うようになり、国連で働きたいという夢を見つける。国連で働くためには修士が必要であり、また本部がNYにあるので、大学卒業後はボストン大学の経営大学院に進学した。

3.JETRO→VCに移行した理由

JETROは、日本貿易振興機構と言う独立行政法人で公的機関であり、そこで国連職員を目指しながら働いていた。しかし、数年働くにつれ、公的機関の評価のされかたに違和感を感じるように。なぜなら、公的機関は国から一定の予算をもらい、それをどう運用していくか考えるというシステムのため、個人がどれだけ貢献したかなどは評価されづらい職場であると感じるようになったから。そこで、より個人の評価がはっきりとしている民間機関で働きたいと思うようになった。そんな時に丁度日系のVCのシリコンバレーオフィスの立ち上げの話があったため、VCとしての道を歩き始めた。

因みに... 当時のアメリカ、特にシリコンバレーはインターネット急成長の時代であり、.comバブルやその崩壊、911などが起きた時期。そんな中で、Mitchさん自身が実際に景気のアップダウンを経験した事が、今に大きく活きているそう。特に、バブルが崩壊した後のシリコンバレーは、多くの投資家が後ろ向きの(潰れそうな会社を支えるなどの)投資を行う時期でもあった。

日本の現状とアメリカとの対比

1.現在のシリコンバレーの現状について

シリコンバレーでは、現在バブルが起きている。しかし、そのバブルも黄色信号である。なぜなら、実際に会社が生み出す金額よりも、評価金額が上回るようになってしまう可能性があるからである。つまり、現在バブルによりお金が余りはじめており、お金がダブつくにつれ、投資家たちの判断する企業のValuation(推定企業価値)が上がっていく。だが実際に、その会社が将来的にどれだけの利益を出せるのかと考えると、その企業価値と相対しない可能性が多く出てきているということなのだ。

2.日本とアメリカのVCの違い

3、4年前までは違いが顕著だったが、近年はほとんどなくなってきている。具体的には、かつての日本のVCは銀行の融資ビジネスに近い形態が多かったのに対して、現在はよりアメリカ式の投資の仕方をするVCが増えてきているということ。従って、従来の日本式のVCは淘汰され始めている。加えて、ここ数年で、日本の起業家の質もかなり上がってきている。

3.日本の海外での存在価値について

日本の価値は、(特にBtoBの分野では)本質的には変わらないだろう。もちろん、人口が経済に比例するという観点から考えると、人口減少の一途を辿る日本に比べて、インド、中国、インドネシアなど人口の多くなって行く国は、BtoCのビジネスがかなり大きくなるポテンシャルがあるだろう。しかし、日本には日本の普遍なる価値がある。例えば、サイバーセキュリティの会社など、中国で作ったらすぐにコピーされてクラックされてしまうだろうが、日本ではそういうことは起こらない。Twitterも、世界中の売り上げで大多数を日本が占めている。このように、日本の人口が減少していても、世界から見て日本の価値は依然として残るのではないかと予想している。

4.日本の企業とアメリカの企業の違いについて

やはりどこでも言われるが、日本の大企業の意思決定のスピードの遅さである。一方、アメリカだと、インテルやHPなど老舗大企業でも決断は早い。その違いの理由として考えられるのが、日本の企業は社長自身に決定権がないことが多く、幹部の多数決で決めたりするが、アメリカでは社長自身が決断できるようになっているから、などが挙げられる。

スピードが大事な理由としては、一般的に、スタートアップの時間には限りがあり、大企業の遅い決断を待っている余裕がないことが多いから。将来的に、日本も大企業がスタートアップの決断速度に合うようなスピードで決断できるようになると、状況は一気に良くなっていくのではないか。

5.日本のこれからと移民問題について

日本は、人口減少するにつれ、経済が下がっていくことは明白であるし、どうにかしてそれに対処していかなければいけない。また、移民問題については、アメリカから見ていると、日本は「移民を受け入れない」とは言いつつも、実際に海外から働きにくる労働者の受け入れを増やしている。つまり、移民は入れないとは口で言いつつも、外国人は実際には増えてるじゃん、という感覚であるそう。

個人的な質問

1.日本の大企業に新卒で入ることについてどう思うか?

日系大企業で働くメリットは、「大企業がどう動いているかを理解し、そこでどう振る舞えばいいか」というのを学べることが大きい。例えば、社内で自分の意見を通したい場合、自分の意見をただ言い続けているだけの人の意見は通らないだろう。そこで、どうしたら組織を動かせるのか、どうしたら自分の意見を通せるのかなど、大きな組織での振る舞い方を学べることは非常に大事な経験になる。従って、日本の大企業で優秀な人と共に働き、「組織でどう生きていけばいいのか」というのを学ぶことに価値はある。

2.新卒でVCで働くということ

新卒でVCになるよりは、投資家として起業家に何かをいう際に、起業した経験がある方が話を聞いてもらえるというのは事実。例えば極論だが、マークザッカーバーグと新卒のVCに同じ内容のアドバイスをされたら、どれだけ真剣に人が話しを聞いてくれるかの違いは明白だろう。勿論、それだけと言われればそれだけであるし、投資家に起業経験がいらないと言う人もいる。しかし、投資はほんのすこしの差が成功する投資家としない投資家を分ける世界である。つまり簡単にいうと、VC投資はどんな人でもお金さえあれば同じ金額を投資して同じことを言えるので、起業経験がないといけないという事はないが、それが大きな差になることもあるということである。

3.ビジネスにおける視野の転換について

ビジネスに置いては、見方を変えることが非常に大事である。例えば、スタンフォードのクラスで、建築学科の学生が授業で100ドルを渡され、「そのお金を2週間でどれだけ増やせるか」というのを勝負したという話がある。1、2つ目のチームは、学生が多く使う自転車の空気入れをしてお金をもらうことをした。しかし3つ目のチームは、スタンフォードの優秀な学生に対して発表する場所と時間に価値があると考え、スタンフォードの学生を採用したい会社にプレゼンの時間を売って大きく儲けたそうだ。
このように、「何に本質的な価値があるか」というのを見方を変えてみる必要があるということ。

その他のインタビュー

ほかにも、Mitchさんのインタビューが掲載されているサイトがある。合わせてチェックをしてみると、より理解が深まるのではないかと思うので紹介したい。

1. https://www.ossnews.jp/closeup/articles/?aid=201503-00001

米国ベイエリアレポート(第5回)シリコンバレーにおけるITスタートアップおよびベンチャーキャピタル米国ベイエリアレポート ~シリコンバレーにおけるIT産業およびオープンソースムーブメント~2015年03月12日 (株)オープンソース活用研究所 顧問 八塚 俊次郎

2.

本サイトでは以下の5つの質問に対する動画とそのTranscriptがある。全て、2分以下にまとまっており非常にわかりやすい動画になっているので必見だ。

・How can Japanese entrepreneurs improve their pitch to investors?

・How do I find investors in Silicon Valley?

・When does it make sense to raise money in Silicon Valley?

・How important is it to have IP protection when fundraising?

・What criteria determines the valuation of my startup?

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