文化芸術の役割とは
大好きな原田マハさんのアート小説について。
先日、「美しき愚かものたちのタブロー」という国立西洋美術館の創設に至るまでを描いた小説を読んだのですが、私自身も同じ文化・芸術に携わる者の端くれとして、考えさせられる事が沢山ある一冊でした。
その中で最も強く印象に残っているのが、"日本と欧米諸国での文化・芸術に対する関心や認識の違い"です。現代でも、日本で文化芸術と言うとどうしても、高尚なものとか、お金持ちの娯楽といった認識が強く、日常生活からは少しかけ離れた存在であるように感じます。一方欧米では、貴族や知識人のみならずビジネスマンまでもが伝統的に芸術をたしなみ、これらは教養のひとつとして一般国民の生活にも広く浸透しています。日本はさまざまな分野において、先進国として世界の列強と肩を並べているけれど、文化力においてはまだまだ世界から遅れをとっていることを痛感しました。今の日本は欧米に比べると、文化芸術を享受する環境が整っていません。これをバレエに当てはめるならば、本物(=世界レベル)の舞台を提供できるバレエ団が少ない&公演数が少ないことが挙げられます。現に日本でも、文化芸術を盛り上げようと活動してくださっている人や組織はあるけれど、それと同じくらい、私たち一般国民がその必要性を理解することが重要だと思いました。「芸術とは、表現する者と、それを享受する者、この両者がそろって初めて「作品」になるのです」。物語の中で田代雄一によって語られたこのセリフにもあるように、どちらか一方だけが頑張っていても発展していけないのです、、、
上京してから何度か訪れているけれど、毎回そのコレクションの豊富さと空間そのものの壮大さに圧倒されます!100年以上も前から世界に目を向けて行動を起こした日本人がいたこと、さらにその人の想いを受け継ぎ、守り、実現させた人たちの偉業に対し、感謝を通り越して驚愕します。