【開催レポート】渋谷からはじめる・地域でつながるプロジェクト「つながる菜園」「原外カフェ」事例紹介&プロボノ説明会レポート
渋谷の学校を舞台にした、「つながる菜園」と「原外カフェ」の活動。地域と子どもの素敵なつながりづくり。もっと多くの地域に広げたい!という思いから、この春、“プロボノ”による支援を経て、マニュアル・虎の巻が完成。その成果を共有するイベントを開催しました。
“プロボノ”とは、仕事の経験を活かしたボランティア。今回のイベントでは、学校拠点ならではの活動立ち上げの経緯、活動内容、地域をどのように巻き込んでいったかなどのお話と併せて、完成したマニュアルを見ていきました。
〚登壇者〛
つながる菜園プロジェクト
リーダー 佐々木桐子さん
サブリーダー 荒島智貴さん
プロボノメンバー 高務智法さん
(コミュニティマネージャー 岡本)
原外カフェ
民生委員・主任児童委員 小林舞子さん
渋谷区社会福祉協議会 社会福祉コーディネーター 前田泉美
(コミュニティマネージャー 柴岡)
〚日時〛
2024年6月15日(土)10:30-12:00
◆つながる菜園プロジェクト
ぐるっと学校を中心につなげる、つながる菜園の活動
佐々木さん:全ての子どもに平等な居場所であり、生徒たちが自然や食や地域と結びつくことが可能な場所をつくることを目標として、学校と地域で活動しているつながる菜園プロジェクト。活動の柱となるのは2つ。ひとつ目は小学校で種から食卓にならぶまでの生命の流れを体験的に学ぶ菜園学習と、二つ目は地域の公園で多世代の方がつながる場所として、自主管理花壇をつくり地域の方とお花の植え替えやお茶をのんだりして地域のお困りごと等の話ができるつながるーガーデン。地域に開かれた学校として、地域の中にある学校と位置付けて、渋谷区の企業や行政、菜園ボランティアさん、地域の飲食店や住民とつながっていく活動をしています。
―― 活動の歴史とふりかえり、これからの目標
佐々木さん:約10年前、渋谷つながる菜園を一人でスタート。2020年には荒島さんと谷口さんと一緒につながる菜園プロジェクトを立ち上げ、ササハタハツまちラボの第一期認定プロジェクトとして認定され(以降3年連続認定される)本格的に活動開始。2021年には幡代小学校に学校菜園を導入でき、2023年には一般社団法人つながる菜園として法人化しました。昨年には渋谷区のサステナブルアワード大賞を受賞(学校菜園と地域の公園の活動ふたつ)、またアワード受賞のご縁で、今年初めに渋谷の丸井MODIと連携したPOPUPを開催しました。
教育機関、行政、地域、法人、企業、農のスペシャリストの方々やDIYボランティアチーム、また、店頭で販売できないお花を協賛いただいているお花やさんなど、スタートからの10年間は仲間づくりと味方づくりに徹して、仲間がどんどん増えていった10年間でした。
本年度以降は、菜園学習の一環として、教室に入ることができない特別支援クラスの子ども達にも、教科授業と一緒に菜園で授業をさせていただいたり、食育を通した居場所をつくることを実現していく計画をしています。
―― これまでに取り組んできた、さまざまな活動
佐々木さん:地域との関わりの新しい取り組みとして、昨年はBeer For Seedという仕組みも立ち上げました。これは地域の飲食店さんと連携して、菜園で収穫した野菜の一部を飲食店に調理していただき、みんなで美味しく食べて飲みながら、つながる菜園の活動をプロジェクターで紹介する会です。つながる菜園活動紹介の場づくり、地域飲食店の集客促進、参加者への楽しい場作りと、お店に来て楽しくて、食べて飲んで美味しい、そしてその収益の一部がつながる菜園の種や苗代につながるという、くるっとみんな美味しいでつながる仕組みです。また、今年で5回目になる初台緑道で開催されてるマルシェには年 2回出展しています。今年は渋谷MODIさんと一緒に活動紹介パネルを展示しグッズの販売をしました。売上は種代、苗代を購入する資金にいかされます。学校と地域と企業と行政が一体となった、学びや遊びのコミュニティをデザインすることを私たちは大きな目標に活動しています。
―― つながる菜園の「虎の巻」を作った経緯
岡本:「佐々木さんだからできた」ということではなく、正しいプロセスを経て積み上げていけば、今後、学校菜園を何処でも実施できる。プロセスを言語化することが、今回「虎の巻」をつくった背景にあります。
結・しぶやで、つながる菜園の活動についてお話しを聞き、コミュニティマネージャーから高務さんをご紹介しました。
渋谷の企業で働いている高務さんは、スキルや経験を活かしたボランティア“プロボノ”として貢献したい、と「結・しぶや」が出来たばかりの頃に足を運んでくださいました。今年の1月にお引き合わせし、そこから毎月ミーティングを重ねて「虎の巻」は完成しました。
高務さん:つながる菜園の目的には「全ての子どもに平等な居場所」をつくるというところがあります。私も何度か見学のために学校へ行きましたが、みんなが一緒になって菜園に関わることがで、生徒たちが自然や食とか地域と結びつくことができる、すごくいい場所だなと感じました。
本日は、つながる菜園の運営マニュアルの「虎の巻」の内容にそってお話をしたいと思います。
――運営スタッフ、学校、行政、菜園支援者、地域との関係
高務さん:つながる菜園に関わる人や団体は、運営スタッフ、学校、行政、菜園支援者がいます。ここで大事なのが行政(教育委員会)になります。学校で何か作業をする時に教育委員会側の承認はきちんと取った方がいいです。また、菜園の支援者も大事ですね。知験を持っている農家さん、協賛を協力してくれる企業などのパートナーの方々とはしかり関係を作って必要があると考えます。そして最後に、地域住民の方々。運営スタッフだけですべてを回し切るのは大変で、やはりその地域とのつながりをどんどんつくっていくのが理想的な活動か思います。
―― つながる菜園の全体像
高務さん:全体像の中心には運営スタッフがいます。運営スタッフは学校と運営ルール、年間計画を立てて菜園を管理します。そのわまりに、活動の承認をする行政、設備などの支援をしていただく菜園支援者、そして活動に参加する地域住民の方がいます。
―― これまで大変だったこと
荒島さん:ルールに乗っ取って運営する上で、大変だったのは教育委員会への申請でした。持続可能に運営するためには、全力を尽くして、決められたルールの中でやることが絶対だと決めていました。たくさんの人を相手にしている教育委員会ですから、そこのルールを乗り越えるのは大変でした。
佐々木さん:開墾も大変でしたね。荒れ果てたところの低木を掘り起こす作業を2人でやりました。
――活動にかかる主な費用
高務さん:活動にかかる主な費用は4 つあります。種苗代、用具代、水道代そしてチラシなどの宣伝広告費。費用負担に関する基本的な考え方として、運営スタッフが負担するのは持続可能ではないので、学校や行政と協議して協力を得るのが望ましいです。また、種とか苗は協力してくれる農家の方から譲っていただくといことも持続可能という点で大事。水道費はあらかじめ想定量を計算して行政の活動申請し、許可がおりれば使えるので削減できると思います。
――活動開始までの期間
佐々木さん:2020年にチーム立上げて、5年前に学校との協議を開始し、その間に教育委員会と話しあいを続け、2021年に教育委員会に申請が受理されました。
荒島さん:運営スタッフもメンバー集まっても、学校から許可はなく、教育委員会との話もすすめられないし、ただ集まって夢をかたる期間が1年間ありましたが、大変とは全く思わなくみんなで楽しく準備をすすめていました。
共通の目標に向かって行動できるメンバーを集めていくステップ①ですが、もしみなさんの中で、チームメンバーが見つけられない、菜園の活動をやってみたいけど一緒に活動してくれる人が集まるかわらない方がいらしたら、一度、幡代のつながる菜園の活動に参加してみてはどうでしょうか。似た思いを抱えたメンバーに会える可能性もありますし、そこの繋がりで誰か紹介されるかもしれません。
ステップの中で一番の勝負どころは②の学校との協議です。
学校に理解してもらい、さらに学校も活動を全部分かっていないと教育委員会と調整は難しいですが、幡代小のケースは事例としてあげやすく、虎の巻もあるので、学校側もイメージが湧きやすいのではないかと思います。学校に負担がかからないように調整すすめるのポイントになるかと思います。
ステップ③ではいよいよ教育委員会での申請。自治体やタイミングによっては提出するものが変わってくるかもしれません。
ステップ④の学校側との活動詳細のすりあわせですが、校長先生だけではなく、全員の先生に理解いただく必要があるので、活動開始する前に先生全員に話すということが必要になります。特に理科の先生と給食の先生は関わりが多くなるので、年間の計画も含めてきちんと話をしておく必要があります。また、保護者に対しても理解をしてもららい、子どもたちも理解してもらう必要があります。しっかり告知をした上に活動を開始することは、ボランティアで参加の方も増えると思いますので、大事なところかなと思います。
野菜を植えることがわかる年間のスケジュールを作成して学校に提出します。授業の教材として使う野菜をこのタイミングで栽培しますというスケジュールを理科の先生と共有します。それに加えて、季節の野菜などは給食でも使うので、学校側と調整し決めることになると思います。夏休みの水やりが結構大変ですが、そこはボランティアでみんなで分担しながら育てます。
運営の中で守るべきルールは、学校への作業予定の事前伝達と入校証など身分のわかるものを携行くこと、作業時の生徒の安全確保が大事です。
学校側に学校によってセキュリティのルールがあるのでその学校に応じて、きちんと事前に定める必要があります。
◆原外カフェ(原宿外苑中学校)
―― 原外カフェの虎の巻 制作の背景
柴岡:「原外カフェ」は、2023年の5月から始まり、1年もたたないにもかかわらず、非常に盛り上がっていて、既に別の学校でも実施したいという声があることを聞きました。渋谷でこの活動が広がれば、子どもたちのためになるのではと、結・しぶやから、プロボノプロジェクトとして「虎の巻」をつくることを提案させて頂きました。本日は、原外カフェに立上げから関わる、小林さんに詳しくお話を伺っていきます。
―― 中学生がホッとする居場所 原外カフェの始まり
小林さん:私は民生委員の主任児童委員として活動をしているのですが、原宿外苑中学校の校長先生と話をした時に、学校の正面玄関の通路のところに、イスとテーブル置いたらカフェみたいになるね、という話をポロっとされたのが原外カフェのヒントとなるきっかけでした。
中学校の子どもたちが、帰宅前に友達同志で集まれるホッとできる場所があったらいいなと考えていて、そんな時に世田谷区の主任児童委員さんが放課後に子どもたちと一緒にカレーや豚汁を作って、先生も一緒に食べているという話を聴き、その話がずっと記憶の片隅みに残っていました。なので校長先生が「カフェをしたい」話をされた時は「これに乗っかるしかない」と思いました。カフェをやるのであれば、民生委員に声をかければ仲間は集まる。学校に場所を貸してもらえればあとは予算だよねという流れになり、渋谷区で行われている重層的支援体制整備事業を通じた横の繋がりで、NPO の方に相談しました。
校長先生と NPO と私とで手探りで一昨年(2022年)の年末から話をはじめて、去年の2月末に原外カフェサロン運営委員会を立ち上げをしました。運営委員は、民生委員の会長、副会長と主任児童委員、NPO にも入っていただき、7 人ぐらいのメンバー。スタッフのこと、予算、衛生管理、防犯のことなど話し合いを進めていきました。
――提供する飲み物のこと、お菓子のこと
小林さん:はじめにネックになったことは、飲み物とお菓子のことでした。中学生なのでお小遣いも少ないので無料で飲み物を提供したい、お菓子もつけたいとなると飲食となるので、保健所に行って相談したのですが、学校で放課後にカフェを立ち上げることは、保健所の方も初めてのことですぐには答えが出なくて、その後しばらくしてから連絡がありました。
保健所には色々条件がありまして、まず焼き菓子と飲み物に限定すること、食中毒が学校の子に広まってはいけないのでその場での調理や、我々や保護者が家で作ったものでも持ち込みはNG、お菓子のパッケージに製造者と賞味期限、小麦などのアレルギー表記をきちんと明記すること、飲み物は常温で提供すること、などがあります。それらの説明をひとつひとつ確認して、最終的には校長先生も含めて食品衛生管理者の資格をとりました。
――原外カフェの運営のこと
小林さん:当日誰が来たかを確認し、把握しているのですが、個人情報の観点から名前は聞かず、生徒証の番号、あるいは学年とクラスとそれから出席番号を聞く形にしています。本人のアレルギーのこと、保護者にはカフェに来ることを伝えているかも確認。手洗いと消毒を毎回徹底しています。はじめた頃はまだコロナ禍ということもあり、お菓子も一人一人に小袋に詰めました。
カフェの初日、約300名の生徒数のうち、15名くらいの参加予定だったが、なんと79名の生徒が参加してくれました。初日からバタバタでしたが子どもたちも笑顔ですごく楽しかったと話をしてくれて、来月も絶対来ると言ってくれました。
2023年の 5 月にカフェがスタートしてから1年たち、色々と改良しつつ、今年の5 月には参加者が150人を 超えました。カフェの時間は、給食を食べて、その後に部活動がある子どももいるので、再登校の間の 1 時半から 4 時くらいに開催しています。テストの2-3 日前は、勉強カフェみたいな形で、地域のボランティアの学生が来ることもあります。参加資格は、原宿外苑中学の生徒のみ。参加費は無料です。研修終わりの先生が来たり、PTAボランティアがお手伝いに入ってくれてます。
カフェを始めるにあたっては、中学生にどんな飲み物がいいか?どんなお菓子が何が食べたいか?など子どもたちの意見を大事にしながら、子どもたちを巻き込んでいきました。保健所からカフェだと金銭授受のイメージがあるので居場所のイメージの「サロン」とすることと提案されて、最初は原外カフェサロン(仮称)でした。「原外カフェ」という名前は子どもたちからアイデアを募集して決めました。今は子どもたちも何人か運営スタッフに入ってくれています。日焼けを気にする学生からの「テラスは暑くて座れないのでパラソルが欲しい」という意見なども取り入れて、地域の方の助けを得ながらひとつひとつ揃えていったこの 1 年間だったかなと思います。
学校に足が向かない子どももいる中で、カフェが楽しみで登校してくれる子が何人もいます。私は民生委員で主任児童委員でもあるので、子どもたちの様子が小学校まではある程わかっているのですが、中学生になると顔とか心境とかが分からないこともあり、なるべく中学校との接点を持ちたいと思っています。原外カフェは、多感な時期の困ってる子たちのSOS を拾える場所であるといいなっていうのが実は裏であります。
当初、学校側は民生委員が関わることで、子どもたちにとって「相談をしにいく場所」と思ってしまい誰も来ないことを心配していました。民生委員が関わることを出さないで説明をして欲しいと話もありましたが、子どもたちが地域の人たちと関わりを持って欲しい、地域には、君たちを見守りたいと思って活動している大人の人たちがいるんだよ、ということを分かってもらいたいという思いがありました。
――原外カフェをひろげるための「虎の巻」プロジェクト
前田:昨年の 1 月に原宿外苑中学で学校カンファレンスが開催され、そこに他校の先生が来たのですが、原宿外苑中学の校長先生も原外カフェを他の学校でもひろめたいと考えていて、原外カフェのことを紹介しました。紹介してみると、原外カフェのことをきちんと説明できる説明書が必要だということに気がつき、コミュニティマネージャーと相談し、プロボノプロジェクトとして「虎の巻」を作ってくれる方の募集をしてみることになりました。地域に開けた学校であること、原外カフェは保護者でもない先生でもない民生委員という地域の人が関わっていることも、第三者であるプロボノワーカーさんの視点を活かして伝えていきたいと考えました。
小林さん:虎の巻を作成してくれたプロボノワーカーさんは、本日はご都合があわずいらっしゃらないのですが、本当に魔法使いのようでした。
私はあっちこっちいろいろ話が飛んで整理整頓が苦手なのですが、一度来ていただき、話をしただけで素晴らしい虎の巻ができました。
写真も使われていますが、生徒の顔が分からないようにしていただいきました。可愛いイラストで見やすくしていただいています。何度かやり取りしましたが、あっという間に完成して、すごく納得のいくものを作っていただきました。
―― 原宿外苑中学の新たなチャレンジ
原宿外苑中学では、パラソルを寄贈してくださった渋谷パラ草の会が、パラリンピックの運動会とかイベントをしたことがないということで、校長先生にお願いし、生徒会が主になって6 月8 日に原リンピックを開催しました。運営費用を初めてクラファンで集めています。ご興味がある方、応援したいという方は是非よろしくお願いいたします。(※現在は終了しています)
最後に、本日の登壇者の方の感想をいただきました。
高務さん:
プロボノに初めて参加し、普段の仕事で合わない人との出会いに感謝しています。めちゃめちゃ面白くて普段の仕事よりも頑張ってるかもしれないです。プロボのやりたいっていう方はぜひやってみてしていただけると、すごくいいかなと思います。
荒島さん:
プロボノやサービスグラント のことは知りませんでした、我々の思いつきとエネルギーだけでやっている部分を聞いてもらい、完璧に仕上がってくるのは才能の違いだなって。こんな仕組みがあるが渋谷区は本当にいいなって思っています。何かやりたい人がいて、思いがあれば、相談すれば、形になるなてのがすごい。渋谷のいいとこだなと思いました。
佐々木さん:
高務さんに出会わなかったら形にできなかったことがあります。私たちの 3 人の夢なんですけども、菜園の栽培に関わるもうちょっと踏み込んだシステムのようなことを教育と絡めてやっていきたいなと考えています。高務さんが専門的にやってることと、私たちが菜園でやってることがガチっとうまくはまると面白いことができるんじゃないかなと。これからやりたいことも見つけることができたので、本当に出会いに感謝しています。
小林さん:
分からないことや自分ができないことは自分で抱え込まないで、できる人にお願いすればいいということを今回この機会で学びました。カフェに関心がある方は、ぜひ個別にご連絡いただけたらと思います。
「つながる菜園」「原外カフェ」の虎の巻を活用して、ご自身の地域でも活動を広めたい!と考えている方は、「結・しぶや」にお問い合わせください。