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#9 お茶の分類とバタバタ茶の特徴

2021.09.27

初めに

こんにちは、ささです!今回は新シリーズとして、バタバタ茶について紹介していきます。朝日町にゆかりのある方ならよく耳にし、実際に飲んだことのある方も多いのではないでしょうか?この記事では、多くあるお茶の種類の中でバタバタ茶はどのような位置付けなのか、このお茶の歴史や特徴についてまとめています。

意外と知られていない内容もあるかもしれないので、楽しんでいただけると嬉しいです!

取材には、朝日町商工会さんとバタバタ茶伝承館さんにご協力いただき、一部写真は朝日町観光協会の上澤聖子さんからご提供いただきました。

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1章 お茶の種類

お茶と聞いて思い浮かべるのは、緑茶や紅茶、烏龍茶などではないでしょうか。実はこれらは全て、同じお茶の木から作られています!『dancyu』(※1、p. 156)によると、お茶の木は「カメリア・シネンシス」という品種で、茶葉が発酵しているかどうかや加工法の違いによってお茶の種類が変わってきます。ここでは代表的な4つの分類を紹介します。

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『dancyu』(※1、p. 156)より

一つ目は、「不発酵茶」です。お茶の葉はもともと自然発酵する酵素を持っています。茶葉の収穫後すぐに発酵が始まるため、それを防ぐため茶葉を蒸してから加工します。具体的には、玉露や煎茶、抹茶など緑色が鮮やかなお茶が多いです。

二つ目は、「半発酵茶」です。これは茶葉を一定期間発酵させてから、熱加工をして発酵を止める製法です。中国茶の烏龍茶がこれにあたります。

三つ目は、「発酵茶」です。茶葉の酵素を用いて、完全に発酵させます。紅茶が代表的ですが、茶葉が発酵の影響で赤茶色になっているのがわかると思います。

最後は「後発酵茶(こうはっこうちゃ)」です。半発酵茶と発酵茶は茶葉の酵素を使って発酵させます。国立研究開発法人産業技術総合研究所(※2)によると、後発酵茶は茶葉が持つ酵素の働きを熱加工によって止め、真菌(カビ)を人工的につけることで微生物発酵をさせます。乳酸菌を使う場合もあります。これに当たるのが、中国のプーアール茶や日本の碁石茶、阿波番茶(あわばんちゃ)、石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)そしてバタバタ茶です。実は、日本に四種類しかない後発酵茶の一つが朝日町にあるのです!中国ではお茶を出した時の色によってお茶の分類をするため、後発酵茶はその色から「黒茶」とも呼ばれています。

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実際のバタバタ茶の茶葉

※1 プレジデント社(2018)『dancyu』 pp. 152-156.
※2 国立研究開発法人産業技術総合研究所(2017)「さがせ、菌の「お国自慢」 いま地産微生物が熱い!」(https://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/bluebacks/no5/index.html, 最終閲覧日:2021年9月23日).


2章 バタバタ茶の歴史

バタバタ茶は、主に朝日町南保の蛭谷(びるだん)地域で飲まれているお茶です。ここでは、バタバタ茶がこの地区で飲まれるようになった経緯を紹介していきます。時は遡ること1000年以上前の唐代であった中国で、黒茶は生まれました。それから朝鮮半島を経て日本に伝来しました。『dancyu』(※1、p. 153)と『朝日町の自然と文化』(※3、p. 32)によると、600年以上前の室町時代に、浄土真宗の僧であった蓮如上人が民衆に仏の教えを広めるため、蛭谷地区で飲まれていた黒茶を使って茶会を開いたのが起源です。仏事の際に合わせて飲まれることが多かったことから、現在でもそれぞれの家族の命日にお茶会が開かれています。

最初に蛭谷にバタバタ茶が入ってきた時期や経緯は明らかではありませんが、宗教行事とのつながりの中で大変長い間受け継がれてきた文化であることがよくわかりますね。

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朝日町の観光複合施設なないろKAN前にある茶畑

太平洋戦争の始まる頃は、蛭谷地区だけでなく朝日町またその周辺地区でも飲まれていた。特に日本海沿岸の漁業に関わる人々の間でよく飲まれていましたが、緑茶も同様に普及していました。蛭谷地区は生産地である福井県三方郡美浜町と古くからの付き合いがあり、大量に買い入れていたため、優先的に譲ってもらっていました。そして太平洋戦争時、人手不足で生産量激減し、食糧不足も相まってお茶を飲む人口が減りました。その影響で美浜町から仕入れることが難しくなったため、美浜町の生産方法を受け継いでいた富山県旧小杉町青井谷から購入するようになりました。

朝日町全体でも飲まれていましたが、戦争の影響で主に蛭谷で飲まれるように変化していったのですね。現在朝日町で生産するようになった経緯は、次回の記事で紹介します。

※3 朝日町教育センター(2003)『朝日町の自然と文化』, pp. 31-34.


3章 バタバタ茶の文化と特徴、飲み方

○文化

バタバタ茶を通して、人々がどのような生活を送っているのかを紹介していきます。『朝日町の自然と文化』(※3、p. 33)によると、お茶が地区の人々のつながりを強めています。その理由は、日常生活におけるお茶の身近さにあります。お茶が飲まれるシーンとしては、「家族の大半が仕事や学校に出かけた後の、おばあちゃん達の集まり」や「各家庭の法事、命日、お講、お待受けなどの仏事」、「結婚、出産、入学、卒業、就職、成人などの祝い事」そして、「仕事前のエネルギー源」があります。日々の生活の一部として地区の人と一緒にお茶を飲み、さまざまな会話をかわす文化が根強いことがよくわかります。また、お茶請けとして煮物や煮豆、漬物などを一緒に味わいます。季節によって使われる食材が変わってくるため、その時期の味をお茶と一緒に楽しむことができます。

○特徴

バタバタ茶の一つの特徴として、専用のお茶碗と茶筅が使われます。朝日町で生まれた赤川焼きの一つである五郎八茶碗は、飲み口が少しすぼまっているのが特徴です。また茶せんは夫婦茶筅と呼ばれ、二本の茶筅が合わさっています。これらを使ってお茶を「バタバタ」とあわ立ててから飲むことからこの名が付いたことは、よく知られていますね。バタバタするのは、沸騰した熱々のお茶を冷まし、好みのまろやかさに調節するためで、泡が細かいほどまろやかになります。

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茶碗と茶筅を用いて、バタバタしています

○飲み方

バタバタ茶の飲み方を紹介として『magazine Asahi』(※4、p. 37)では、「黒茶を木綿の布袋に適量入れ、イロリに掛けられた茶釜に入れて沸かす。適度の色と味の出たお茶を柄杓で汲み、五郎八茶碗に入れる。塩を少々入れ、二本合わせの茶せんを泡が立つまで左右に動かす。数十回も振ると泡立ち、飲める。」と紹介されています。

『暮らしの図鑑お茶の時間』(※5、p. 45)によると、このような茶筅でお茶を泡立てて飲む「振り茶」が他にもあります。島根県の「ぼてぼて茶」や沖縄県の「ぶくぶく茶」で、ぶくぶく茶の作り方としては、「炒った米を煮出したものとさんぴん茶(ジャスミン茶の一種)や番茶とを大きな木の鉢に入れ、茶せんで泡立てます。お茶と赤飯を盛った茶碗に泡をのせて、でき上がり」です。バタバタ茶と同じように泡立てる工程がありますが、お茶の種類やご飯と一緒にいただく点が違っていて地域それぞれの味わい方がありますね。

バタバタ茶は泡立てる飲み方以外にも、番茶のように煮出してそのまま飲むこともできます。蛭谷の方々は、バタバタ茶伝承館では道具を使って飲み、家では煮出して飲んでいるそうです。朝日町のまめなけ市場でこれらの道具が販売されていますし、道具がなくてもなないろKAN横の歴史公園旧川上家(https://www.asahi-tabi.com/asahimachi/249/)や蛭谷のバタバタ茶伝承館では実際の道具を使ってお茶を飲む体験ができますので、ぜひ味わっていただきたいです。

ダウンロード (1)

※4 朝日町(1990)『magazine Asahi』p. 37.
※5 暮らしの図鑑編集部(2019)『暮らしの図鑑お茶の時間 楽しむ工夫×世界のお茶100×基礎知識』p. 45.


終わりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
お茶の分類やバタバタ茶の歴史と特徴についてまとめましたが、いかがだったでしょうか?朝日町では、なんと600年以上前からバタバタ茶が飲まれていたのですね。蛭谷の方々にとって、日常生活の一部となっていることもおわかりいただけたかなと思います。

次回は、製造方法と朝日町で生産されるようになった経緯について紹介するので、そちらもお楽しみいただけると嬉しいです!


ご協力いただいた方々
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朝日町商工会
〒939-0741 富山県下新川郡朝日町泊418
TEL/0765-83-2280 FAX/0765-83-2282
HP : https://www.shokoren-toyama.or.jp/~asahi/
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一般社団法人朝日町観光協会
〒939-0744 富山県下新川郡朝日町平柳688
TEL/0765-83-2780 FAX/0765-83-2781
HP : https://www.asahi-tabi.com/
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バタバタ茶伝承館
〒939-0712 富山県下新川郡朝日町蛭谷484
TEL/0765-84-8870
HP :  https://www.town.asahi.toyama.jp/soshiki/shokokanko/1449207727885.html
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