老舗旅館の継承ピンチ!後継者不足のワケと解決策:未来への道標
はじめに
日本の旅館業は、100年を超える歴史を持つ老舗企業も多く存在し、古くから家族経営による世襲制で事業を承継してきた。しかし近年、旅館経営者の高齢化や価値観の変化などを背景に、親族内承継が難しくなり、後継者不足が深刻化している。
1. 後継者不足の深刻な現状と背景
近年、旅館業における後継者不足は深刻化しており、観光庁の調査「事業承継等の検討状況」のアンケート結果によると、旅館・ホテル経営者の約3割が「事業承継をしたいが進んでいない」、約1割が「事業承継をせずに廃業を検討している」と回答している。
この背景には、主に以下のような要因が挙げられる。
経営者の高齢化: 多くの旅館経営者が高齢であり、今後10年以内に事業承継を考える時期を迎える経営者が増加していく。
価値観の変化: 現代の若者は、必ずしも家業を継承することに固執せず、自分のキャリアやライフスタイルを重視する傾向がある。
旅館業の労働環境: 長時間労働や低賃金、休みが少ないなど、旅館業の労働環境が厳しいと感じる若者が多い。
事業規模の縮小: 少子高齢化や観光客の減少により、旅館の経営規模が縮小傾向にあり、魅力的な事業継承先としての魅力が低下している。
観光経済新聞の過去記事にも旅館の事業承継を取り上げているので参考にしていただきたい。
2. 親族内承継が難化する理由:具体的な事例
親族内承継が難化する理由は、様々考えられる。以下、具体的な事例を交えながら考察する。
跡継ぎ候補の不在: そもそも跡継ぎ候補となる子供がいない、あるいは他の道に進みたいと考える子供が多いこと。
家族間の意見対立: 跡継ぎ候補となる子供がいても、親との考え方の違いや、他の兄弟姉妹との間で意見対立が生じるケースがある。
経営に対する不安: 跡継ぎ候補が、旅館経営の難しさや責任の重さに不安を感じ、継承を躊躇するケースがある。
都市部への流出: 地方にある旅館の場合、跡継ぎ候補が都市部への就職や進学を希望し、地元に戻りたくないというケースがある。
3. 未来への道標:解決策を探る
旅館業における後継者不足問題は、単に個々の旅館の問題にとどまらず、日本の文化継承や地域経済にとっても重要な課題である。以下では、解決策となる可能性のある方策をいくつか提案する。
経営環境の改善: 長時間労働の是正や、休日の確保、賃金体系の見直しなど、旅館業の労働環境を改善することで、人材確保を促進し、後継者候補にとっても魅力的な職場を作り上げることが重要である。
事業承継の円滑化: 国や自治体による事業承継に関する支援制度の充実や、経営者向けの研修やセミナーの開催など、事業承継を円滑に進めるための環境整備が必要である。
地域全体での取り組み: 地域全体で旅館業を盛り上げ、観光客を誘致することで、旅館経営の収益性を向上させ、後継者にとっても魅力的な事業となることが重要である。地域の旅館組合や全旅連青年部への加入することでの、旅館経営者同士の交流は旅館の事業継続へのパワーとなる。
多様な継承方法の検討: 必ずしも親族が継承する必要はなく、従業員への事業承継や、外部からの人材招聘、また近年増加しているM&Aなども選択肢として視野に入れて考えることも場合によっては必要である。
情報発信の強化: 魅力的な旅館経営の事例や、旅館の事業承継の事例、後継者支援制度に関する情報を積極的に発信することで、旅館業への理解を深め、関心を高めることが重要である。
まとめ
関係者全員で力を合わせて旅館業の未来を作ること
旅館業における後継者不足問題は、関係者全員が協力して取り組むべき課題である。経営者自身は、事業環境の改善や、後継者育成に積極的に取り組む必要がある。また、国や自治体も、支援制度の充実や、地域活性化策の推進など、様々な施策を講じる必要がある。金融機関も事業承継を支援するバックアップも今以上に必要だ。そして、地域住民や観光客も、旅館業を支える存在として、積極的に旅館を利用したり、地域文化の振興に貢献したりすることが重要である。
旅館は日本の文化遺産であり、地域経済を支える重要な存在である。関係者全員が力を合わせて、旅館業の持続的な発展(サスティナブル)に向けて取り組むことで、旅館の未来への道標となるだろう。