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インディペンデントスモールオフィス研究 - Part 0 : プロローグ(改訂版)

2022年に企画を組み立てたものの、なかなか記事の編集の時間が取れずにストップしていた「インディペンデントスモールオフィス研究」。ポッドキャストにするか、簡易的な投稿にするかと思い悩んでいましたが、2025年から企画を再開することになりました。

あれから3年が過ぎ、環境の変化や新しく始めたこともありましたが、「使い手によって選ばれた土地で、使い手によって作られた働く空間」を発信することに大きな価値があるのだという想いは変わらず、より届けたい人、取材したい人は増え続ける一方です。

このプロローグに加え、以降は過去に取材した記事3本を掲載したのち、2025年に開始した取材の記事の掲載を進めていく予定です。
現在活躍されているクリエイターの皆様をはじめ、デザイン学生の皆さん、場を活用したい方々に届くことを願っています。


私は浅草に拠点を持つデザイナーです。肩書きは「時間と空間のデザイナー」としており、建築、インテリア分野がメインです。最初は一入居者として過ごしていたKAMINARIビルでしたが、「モノだけではなくコトのデザインをしたい」という想いから、現在はイベントスペースのディレクションやコミュニティマネージャーを担当しています。

MA+OI ATELIER

昭和42年築のビルの一室をリノベーションし、アトリエが完成したのが2021年の6月。あれから3年半が経ち、これまでKAMINARIビルには、クライアント様、クリエイターの友人、イベントスペースのオーガナイザー様、イベントのお客様など、沢山の方に訪れていただきました。
逆も然り、私もお仕事や友人のクリエイターの紹介で、同じ規模感のアトリエに伺う機会がありました。

拠点はさまざま。規模もそれぞれ。用途も違い、テンプレート化はされておらず、その人にしか作り出せない場がそこにはあり、過去のストーリーも沢山詰まっていました。

この人はなぜこの街を選んだのだろう。私は賑やかな街が好きで下町に来たけれど、そうでない場合は?どうやってこの物件を探したのか。内装はセルフリノベーション?費用はいくらくらいかかったのか?この土地にアトリエを構えて起きた変化は?

今回の記事では、インディペンデントスモールオフィス研究(使い手によって選ばれた土地で、使い手によって作られた働く空間、独立小型オフィス、以下ISOと表記)に至ったより詳しい理由や、研究の結果をどのように活かしていきたいかを、この記事を開いてくださった皆様に知っていただきたいと思っています。


インディペンデントスモールオフィスの定義

独立した小規模なオフィス
ISO研究では、「使い手によって選ばれた土地で、使い手によって作られた働く空間」と定義します。

ISO研究の目的

その1:働く時間を豊かにすることで、クリエイターの人生を豊かにする

「人生の6割を占める『仕事』のための空間をよりよくすることが、クリエイターの豊かな人生に繋がる」

1つ目の価値は、インディペンデントスモールオフィスを使用する人々は、必ず『ライフワーク、夢、功績』のために仕事をし、『湧き上がってくる動機』に向けて整えられているため、すべての空間が「自分ごと」で運営されており、時空間の質が良いということです。

1日8時間×35年=62,440時間を仕事に捧げる。
仕事は、平日起きている時間の5-7割を占有する。時間だけではなく、空間も同じである。
仕事は『時間の占有者』であり、『空間の占有者』であり、『気持ちの占有者』であり、『人間関係の占有者』である。
仕事には『湧き上がる動機』と『仕方なくやる動機』がある。

「働き方の哲学 」
著者/編集: 村山 昇 出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン

また平日の5-7割を占める『仕事』のための空間を研究し、空間をよりよくするためのヒントを発信することで、クリエイターの平日の5-7割をより豊かにすることができるかもしれないと考えました。

クリエイティブによって発生する豊かな時間には、製作者であるクリエイターと、受け取り手である生活者の両者による相互的な関わり合いが必要不可欠です。
まず自分のできることをやってみようと考えた際、私が今するべきことは、特に若手のクリエイターの選択肢の幅を広げることでした。

上記の『仕方なくやる動機』を否定している訳ではなく、今は、この研究によって『湧き上がる動機』を持つ人々に数々の事例を届けたい。
結果的に、『仕方なくやる動機』の中で働く人々の空間にも作用する打ち手が見つかるかもしれないといった順番です。

その2:若手クリエイターの選択肢の幅を広げる

「固定観念の外を知ることで選択肢を知り、安心して欲しい」

デザイン学校、最終学年では、就職ガイダンスは山ほどあります。しかし、就職率が志望者数を左右する現代で、進学以外の就職をしない生徒に対しては長い間否定的です。
無意識のうちに、学生たちの選択肢は「進学」「就職」の二つに分かれていきますが、実際はそんなことはありません。私は事業提携という形で師匠に弟子入りし、日々働きながら、学びながら、浅草の拠点でアウトプットをする日々を過ごしています。そういった仲間にも出会ってきました。

誤解の無いよう、しっかりと記載しますが、決して就職に否定的という意味ではありません。幸せの形は人それぞれですし、資格取得や実務経験が重要な職業については、就職がベストです。安定した家庭という幸せを求める人々にとっては、福利厚生は重要な判断基準です。

しかし、進路を就職と進学の2つの枠に当てはめてしまうことは非常に危険だと考えています。学生時代にクラスメイトから言われた、「優秀なのにまだ就職先が決まっていないんだね」という言葉は今でも覚えていますし、問題はクラスメイトや学校ではなく、「優秀なのに」という言葉を言わせてしまう現代の固定観念だという問題意識があります。

就職セミナーはあるのに、個人事業主セミナーはない。開業届の出し方も、税金の仕組みも、請求書の書き方も、確定申告の方法も、小学校から一度たりとも学ばず、就職先に向けて少しずつ歩んでいく過程で、自分が本当にやりたいこと、その意味の本質に出会うことができるのでしょうか。

後に、就職、転職という固定観念の中で闇を彷徨い、やがて精神を病み、クリエイティブから遠ざかっていく人を何人も見てきました。大手企業の中堅社員ですら「何がしたかったのか、どうすればいいのかわからなくなってしまった」とつぶやく声を、私は実際に聞いています。

現在は座談会を実施し、対話の場を設けることで未来の話をするプロジェクトも行っていますが、ISO研究も同じように、「固定観念の外を知ることで選択肢を知り、安心して欲しい」という同じ願いがあります。

一度独立の夢を持ったクリエイターが、現在あるISOを知ることで、選択肢の広さを知り、希望を持って生きてほしいという思いが、もう一つの目的です。

その3:各地にあるISOを繋ぐ

「効果的な取り組みの情報を共有し合うことで、各拠点をより良くする」

ISOは、使い手によって選ばれた土地であるが故の課題点があります。それは、各拠点ごとが交流しづらいことです。KAMINARIビルはomusubi不動産という、シェアアトリエを多く管理する不動産会社が管理しているのですが、他の拠点からシェアされた情報は、効果的に作用しています。

各拠点に散らばったノウハウを集め、他の拠点が知ることで、より良い場が都内に、日本に増えるかもしれない。こんなクリエイターさんを探していたという出会いもあるかもしれない。そんな拠点同士のつながりも目的にしています。

この記事を届けたい人

ISO研究は、私たちの興味により始められた企画ではありますが、今後この記事を、以下のような方に届けることで役に立っていきたいと考えています。

【 今後場を創りたい人々 】
今アトリエを構えたいと思っているクリエイターさんが、自分に合った土地や物件、空間を探し、運営していく際のヒントになりたいと考えています。

【 すでに場を持つ人々 】
既にインディペンデントスモールオフィスを所有しており、今後、アトリエとしてだけではなく、よりアクティブに活用していきたい人々。また、すでに場を活用している方には、インタビューに伺い、記事にすることで、場の認知を広めるための助けになりたいと考えています。

【 読み物として楽しみたい人々 】
インディペンデントスモールオフィスの記事では、各空間に、イラストレーターのさこさん(https://www.instagram.com/buri_to_daicon_oroshi/)による、イラストベースの図面が登場します。じっと見入ってしまう間取り図で想像を膨らませることが好きな方や、建築学生にも楽しんで読んでいただける記事にしていきます。


さて、次回からは、実際にインタビューの記事を発信していきます。
記事の更新については、各種SNSからも発信していきますので、フォローしてチェックしていただけると嬉しいです!

それでは、また次回のISO研究でお会いしましょう!


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