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旧友をもてなす、フランスの家庭料理

「朋あり遠方より来たる、亦た楽しからずや」。

私の場合、「遠方の朋友、かつ旧友」となると、例外はあれど必然的に1万キロ越えとなる。花の都パリまでならまだしも、そこから北フランスの港町までがこれまた結構遠いから。だから、そんな日は来やしないと思っていた。

あれはたしか10月の半ばのこと。インスタグラム経由で突然メッセージが来た。送り主は、旧友のWちゃん。11月に旅行でパリにくるから会いたい、とのこと。

あー、会いたいのはやまやまだけどパリまで行くのは今はちょっとな・・北フランスに引っ越したのでパリにはもういないことを伝えると、予想外の返信が。

「引っ越したの知らなかった!_(中略)_時間あるから、ゆいゆい(←学生時代のあだ名)の住む街まで行ってもいいし!」

「え!?・・・ほんとうに??」

フットワークの軽さはさすがとしかいいようがない。
そんな私の尊敬するWちゃんは、この記事でふれている、ユニークでパワフルな旧友。

過去の記事にたまに登場する、世界一周ダンナ探しの旅をし、中東の王女さまに謁見し、シヴァ神を奉るヒマラヤの仙人サドゥに惚れ込んでひとりインドあたりを放浪する友、Wちゃんからだ。大学に入る前からの付き合いなので、かれこれ彼女との付き合いは約20年にもなる。今は息子ふたりを育てながら会社経営もこなす、尊敬する私の自慢の友人だ。
封筒を開けると、満開の桜の立体カードと、一枚のミニ便箋がお目見えした。便箋は、見事な夜桜の絵。横山大観の『夜桜』だ。
LINEやメールでもメッセージをもらうのはもちろんうれしいけれど、とても忙しい人なのに私のためにカードを選び、メッセージを書き、郵便局まで足を運んでくれたことに対して格別のよろこびがある。それに、満開の桜の裏に、この苦しい状況下で、彼女は私のnoteでのクリエイティビティを見てとても心が洗われていると書いてくれていた。誰かの役に立てていることがとてもうれしかった。
振り返ってみると、社会人になってから私が体壊したときはわざわざ自宅まで駆けつけてくれたし、彼女が相当きついとき私も会って色々話を聞いた気がする。大胆でパワフルだけど気遣いができて繊細で責任感のかたまりの彼女とは、歳を重ねてお互い離れていても、こうやって励まし合っているのだなと思わず涙が出た。

上記過去記事より引用
今でも大事にしているポストカード


大仕事をひとつ終えたタイミングで、充電期間中にお母様の好きなパリを中心に母娘二人旅をするのだという。

その後のやりとりを重ねて、11月上旬の週末、1泊の予定でお母様とともに我街まで来てくれることになった。貴重な旅の間に北フランスの港町まで来ていただけるなんて、うれしいことこの上ない。

旅の中の、心に残る思い出の1ピースになってほしい。フランスって国は、キラキラなパリだけでなく、自然豊かでのんびりあたたかいこんなところもあるんだよってことを感じてもらえればいいな。

自宅では、大それたことはできないけど、気持ちをこめて、ささやかなおもてなしをしたい。テーマは王道、ローカルなフランスの家庭料理にしよう。


おもてなしメニュー準備

メニュー作成においては、ひたすら過去の自分noteを読み漁る。もはや立派なマイレシピブックである。noteを書いてきてよかったと思う瞬間のひとつ。


ー お品書きー
ー アペロ ー
当日マルシェで仕入れるチーズの盛り合わせ、ラディ、リエットなどなど

ー 前菜 ー
・かぼちゃのスープ
・きのことベーコンのキッシュ
・カラフルにんじんのキャロットラペ
・ムール・マリニエール(ムール貝の白ワイン蒸し)

ー メイン ー
・鴨肉でつくるアシ・パルマンティエ

ー デザート ー
・タルト・オ・ポム(りんごタルト)
・ウィークエンド・シトロン(レモンケーキ)

海のものは必ず一品入れたいなと思い、迷ったけれども、生牡蠣のリスクは避けて北フランス名物のムール貝を採用することにした。
メインは、パリ時代に作ってとても美味しくできた記憶のある、鴨肉でつくるアシパルマンティエ。あとは、フランスの美味しい野菜をところどころふんだんにちりばめることとしよう。


前日の仕込み

おふたりは当日の夕方着なので、午前中にマルシェで買い出し、午後2、3時間料理にとりかかれる。当日仕入れるムール貝と、メインのアシ・パルマンティエ以外は、前日にほぼ仕込みを終わらせてしまおう。

ひとくちコンロとオーブンをフル稼働させて、かぼちゃのスープ、きのことベーコンのキッシュをつくる。待っている間にキャロットラペなど箸休め的なものたちも仕込んでおいた。

また、手のかかるデザートは、翌日のほうがむしろ美味しかったりするもので、こういうときにもってこい。

レモンは大定番の一品をチョイス。Otto氏からのリクエストでもある。

私の十八番、けしの実が入ったウィークエンドシトロン


りんごはこちらで。

季節のりんごを大量カッティング
夜な夜なりんごを並べた

あとはちょっと早いけれども、家をクリスマス仕様にした。少しでもにぎやかなほうが楽しいかなと思って。

今年も我が家はエコツリー
たまたま前日が結婚記念日だったので、Otto氏が買ってくれた花束を飾る


そしていよいよ当日。朝、日曜日の港マルシェでチーズとムール貝を仕入れる。午後は、アシ・パルマンティエの仕込みと、ムールをすぐ調理できるようによく洗って冷蔵庫にスタンバイして、いざお出迎え。

夕方、目立つようにヴィヴィッドなレインボーポンポンでお出迎えの俺


アミアン経由でやってきたWちゃんとお母様。Wちゃんとは6年ぶり?くらいの感動の再会。お母様とははじめてお会いするけれども、とてもフレンドリーな方だったのですぐに打ち解けられた。

迎えにいったその足で、旧市街をお散歩
翌日がちょうど祝日(第1次大戦終戦記念日)だったのでこのような仕様に


自宅にもどり、少し休憩したのち、宴のはじまりはじまり♩

アペロ

北フランスのビール、泡などで乾杯したのち、アペロで場をあたためる。

マルシェのチーズ屋さんでは、ハード系のチーズをセレクト(コンテ・ミモレット・バスクの羊チーズOSSAU-IRATY)。あとはただ盛ったり切ったりして並べたのみ。

右上から時計回りに、トリュフ風味のチップス、バゲット、チーズの盛り合わせ、自家製赤スグリのジャム、ラディ、ピクルス、豚肉のリエット(市販)

左下のジャムは、バスクチーズとの相性がとてもいいので一緒に出したらお二人とも気に入ってくれた。ラディの形をみては面白い!チーズは濃厚で美味しい!と、期待通りのリアクションが返ってきてくれて、こちらもうれしくなる。

前菜

テーブルのものが少なくなってきたところで、前菜の準備を。ムール・マリニエールは出来立てが美味しいので、ワイン片手にキッチンへ。お母様はうちのOtto氏ともなんなく会話ができる強コミュ力をお持ちなので、Wちゃんと立ち話をしながらムールを仕上げる。おしゃべりしながら料理するの、楽しい!ユイじょりのおしゃべりクッキングとかいつかやりたい(上沼恵美子リスペクト)。

蒸しあがったところ
Wちゃんの歓声があがる

キッシュやそのほかの前菜たちをテーブルに並べる。本当はキッシュと箸休め系とスープを盛り合わせっぽくして出したかったけれど、ここは家庭料理っぽく大皿サーブ。

ムールとキッシュ
そして箸休めその1、カブの柑橘マリネ(いつも食べてるやつ)
久しぶりのおうちムール
フレッシュなイタリアンパセリとタイムを仕入れてきてよかった
小さくカットしやすいかなと思い、スクエア状のキッシュに
中身はたまねぎときのことベーコンで具沢山
箸休めその2、キャロットラペ(これまたいつも食べてるやつ)
かぼちゃのスープ
隠し味にセロリラヴ(根セロリ)を加えて

どれも好評でうれしかったけれど、特に、小ぶりでぷりっとしているフランスのムール貝にいたく感動してくれていた。港町冥利に尽きる。


メイン

メインはマイレシピから、鴨肉を使ったアシ・パルマンティエ。日本で鴨肉って珍しいだろうし、フランスのじゃがいもの美味しさもお伝えできそうなので、採用。

ピュレも鴨肉も用意ができていたので、グラタン皿に入れてオーブンにかけるだけ。どちらもすでに加熱してあるから生焼けとかのリスクもないし、こういうときにいいですな。表面がこんがり焼けたら出来上がり。

前回はフォークで模様をつけたけど、今回はスプーンで模様をつけた・・・つもり

さすがにみんなお腹がふくれてきたか、美味しかったけどたくさん残ったのでこれは翌日以降のOtto氏と私のごはん行き。


デザート

ここでとどめのデザート。食器洗いなどを率先してやってくれていたOtto氏が一切れふた切れくらい食べていたような・・・私は疲れと酔っ払いであまり記憶がない。

朝ごはんに持ち越し


こうして、楽しい夜はあっという間に過ぎ去ってしまった。翌日は、北フランスの海岸経由でドライブして、巨大カルフール散策などしたのち、夕方リールの駅でお別れ。私は半年ぶりに日本語を話した&喋りまくったので、久しぶりに言語脳が働いて心地よかった&ずっと喉が痛かった(笑)

OHAYO🐶翌日はシックな装いの俺
Wちゃんが撮ってくれたイケてる感じのバッグインな俺


Wちゃんとはかれこれ人生半分以上の付き合いになるけれども、たとえ会えない時間が長くとも、会えば昔を思い出す。アルコールにより記憶の片隅におしやられ、そして消えかけていた昔の思い出が、するすると蘇ってくる不思議な感覚を覚えた。

長女だったり地方出身だったりで割と似たようなバックグラウンドを持ちつつ、かたや社長業、かたや主婦と今はほぼ真逆の人生を歩んでいる私たち。彼女のように社会でパワフルに活躍することは私にはできないけれど、ひとそれぞれの持ち場があるというか。そんな彼女のような昔からの友人たちが、疲れたときにふらっと会いに来てもらって、そこで癒しだったり愉しみだったりを提供できる人で私はあり続けたい。そんなことをふと思ったりした。

Wちゃんからいただいた日本からの貴重なお土産
ツボが押されられすぎている

Wちゃん、ありがとう。どこにいようと、またきてね。

オパール海岸を散策
対岸にはイギリス

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ユイじょり
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