将棋めしとおやつの旅~東京・その1(13)セルリアンタワー東急ホテル・Japanese Cuisine 桜丘
(2021年12月の記録です)
セルリアンタワー東急ホテルのロビー階から階段を上り、夕食をいただく予定の『Japanese Cuisine 桜丘(さくらがおか)』へ向かった。2021年竜王戦第1局で豊島将之先生が召し上がった鉄火丼、鰻丼、もしくは藤井聡太先生が召し上がった天重御膳を味わいたかったからだ。
フロント階の『ガーデンキッチンかるめら』でケーキセットドゥオ(ティラミスとショコラオランジュ)とコーヒー(お代わりしたから2杯)で重くなった腹と軽くなった財布に、更なるパンチを浴びせることになる。いや、絶対美味しいのだからそんな言い方は失礼だ。「ハイ、喜んで!」である。
入店と共に「コートをお預かりいたします。」と言われた。しまった。一流でも何でもないブランドの襟のタグまで見られてしまう。それに、バッグの当たる脇腹と袖の辺りには毛玉ができている。よく考えたら昨晩はこのコートを着て木村一基九段に謁見していたのだ。古びたぬいぐるみのような姿だったろう。途端に恥ずかしくなる。
1人だが4人掛けのテーブルに案内された。小さな花が飾られたテーブルをゆったりと使う。日曜の夜、客はほとんどいない。
ネットで事前にメニューを確認していたが、やはり先生方の召し上がったものは無い。ランチメニューで辛うじて鰻丼があったのだが、ディナーメニューには見当たらない。
そして、ディナーで最も安価なメニューは、鰻重7,200円である。
もう一度言う。
一番安価でななせんにひゃくえんである。ひえ~。
わかりやすく言うと、AbemaトーナメントのチームTシャツ2着と缶バッジを買ってもお釣りがくるお値段の鰻重である。(なお、2021年12月当時はシーズンオフだったためそんな計算はしていない。)
意を決しスタッフを呼び鰻重を注文した。
香りの良い肝吸い。シャキシャキの三つ葉。
ふっくらした鰻は柔らかく、箸で綺麗に切れる。
もちろん初手は、鰻屋藤井猛先生のように、山椒をかけずに食す。
鰻の味はタレに頼り過ぎておらず、きちんと鰻だ。ご飯と一緒に食べると途端にタレの味がはっきりとする。
中盤で山椒をキリッキリッと挽いて味変。爽やかな香味のアクセントが加わり、タレの甘じょっぱさが引き立つ。
やっぱり鰻はいい。加藤一二三先生が対局時にふじもとの鰻重を昼夜召し上がっていたそうだが、その気持ちもわからなくもない。しかし、残念なことに私にはなかなかできないお値段。
ケーキ2個の後の鰻重は、日ごろより大喰らいを誇っている(?)私にもヘビーであった。それに何より、豊島先生と同じメニューをいただくという願いが叶わなかったことが、心と腹に影を落とした。
退店の際にスタッフの方とお話しし、夜にこれだけの量はちょっと重いので(見栄を張って懐事情をひた隠し。)ランチメニューにあった錦糸卵の上に鰻がのっている鰻丼をいただきたかったことをできるだけ丁寧にお伝えしたところ「ご相談いただけたらご対応できたかもしれませんので仰ってくださいね。」と優しくお答えいただけた。
後日談だが、2週間後に訪店した時、ディナーメニューに鰻丼が加わっていた。スタッフの方のご配慮に感謝である。おかげで豊島先生と同じメニューをいただくという願いはその時に叶った。鰻丼の食レポはまた別の機会に。
この階には中華や寿司などの店もある。また、鉄板焼きの店は『桜』というので、もし行かれるのなら「桜」の文字を手掛かりに店を探すのではなく、「桜丘」を目指してほしい。夫(ウッカリ者)とここで待ち合わせたことがあるが、危うく鉄板焼きの店に入りかけたと言っていた。
さて、落ち着きはらった店内でヘッドホンをかけタブレットを立てる勇気が無かった私は、車で夫の戻りを待ちながらNHKスペシャル「四冠誕生 藤井聡太 激闘200時間」を観た。この番組は比較的偏りが無く、しみじみと振り返ることができて良かった。実を言うとしくしく涙を流しながら観たので、店内で視聴しなくて正解だったと思う。録画は永久保存版にすると決めた。
(つづく)
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