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『宙わたる教室』第四話 考察 過去たくさん傷ついて、癒す習慣がなかった人が内包する加害性

この回は、『老害』といわれる現象をうまく描いている印象をもった。

今回のメインキャラクターは、団塊の世代、金の卵だった長峰さん。おそらく70代。

団塊の世代は、戦後社会の混乱の最中に生まれた。

帰還兵を親にもった子どもたちは、戦争由来のPTSDを抱えた父親の影響を様々な形で受け継いできた。人を殺すように訓練され、実際に殺し殺される恐怖の中で、正気を保てた人などいなかっただろう。戦争の記憶に支配された父親が家庭に与える影響は甚大。負の連鎖は脈々と受け継がれていく。

学問に触れることができたのは、一部の裕福な家庭、勤勉な学生だった。

今みたいに、『自分らしく、個性を』とか言ってられない時代。
マズローの5段階欲求説だと、生理的欲求と安全の欲求を満たすことに全力をかける必要があった世代。

私が大学生だった時、哲学の教授が『学ぶことで他者や社会に対する加害性を減らすことができる』と言っていた。

深堀型(研究)の学びの習慣がつくと、自分の知っていることはごくごくわずか、自分がだけが正しいという思い込みをもちにくくなる。

高校大学に進学できた割合が今よりも少なかった当時、戦争という大きな人権蹂躙後の世界を生きた人々がもつ加害性は今よりも大きかったんだろうなと感じている。

祖母世代の性の話をきくと、『あ、それめっちゃレイプだよね』ってことがざらにあるから。


戦後の貧しく暴力にあふれた時代を生きた人たちからすると、今の若者は自分たちが子どもの頃喉から手が出るほど欲しかったものを手に入れているように見えるだろう。生理的欲求、安全の欲求が満たされているように見える若者たちを見て、怠けていると憤るのもまあうなずける。

ダイヤモンドオンラインより

最初長峰さんを観ていて、この人がこういう意見をもつのは自然なことと頭では理解できたが、同時に彼の持つ加害性にうんざりしていた。この毒々しい感じ、私の父親によく似ている。

『自分はこんなにも苦労した。それに比べて⋯』という発言の裏には、『時分は辛かった、頑張って乗り越えた、わかって、認めて』という小さな声がある。

自分が受けた傷、理不尽さへの手当てができないと、似たような状況で生きる他者を見かけた時に、不快に感じたり、根性論で詰め寄ってしまいたくなるのも理解できる。

『老害』と認識される人たちがもつ加害性・暴力性の半分以上は、自分自身が傷だらけであることを認識していないこと、傷の手当てをしていないことに起因していると考えている。

思い出して、イライラする、嫌な感じがある、動悸がするとか冷や汗をかくような記憶は、カウンセリングでだいぶ楽になることがある。

人が誰しももつているトラウマ的な処理がされた記憶は、EMDRができる臨床心理士とのセッションで劇的に楽になる。

トラウマに対して適切な見立て、治療ができるカウンセラーと出会えるのは1/100くらいという説があるが、上記の人たちは大学院でてトラウマ治療のトレーニング受けた専門家なので、聞いてみるといいかもしれない。

自分が受けた傷を癒す割合が高まれば、彼らがもつ毒素、加害性はかなり薄まるんだけどな。


長峰さんは、
『人のもつ苦しさは比べられるものじゃないでしょ』とアンジェラさんに言われてハッとなったり、

若者の気に入らない行動が、実は識字障害への対処法だったということを知って、ハッとしたり、

自分の行きすぎを振り返ることができる。学び直せる環境があると毒性が薄まるんだよなと、自分の過去も振り返りながら考えていた。

自分がどっぷり研究したことのない分野に対して、大抵人は偏見を持っているが、大抵人は自分が偏見をもっていると認識していない。何なら良識のある人くらいの気持ちで過ごしている。

スウェーデンのように、学びたいときに大学に無料で戻れる仕組みがあれば、社会の中から暴力性が減るんだけどな⋯


団塊の世代は、社会の要請、世間の声に従って一生懸命生きてきて、発展途上の時期にありがちなアスベスト、じん肺、たばこといった問題で健康を脅かされた年代でもある。経験も蓄積されている。

彼らが今の人権意識、何が暴力なのか、バウンダリーについて学び直しをしたら、生きやすい社会を創る力になる。


物語は、長峰さんがクラスの皆に自分の人生を話すことで、進んでいつた。

彼らがした『自分の生きてきた状況を相手に伝える』ことが、みんなできたら世の中の衝突一定数減るだろうな。男らしさの呪が邪魔してできない人が多数だろうなと予測してるけどどんなもんだろ。


若者が自分のルーツを探る活動を、小中高のどこかでできたらいいかもだけど、毒々しい家庭が少なからずあるから、その活動自体が一定数のこどもをえぐるかもだな…

全体にはできない。パーソナルでクライアントの希望があればできるかもだけど、毒々しい家庭の場合は依存から抜け出そうとする行為は、親が潰しにかかるから、うーん、やっぱかなりむずかしいな。










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