乗り越えた試練の数だけ強くなる
物心ついた頃から、二遊間が好きだった。
チームの顔となる主砲やエースではなく、いつもプレーに惹かれるのはセカンドとショート。鮮やかな守備で魅了し、チームを支える立役者に心を奪われた。
アライバの時代に入ると、ますます二遊間に惹かれていく。強いドラゴンズの顔となり、不動のレギュラーとして活躍した二人のプレーは、今もなお記憶が色褪せない。初めて買ったユニホームは、背番号6・井端弘和選手だった。
2023年、10数年ぶりにドラゴンズファンに復帰して、唖然とした。二遊間不在。オフにそれまでレギュラーだった選手のトレードが行われ、若い選手がポジション争いを繰り広げていた。
そのうちの一人が、福永裕基選手だった。
ルーキーではあるものの、26歳。甲子園の出場経験はなく、大学・社会人と進み、二度の指名漏れを経験。ラストチャンスと挑んだというドラフト会議で、支配下では全体で最後のドラフト7位で指名をされた。
ルーキーながらセカンドで開幕スタメンを掴み、春先は好調。5月終わりまで3割超えの打率を残した。広角に打ち返すのびのある打球や全力でプレーしているところに惹かれて、いつの間にか福永選手を応援するようになっていた。新調するユニーホームは、背番号68に決めた。
2年目の今年、開幕は二軍スタートだった。ファームで十分な成績を残し、4月末に昇格すると、主にサードを守りながら、強みのバッティングで成績を残していく。
そして、7月12日、一ファンとしても想像していなかった出来事が。福永選手が4番に抜擢されたのだ。
現地で、自宅で、福永選手の応援歌を口ずさむとき、これまで彼が乗り越えてきたであろう試練を想像し、いつも涙が出そうになる。
26歳でプロ入りし今年27歳。年齢を考えると、プロ野球選手として第一線で活躍できる期間は、それほど長くはないだろう。だから私は今しかないこの瞬間を目に焼き付けるため、せっせと現地に足を運ぶ。
福永選手本人もお気に入りという応援歌を、バッターボックスまで届けるために。