経済、社会を形づくるキーワード
先週から「結い 2101」の運用報告会が始まりました。昨年度は、円安が進行し、大型割安株のみが大きく上昇する極端な相場の中で、「結い 2101」から投資をする、特徴のある、比較的中小型寄りの「いい会社」の株価は反応せず、強い逆風が続きました。
しかし、今年度に入り逆風は収まり、株式市場参加者の視線は少しずつ変わり始めているように感じています。為替動向などのマクロ要因で株式市場の方向性を見る動きから、徐々に個別企業の実体として業績に目を向け始めていますので、業績が堅調で、かつ割安感が出始めていた「結い 2101」の投資先にとっては優位な状況になりつつあります。
運用報告会では、そのような先行きへの期待を示しながら、お客様からの質問には全て答え切る姿勢で臨んでいますので、ぜひご参加ください。
詳細はこちら: https://www.kamakuraim.jp/news/detail/---id-2016.html
今回のnoteは、運用報告会や日頃の取組みの中で感じる「経済、社会を形づくるキーワード」について書いてみました。
1. 身近な投資とお金を介さないつながり
先におこなった運用報告会はオンライン開催でしたが、オンライン開催のよさといえば、周囲を気にすることなく、チャットで気兼ねなく質問や意見をいただけることでしょう。一例ですが、寄せられた質問の中には次のようなものがありました。
「経済のグローバル化が進む中で、身近な経済の大切さやお金を介さないつながりの大切さを感じている。投資先を考える上で、そのような視点を考えられることはあるか。」といった趣旨の質問でした。
私は、経済のグローバル化に対する「身近な経済」というキーワードからは、「多極分散型の経済」「コミュニティー・関係性の中で循環する経済」を、「お金を介さないつながり」というキーワードからは、「人と人との関係性から生まれる価値共創」「共感やボランティアで動く共助型の経済」などを連想しながら、すでに投資においてそうした要素を考慮しつつ、今後はさらにその重要性が高まるとの見方を示しました。
2. 「つながり」が求められる背景
この「つながり」という言葉、正確には「つながりの再構築」は、これからの経済、社会を形づくる上で重要なキーワードだと考えています。そして、その経済と社会、さらには人と人との「つながり」を形づくる上で大切な役割を果たすのが、お金であり、投資であると考えています。
少し場面が変わりますが、私は、本業最優先で、社外で講演などをする機会は多くありません。しかし、このところ、知人や友人からの頼みに応えて人前で話をする機会が何度かありました。
講演テーマや対象者は様々です。最近ですと、投資先の社員さんに向けた「お金の学び」、ファイナンシャル・プランナーに向けた「社会をよくする投資のあり方」、大手企業の経営者に向けた「会社経営を取巻く環境変化と経営のあり方」、取引先の社員に向けた「人生や仕事について」、などでした。
このように、経済と社会のつながり、お金・投資と経済・社会とのつながり、人生・仕事と社会とのつながり、など視点は様々ですが、こうしたテーマと先の運用報告会の場での質問とは、根っこで共通した背景があると感じています。
その背景とは、グローバル化した資本主義経済の中で進んだ市場経済、会社や個人の仕事の分業化・細分化、そうした仕組みに適合しやすいように競争社会や都市集中型の社会をつくりあげてきたこと、その結果として、自分と社会とのつながりを感じられにくくなっている点です。「結い 2101」の投資先であるアミタHDの熊野会長の言葉を借りれば、「孤独」を生む社会的背景と重なります。
先の米国大統領選挙、日本の衆議院選挙の結果から浮き彫りになったことは、「所得や生活に対する根強い不安や不満」でした。これも人と人、人と社会との関係性の希薄化からくる不安を払拭するための経済的欲求という側面があると感じます。
行き過ぎた資本主義経済の問題の一つとして相対的貧困層の拡大や格差がしばしば指摘されますが、本質的には資本主義経済自体が有する構造そのものが問われた選挙結果とも映ります。
3. 一人ひとりのお金の流れが社会を映す
お金の動きによって形作られてきた資本主義経済が、そうした歪みを生じさせるのであれば、それをよい方向に向かわせるのもまたお金の流れではないでしょうか。一人ひとりが使うお金の流れ、消費や投資の総和が経済であり、その経済のあり方が社会を形づくるからです。
そして、経済とは、お金を介した世界中の人と人とのつながりでもあります。お金や投資にどんな想いを込めるか、その想いの先に「いい社会」「いい未来」はあると考えています。これからも鎌倉投信は、信頼に根ざしたよいお金の循環を生む投資によって、投資家の資産形成に貢献しながら社会の持続的発展の両立を目指して頑張っていきます。
4. 運用で嬉しかったこと
余談ですが、今回の運用報告会での質問は、先の質問の他に、米国トランプ政権発足の影響、小林製薬への投資判断について、など様々です。普段、答えに窮する質問はあまりないのですが、先日は、「今年度『結い 2101』の運用で一番嬉しかったこと」と問われて、少し間が空いてしまいました。
私の答えは、「嬉しかったことはない」でした。今年9月、京都で開催した受益者総会など、お客様と直接会って対話する時間は、楽しく、充実していますが、常に緊張した自分がどこかにいます。
お客様の大事なお金をお預かりしているからでしょうか、振り返れば資産運用の仕事に携わるようになって35年の間、心の底から嬉しいと思ったことは一度もないように思います。いつか、真にお客様や社会に貢献でき、心の底から「何かを達成した」と嬉しさを噛みしめることができる日が訪れることを楽しみにしています。
この記事がよいと感じた方は、「すき」ボタンを押したり、SNSで感想をシェアしてくださると嬉しいです。皆様の反応や感想が鎌倉投信の「わ」を拡げる力になりますし、何よりも筆者の励みになります。
鎌倉投信のメールマガジンでは、noteの最新記事・鎌倉投信の新着情報を隔週でお届けします。ぜひ登録してください。
▶社会をよくする投資入門 -経済的リターンと社会的インパクトの両立-
当社社長の鎌田が執筆した書籍「社会をよくする投資入門」が、2024年5月27日にNewsPicksパブリッシングより刊行されました。
全国の書店やAmazon等で発売中です。ぜひお読みください。