くせ毛のふたり

▽▽
私は、君の髪がすき。
柔らかくて、雨の日みたいにちょっと湿気があるとうねっちゃう、
でもそれもかわいいと思っちゃう、少し癖のある髪。
まぁ、君のことがすきで、かなり分厚い色眼鏡がかかってるのかもしれないけど。

でも、私は自分の髪があまりすきではない。
細くてコシがあまりないせいで、アイロンで巻いてもすぐ取れるし、
雨の日は確実に湿気でうねる、残念なくせ毛。
君のくせ毛はすきなのに自分のはすきになれないままだ。


しかも君はどうやらサラサラストレートな髪が好きらしい。
一緒に歩いてるとき、きみの目線がどこかへいったと思ったら、そんな女の子を見てた……ってことが何度かあった。
その女の子がうらやましいし、ますます自分の髪がいやになってくる。

あ、ほらまた。

「ストパー当てようかな」
不意に、口に出た。



▼▼
独り言のようにぼそっと彼女はそう言った。

僕は、彼女の髪がすき。
柔らかくて、雨の日ははねる髪。「あーまた……」と言いながら直す姿もかわいい。
彼女は気にしてるっぽいけど、僕はかわいいと思っている。
…これが「惚れたもん負け」ってやつかもしれない。

そんな彼女がストパーを当てようかなと言っている。
あの髪がすきだし、あてる必要なんてないと思うのに。
むしろ、僕の方が当てた方がいいと思う。
くせ毛で湿気のある日はうねってしまう、まとまらない髪。
すきかきらいかで言うときらいに分類される。

「やったらおれも当てるわ。
ってか当てる必要ある?今の髪すきやねんけどなぁ」



▽▽
え、待って、きみもストパー当てたいの?ってか当てる必要なくない??
で、えぇ??私の髪がすきなの???

ちょっと脳の処理が追いついてこない。

「いやいや…きみこそ、まっすぐにする必要ある?
いいやん、くせ毛。ふわふわだし、触りがいがなくなるからやめとこ!」

思わず必死に止めてしまった。
一拍おいて、へらっと笑うきみ。

「なにそれ、触りがいって(笑)
ってかおれもくせ毛、気にしてるんやけどな」

気にしてることは知ってたけど……さ……

「んじゃ、ふたりとも当てないってことにしよか。
やっぱり今のきみの髪の感じが変わるのはもったいない」

なんて交換条件を出してくるんだ……と思いながらも
できるだけ涼しい顔をつくって
「しゃーなしな」と言ってあげる。

まぁ、年上のおねーさんらしく今日は譲ってあげよう。

でも、きみが私の髪をすきって言うなんて……
「こういうのは口にしないとわからんから、ちゃんと言うべきやで」
と喉まででたけど、さっきの涼しい顔が台無しになりそうなので
つぎの機会にとっておく。
うん、私もちゃんと伝えないとなぁ。

お互い、自分がきらいなところを相手がすきだと包み込んでくれる。
私たちって最高なふたりやなぁって思いながら、きみが「すき」って言った髪を撫でた。



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