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【小説感想】『十二国記-東の海神 西の滄海-』を読みました

『十二国記-東の海神 西の滄海-』を読みました。

『十二国記』とは、小野不由美さんという方が執筆した、中国風異世界を舞台にしたファンタジー小説のシリーズです。1991年から始まり、今もまだ完結していません。

どんな内容か大まかに説明すると、私たちが住む世界とは別に"十二国"という中国風の異世界が存在し、主にその十二国での物語が紡がれるストーリーです。

十二国とは、下記の画像のような世界です。
十二の国と、神々が住む山が存在する中央の黄海、それを取り囲む4つの海、そして虚海で成り立っています。

公式サイトより引用

日本と十二国とは特別な力で繋がっており、時折日本から十二国に流される人がいたり、逆に十二国から日本へやってくる人もいます。十二国の人たちは日本の事を"蓬莱"(ほうらい)と呼んでいます。

2019年に最新巻が数年ぶりに出た事で話題になりました。
私が十二国記を知ったのも、その時話題になった事がきっかけです。
私が今回読んだ-東の海神 西の滄海-は作品としては第三部にあたります。
おととしくらいからようやく第一部を読み始め、前日譚である"魔性の子"を含めて今回で第三部まで読み終わったことになります。

■ここが好き

十二国記、登場人物たちの描写が好きです。登場人物がみんな人間らしい。
高貴な人物から下賤な人物まで、様々な人物が出てきますが、どの人物も本当にいそうな風に違和感なく描かれます。どういう経験を積んだらこのくらい深い人物描写が出来るのだろうと思います。

■第三部について

第三部では、第一部から500年前の話、第一部で主人公たちを助けた雁国(えんこく)の王、"尚隆"(しょうりゅう/なおたか)とその麒麟である"六太"(ろくた)の視点で描かれ、彼らの国である雁国で内乱が起きる話です。
※麒麟とは、天啓を受け、王を選ぶ存在です。王を選んだあとは、宰輔として王に仕えます
※基本的に王や麒麟、またその周辺人物は、その地位になる事で不老不死になるため、500年でも何百年でも生き続けます

第一部では雁国はかなり裕福な国として描かれていましたが、第三部の500年前の時代では先代の王の影響でかなり荒廃してしまっています。

第三部では、尚隆の描写や六太の描写がとても良かったです。
尚隆はかなり大雑把で最初こそ家臣からの反感を買っていましたが、最終的には王としての役割をこなします。いざという時には王としてやる事はやる。
細かいところは家臣に任せる、といった具合です。
物事を大局的にみているのだなと思います。

そして六太も、尚隆に対して呆れているところはありながらも、大きな面で信頼している部分があるのが良いです。

斡由(謀反を起こした張本人)の家臣たちからの信頼が揺らいでいく流れも見ものでした。

その上で、なお揺るがない尚隆と六太の信頼関係や尚隆の家臣たちとの信頼関係が良い対比になっています。

ただ、元州(謀反を起こした州)の治水事業を尚隆が王としてちゃんとやっていれば(治水の権限は王にあった)、斡由もあんな強硬手段に出ず、結果的には家臣の信頼を損なうような一連の言動もしなかったのだと思います。

どちらにせよ、家臣に責任を転嫁するような人物では遅かれ早かれ何か問題が起きていたかもしれませんが、それでも謀反を起こすまでは元州を豊かにしていたのは間違いないので、惜しい事になったなとは思います。


■最後に

十二国記、現在は第九部まで出ています。まだまだ先は長いですが、少しずつ読んでいこうと思います。



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