スナイパーの意外な使い方 #毎週ショートショートnote
「悪魔をやってくれ」
と依頼をしてきたのは、天使だ。天使っていうのは、そういうものじゃないだろうと思うが、そいつは天使だと言い張る。天使がスナイパーを呼び寄せて、悪魔を殺れとは、世の中おかしくなったもんだ。
「報酬は仕事が終わってからだ」
と抜かりなく言ってくるところは、悪魔そのもの。まあ、いい。依頼は完璧にこなす。それが俺に課された使命だからな。
「失敗は許されないからな、わかってるな」
天使に念をおされるが、その見た目があまりに可愛いので緊張感がない。もちろんだと言い、俺は仕事場へと向かった。
あれが悪魔か。いかにも悪魔っていう感じの姿を捉える。バイキンマン的なその姿で、イヒヒ、イヒヒと笑う。可愛い。ああ、可愛い。マズい、可愛いすぎる! 無理! あんな可愛いのを撃つなんて、俺には無理! 涙が止まらなくなりながら、俺は銃口を空に向けた。
*
「この物語、必要?」
マラソン大会のスタートの台本を読んだ実行委員のひとりが言う。
「悪魔も天使も、スタートは一緒なのさ」
と、脚本家は得意げだった。
号砲にスナイパーを使う設定、もしかしたら書いてる方いるかもしれませんが……。
冒頭、「悪魔をやってくれ」、殺すという意味ではないのだよ、と回収したかったのも付け加えておきます。