すまいるスパイス「ピリカ文庫【坂道】」朗読回
先日、ピリカさんより【ピリカ文庫】の執筆依頼を受けまして、小説(2000字程度)を書かせて頂きました。
こちらのお話の朗読を、音声配信ラジオ「すまいるスパイス」にて、こーたさんがしてくださりました。
男性が主人公ではあるのですが、勝手に女性の朗読をイメージしていたもので、どういう感じだろうと思っておりました。
で、どういう感じかというと、こーたさんのお声がお世辞ではなく、ほんとうにしっくりと来たもので、自分で書いたものでありながら、だいぶ感動してしまいました。なんでしょうか、こーたさんのあの包容力のある落ち着いた、せつないお声は。とにもかくにも聴いていただけると嬉しいです。
前半の、あやしもさんの「レモン」で白熱してた男女の友情議論、ああいうの楽しいですよね、思わず参加したくなりました。後半「金色の船」で神妙にさせてしまって、すみませんと思いました😅
ピリカさん記事↓
コッシーさん記事↓
制作秘話的なもの:
「坂道」というテーマを頂いたので、ふと「心臓破りの坂」というワードが思い浮かびました。豆島圭さんが思わず「赤坂五丁目ミニマラソン」が浮かんできてしまったと言わしめた、心臓破りの坂。
心臓破りと言えば、うちの子、21トリソミー、いわゆるダウン症があるのですが、生後何週間後かの検診で、「心室中隔欠損」という症状があることがわかりました。簡単に言うと心臓に穴が空いている症状です。その大きさ11ミリ。自然閉鎖する場合もあるとのことでしたが、11ミリはかなり大きいほうだそう。心臓の機能が十分ではないので、40ccくらいのミルクを飲むのが1時間くらいかかって、3時間おきにやってくるその1時間で1日が終わっていきました。妻と話し合ってギリギリまで自然閉鎖を祈っていたのですが、自然閉鎖する兆候は見られず、手術をすることにしました。
作中に出てくる麻酔の味や、テーマパークのような手術室の壁の絵や、にこやかな看護師さんたちの様子は、そのとき見たものがベースです。手術室に入っていくときの永遠のような怖さ、術後にドレーンで繋がれた我が子のそれは、たぶん一生忘れないだろうなと思います。
同じように術後の子が隣のベッドにいて、もしかしたら我が子とこの子は、何か会話してるかもしれない、彼らにしかわからない絆があるかもしれない、そんなことをぼくはPICUで感じ取っていました。
それを思い出して、マラソンランナーが「心臓破りの坂」で、心臓が破れていたことと、「彼女」との記憶を思い出す、という話にしようと思いました。「彼女」は亡くなってしまったという設定ですが、自分の子が助からない可能性もあったわけです。それほどリスクが高い手術ではないという説明を受けても、無事が保証されるわけではなく、その保証がないことを同意しなければ、手術は受けられない。それはすごく怖いことでした。
「生きてるだけでいい」と言いながら、人は、それとなく不満を持ってしまいがちです。でもぼくは本気で「生きてるだけでいい」って息子に対しては思えてしまいます。綺麗事ではなく、ほんとうに。
だって、あんなにもちいさな体で、何時間も頑張ったのだから。コロナ禍で面会人数も時間も限られた中、たった一人で夜を何日も超えたんだから。
ぼくはほんとうに、彼のことを尊敬します。
赤ちゃんだったから、記憶は残らないかもしれないけど、魂に刻まれたそれを、いつまでも「すごい」って、言ってあげたいです。
ちょっと思い入れが強くなってしまいましたが、あともう一つ、「金色の船」というタイトルについて。
YUKIの最新アルバムの中に、このタイトルの曲があって、めちゃくちゃ感動してしまいして。なんでしょう、どこかに連れて行かれるような雰囲気の、この曲の世界観から生まれた話でもあります。
とにもかくにも、最近のぼくは、いかに自分で自分を癒やすかってことを作品に込めているところがあり、これを書けたことは、本当に癒やしになりました。
ピリカさんをはじめ、すまいるスパイスのメンバーのみなさん、改めましてありがとうございました!
最近は歌人を気取っておりますが、作家も気取ってみたいと思います!🫡