大増殖天使のキス #毎週ショートショートnote
彼女との待ちあわせ場所に向かう途中、二階の窓を開けっ放しにしてきたことを思い出した。玄関のドアさえ鍵をかけずに出ていっても気に留めないほどの田舎だから、二階の窓なら問題ないだろう。でも網戸が壊れていたことを思い出してしまったことは良くなかった。天使の出入りが自由になってしまう。待ちあわせにはまだ時間がある。俺は家に戻ることにした。
二階に上がると、予感が的中していた。天使たちが部屋に大増殖している。今日は彼女をこの部屋に連れてこようと思っていたのに。そんなことは知らないと、天使たちが挨拶のキスをしてくる。欧米か。大増殖してるせいで身動きが取れない。天使たちは口紅をしていて、シャツにキスマークが付いてしまった。まずい。着替えようと服に手をかけたとき、彼女が部屋に入ってきた。
あー、えっと、その……
バタンと閉められたドアの音に驚き、天使はバサバサと飛び立っていった。
やっぱり鍵はかけておくべきだったと、俺は後悔している。
こちらの企画に参加させて頂きました。