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分岐点の3冊 #愛読書で自己紹介
山根あきらさんの募集企画
#愛読書で自己紹介
に参加させて頂こうと思います。
愛読書、ということで人生の中で繰り返し読んでいる本に焦点を当てて紹介します。
一冊目
サン=テグジュペリ「星の王子さま」
お馴染みの世界的ベストセラーですので、子どものころから家にありました。が、少年時代、本など読まない野球少年だったもので、目もくれず。
初めての読んだのは22歳のころです。きっかけは、恋人と別れたこと。ふとこの本を読んでみたら号泣しましたね。
王子さまの星のたった一本のバラの花のわがままに振り回されて嫌になって星を出て、そのバラは地球上にはたくさんあった。
でも、キツネと出会って少しずつ近付いて友だちになることを学ぶと、たくさんのバラを見かけても、自分にとって特別なバラじゃないと気が付く。
水をやったり、風から守ったりして、時間を費やしたたった一本のバラは、王子さまにとって、特別なバラだったのだと。
滲みましたねー。
王子さまが帰ってしまったあとも、夜空の五億の星のどこかで、王子さまが笑っていると思うと、すべてが美しいこと。
滲みましたねー。
人生の節目にふと手にとってまた新たな感覚になったりする、愛読書です。
二冊目
いしいしんじ「トリツカレ男」
タイトルや表紙の雰囲気はちょっと不穏な感じなのですが、めっちゃ美しいラブストーリー。
レストランのウェイターのジュゼッペは、趣味を見つけると、まるで取り憑かれたかのように何にでも夢中になってしまいます。最近の言い方だと、沼にハマる、といった感じ。
いろんなものにハマり、みんなを楽しませていたジュゼッペが、ペチカという少女に出会い恋をします。
ペチカは慕っていたタタン先生を失い、心に傷を抱えた子。ペチカに笑ってほしい一心で、ジュゼッペは、そのタタン先生にすらなりきってしまうのです。
そのタタン先生のセリフ、
「転ぶときには自分にとって、いちばん大事な人を思う、その人の名前を呼ぶ、そうすればだいじょうぶ」
これがすごく心に残ります。
そして、これがお守りとなってジュゼッペは助かり、ペチカは救われる。何度読んでも感動的。
以前、劇団キャラメルボックスがこの作品を舞台化したのですが、観劇しに行ってまた号泣。
心が乾いているときに読みたくなる愛読書です。
三冊目
吉田修一「横道世之介」「おかえり、横道世之介」「永遠と横道世之介」
シリーズなので、まとめて。
生きてると、「こんな人になれたらいいな」っていう人と出会ったりするものです。で、それを小説の中に見つけたのが、横道世之介です。
世之介ってどんな人? って聞かれたら、お調子者で、お人好しで、ちょっとズレてて、とくにこだわりなく生きてる人って感じなのですが、そういう性格や雰囲気よりも彼に憧れるところがあります。
それは、
彼を思い出したときに、彼と出会ったことで人生が得したような気分になる
ということです。
このお話の中で、第一作目から世之介は亡くなってしまっているのですが、世之介と関わった人達はみな、彼との出会いを思い出すと、なんかニヤニヤしてしまったり、なんかわからないけど面白かったねって言います。
そういう人っていいなあと思うのです。
ぼくを思い出したときに、ぼくと関わって、なんか得したなあって思ってくれてたら、すごく嬉しいよなあって。死んで持っていけるものってたぶん、そういう誰かの想いみたいなものだと思うので。
だから、こんなとき世之介だったらどうするだろうって考えたりする、なんかそういう人なんです。
物語の内容全然書いてないけど、ストーリーがどうのこうのじゃなくて、世之介と世之介に関わる人々がいて、何かは起こっているけど、それを読んでるだけでなんかほんとに些細に幸せを感じられることが、すごく尊いのです。