噛ませ犬ごはん #毎週ショートショートnote
いつも乗るはずの電車と反対方面へと足は向かっていた。有給なし、ボーナスなし、サービス残業当たり前、パワハラ、モラハラが飛び交う。わかりやすいブラック企業に入ったのは自分が悪いのかもしれない。でも、限界が来ている。もうどうにでもなれと、反対方面の電車に揺られている。会社からの電話は5分おきに震える。死のうとしているわけじゃないが、死ぬ予感がする。
「よかったら、食べる?」
声をかけてきたのが、青鬼だとわかったのは、ぼくがずっと青鬼に憧れてきたからなのかもしれない。
「まあ、噛ませ犬ごはんなんだけど」
猫まんま的なやつ、と青鬼は続けて笑った。悪役を演じて、赤鬼をヒーローにしてあげた、青鬼。
「これを食べたら、ぼくもあなたのように、愛のある人になれますか?」
とぼくは泣きながら聞く。
「愛のない人のなんていないよ」
青鬼は微笑む。
もう、噛ませ犬でもいい。ぼくはわんわんと泣きながら、噛ませ犬ごはんをかきこんで、会社からの電話に出た。
今週も参加させて頂きました。
ショートショートっぽくない気がしますが、せっかく書いたので載せておきます。