半分ろうそく #毎週ショートショートnote
わたしはおおきくなったら、ろうそくになりたいです。
と書いた娘の卒園アルバムを読んでいる。妻に「大丈夫かな」と不安げな声を投げかけられて、ぼくはあっさりと「大丈夫だよ」と答えていた。妻は不安を共有したかったようで、ちょっと、ちょっとと、手を上げて言う。
「え、だってろうそくだよ? どういうこと? 大丈夫じゃないでしょ?」
「どういうことか聞いたの?」
「聞いたけど、よくわかんないんだよね、えへへと笑うだけで」
「なるほどね」
と相槌を打ちながら、ついでにぼくの秘密も打ち明ける。ぼくも、ろうそくになりたかった、と。妻はぽかんと、聞いてるのか聞いてないのかわからない顔をしている。
ぼく、小さいときは、電気もよく止まるほどの貧乏な家に生まれてね。夜は暗闇だったんだ。だからね、ぼくがろうそくになって、灯りを灯したいなって思ってたよ。
そんな秘密を打ち明けると、妻はいつもの顔に戻って言った。
「じゃあ、あなたとこの子で、半分ずつにして」
家が明るくて仕方ないから、と。
(425字)
たらはかにさんの企画への参加です。
今週はなかなか浮かばなくて、書けないと思ってたのですが、滑り込みました〜