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Photo by
shunsukeishigaki
スターティングベンチ
いつも、ベンチ。
スポーツ少年団、通称スポ少に入ってから息子はいつもベンチだった。
小学生のサッカーは9人。10人しかいない弱小のサッカーチーム。
息子の定位置はベンチだった。
それは上の学年へ上がっても変わらなかった。同学年のチームメイトは3人。
下の子たちがスタメンで出場している中、いつもベンチから彼は何を想って見ていたのか。
私はサッカーをよく知らない。サッカーというかスポーツにあまり興味がない人生だった。ルールもよくわからない。
けれど息子がサッカーをやりたいと言ったあの日から私はサッカー少年の親になった。
サッカーの思い出は苦いものばかり。
息子はスタメンならぬスタベン(スターティングベンチ)、ほかのアッツアツ熱血サッカーママパパと明らかに違う温度。強いられる学生時代を彷彿とさせる保護者の上下関係。
それでも、練習やたまーに出れる試合で汗だくで走っている息子を見るのは楽しかったしチームメイトとおにぎりを食べている息子の笑顔は眩しかった。
親としてサッカーに興味も熱意も持てぬまま過ぎた3年間、強豪チームに奇跡の勝利でも逆転シュートを決めたわけでもない、ただただジャージやビブスやユニフォームを纏いボールを追いかける息子の姿、それがこれからもずっと心に残るであろう私のサッカーの名シーン。