肘の怪我予防には、ボールの握りをチェックしよう
プロスポーツ現場でトレーナーをしたり、鍼灸整骨院でアドバイザーをしたり、若手トレーナー向けに交流会を開催したりしている、竹田祐平です。
本日の現場からは【肘の怪我予防には、ボールの握りをチェックしよう】と題してお話します。
史上最高の契約でドジャースに移籍した大谷翔平選手を知らない人は、ほとんどいないでしょう。
そんな大谷選手が、2度の右肘手術を経験していることは知っていますか?
今回は、投球障害の中でも野球選手、特に投手にとっては生命線となりうる肘内側の怪我について〝ボールの握り〟という観点から考えていきます。
トレーナーはもちろん、コーチや選手にも知って欲しい内容です。
これを理解することで、少しでも肘内側の怪我に苦しむ選手が減ることを願っています。
高校野球をはじめアマチュア野球界では、球数やイニング制限がルールになって数年が経ちます。
このようにして、仕組みから怪我のリスクを下げる事は大切だと思います。
しかしそれだけでは、当然すべてのリスクを回避できる訳ではありません。
投球時に、肘への負担を減らす為には様々なことが必要だと言われています。
挙げればきりが無いくらい、投げるという動作は複雑で様々な影響を受けます。
上記のような事は、既に知っている方も多いと思いますし、調べると沢山出てきます。
そこで今回は、体の専門家であるトレーナー目線で、肘内側(靱帯損傷)の怪我のリスクを減らす為に、ボールの握りについてお話します。
ボールをどうやって握っている?
近くにボールがある人は、普段通りボールを握ってみて下さい。
野球を始めた頃にボールの握りを教わったことがあると思います。
その時は、どのように教わりましたか?
または、どのように教えていますか?
多くの人が、親指、人差し指、中指の場所を教えられたと思います。
概ね、その3本の指でボールを握ると言っても過言ではないです。
しかし、今回注目して欲しいのは、それ以外の指です。
つまり、薬指、小指です。
チェンジアップのような変化球以外は、薬指、小指でボールを握るという事は無いと思います。
ではボールを握る事がほとんどない薬指、小指をどう使うべきなのか?
写真を見てください。
トップレーヤーの薬指、小指はどうなっていますか?
あなたの握りと何が違いますか?
特に、
小学生や手の小さい人は薬指、小指でボールを握ってしまいがちです。
(実際には握るというよりも、添えるような感じ)
私はこれまで、小学生からプロ野球まで全てのカテゴリーの選手と関わってきましたが、肘内側の怪我を経験したことがある選手とそうでない選手では、薬指と小指の使い方に違いがあることが多くありました。
では、なぜ薬指、小指を曲げる事が大切なのか?
解剖学的に考えてみる
ここからは少し難しい話になるので、トレーナー向けです。
薬指、小指を握っておく(曲げておく)と良い理由は、解剖学で説明することができます。
投球時、肘内側の靱帯には60-80N程度の負荷(とにかくすごい負荷)が加わると言われています。
それだけの負荷が靱帯に加わると靭帯は切れてしまうので、その負荷を減らす為に、序盤で挙げた、股関節、胸郭などの機能や体の連動性を高める必要があります。
そしてもう一つ。
靱帯を含む肘内側の安定性を高める事が大切です。
肘内側側副靱帯(UCL)の前斜走繊維(AOL)には、
前腕の3つの筋肉が連結していることがわかっています。
つまり、筋肉と靱帯が融合して肘内側の安定性を高めています。
この中でボールの握りに関係してくるのが、浅指屈筋です。
スライドであるように、研究では示指、中指の収縮が優位に安定性に寄与したことがわかっていますが、浅指屈筋の収縮が肘内側の安定性を高めてくれるのは間違いありません。
2ndポジション(肩90度、肘90度)で、
手をパーにして前後(内旋外旋)に動かしてみて下さい。
次に、
手をグーにして同じ動作をしてみて下さい。
肘内側の安定感に違いがあるのがわかると思います。
このように、
(意識的に強く握る必要はありませんが)薬指、小指を屈曲させて(曲げて)ボールを握ることで、肘内側の安定性が向上し、ストレスを減らすことができます。
ぜひ、ボールの握り方をチェックしてみて下さい。
また、肘外側の痛みは、内側の不安定性が原因によって起こる事があります。
その為にも、内側の安定性を高めることは大切です。
内側、外側問わず、肘の怪我のリスクを減らす為には、日々のトレーニングとして前腕を鍛えることをオススメします。
というわけで、
【肘の怪我予防には、ボールの握りをチェックしよう】と題して、お話させて頂きました。
本日も、最後まで読んで頂きありがとうございました。
気づきのキッカケになった方は、いいねやフォロー、シェアなどを宜しくお願いします。
それでは、この後も心身ともに充実した時間をお過ごしください。
以上、現場の竹田祐平からでした。