DXをめぐる問いに答えます
初めて日経COMEMOの意見募集に投稿します。
この問いについて考える前に、私のDXをめぐる体験を書きます。私は、DXを推進する海外スタートアップを日本に紹介する記事を書いたり、業務改善に携わる人を取材したりしてきました。
海外スタートアップメディアで書いてきて、シリコンバレーなど海外のスタートアップとコラボレーションしてのDXを考える日本企業の担当者が潜在的に多い、と感じます。海外スタートアップには、DXを担う技術で伸びているスタートアップが無数にあります。
有名なところでは、チャットツールのSlack、電子署名システムのDocusign、海外送金システムのPaypal。このメディアの編集部でもそれらを取り入れていました。シリコンバレーのスタッフと日本の私が一緒に仕事するうえで欠かせないツールでした。私も契約を交わす時にDocusignを使いましたし、連絡を取る時にはSlackを使いました。報酬はPaypalを使い、海外銀行を経由するよりはるかに安い手数料で、速く受け取れました。それらを使っていて利便性に感心しましたし、「紹介する本人が使ってDXを実践してこそ」と思いました。
私が書いたスタートアップの1つに、紙の契約書をデジタル化し、クラウドベースで契約書の作成・管理、さらには関係者のコラボレーションや交渉までサポートするプラットフォームがありました(記事)。このプラットフォームでは、DocuSignと提携して直接的にDocuSignでの電子署名をリクエストしたり、Salesforceとも提携してSalesforceに入っている顧客情報をもとにこのプラットフォームで契約書を作成し、それをSalesforceに移すこともできたりしました。
コロナ禍でシリコンバレースタートアップの一部でもリストラが起きましたが、むしろリモートワークを追い風に伸びているスタートアップも少なくありません。現地のリサーチャーはそんな企業を見つけてきてくれました。
さて、このDXをめぐる問いに答えます。
〇DXに対してトップはどのような意識で臨むべきだと思いますか。DXを進めるための体制をどうすべきだと思いますか。
「DX」というバズワードを書いて、現場に丸投げでは、現場が右往左往してしまいます。
自分達が「DX」と言って進めようとしているのはどちらでしょうか。
・業務改革(ビジネスモデルを変えるデジタル化)
・業務改善(社内の業務効率化)
ここを明確に打ち出す必要があります。上の2つは大きく違うものです。混同させないことです。
〇DXを進める現場ではどのような問題意識で取り組むべきでしょうか。また多くの現場では何が課題になっていると思いますか。
多くの現場で課題になっているのは、せっかくの担当者の努力を組織が活かせていないことでしょう。作家の沢渡あまね氏はこれを「奇特な勇者のボランティア頼み」と表現しています。
ですが、現場で「DXが働く人の幸せにつながる」という意識を持つ人が多くなると、変わっていくと思います。ここでの「幸せ」とは、「早く帰って好きなことができる」というような、個人的な動機に密着したものでいいです。
私も取材した、業務改善コンサルタントの元山文菜氏は、「業務改善は『かくあるべきを捨てる』が出発点」と語っています(記事)。
私達の職場に「かくあるべき」は無数に存在します。
「仕事とは、しんどくて我慢するものであるべき」
日本の職場では、無意識のうちにこうした意識が今なお存在しないでしょうか。
〇DXの成否を分けるポイント、それは何だと思いますか。
「DXは成功する」というトップの覚悟と考えます。
DXは長期的な取り組みになります。途中で抵抗勢力に遭遇することもあるでしょう。ですが、トップの覚悟があれば、担当者が孤立せずに続けていくことができます。
社内に理解者が増え、抵抗勢力が減り、ある時から一気に流れが変わっていく。そういう瞬間は来ます。
最後に、私がDXを進めるうえでお勧めする、先述した沢渡あまね・元山文菜両氏による書籍を。この本に、DXの本質が、わかりやすくユーモラスにまとまっています。