発達障害者差別訴訟係争中のセールスフォース日本法人人事部責任者「平等への道は遠く道半ば」
セールスフォース・ジャパンの人事部責任者である、イクオリティオフィス・ディレクターの酒寄久美子氏が、ダイバーシティをテーマにしたオンラインイベント「ダイバーシティキャリアフォーラム2002」の2日目である10月30日に流された3分間の動画に登場した。同社が5つのコアバリュー(信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等、サステナビリティ)に沿って、「Equality for all(すべての人に平等を)」を推進していることをアピールした。そのなかで、同社が、社会構成を反映した誰もが自分らしく生き生きと働ける職場作りのために、無意識の偏見を理解して学び行動に移すためのワークショップやオンライントレーニングを行ったり、社員リソースグループが平等を推進する活動を最前線で行ったりしていることが述べられた。酒寄氏は、「まだまだ平等への道は遠く道半ばですが、日々より平等な世界を作るための努力をしています」と発言した。
セールスフォース日本法人では障害者雇用に関して、2009~2021年において大半の年で雇用率未達や2020年の東京労働局への報告が適切に行われていなかった問題(罰則規定あり)が見つかっている。2021年から発達障害のある元社員への差別訴訟が係争中であり、障害者団体が傍聴を呼び掛けている。裁判で同社は、今なお障害ハラスメントを認めず、「障害者だからといって特別扱いが許されると思ったら間違いである」との見方を示す。裁判では、元社員の上司による障害者雇用や契約更新への拒否姿勢を示す証言や、元社員が社内で相談した記録などが証拠化されている。次回期日は東京地裁で11月14日11時。
酒寄氏は障害者雇用責任者でもあり、係争事案の直接の責任者である。酒寄氏の発言が係争事案に沿ったものかどうかは判断し難いが、酒寄氏も「平等への道は遠く道半ば」ということを認めざるをえなかった。
同フォーラムの29日のトークセッションでは、セールスフォースの登壇者が「周囲で差別発言があった時、いけないといえる文化を作る」と発言していた。同氏は社内でのLGBT平等を推進する社員グループで代表を務める人物だが、係争事案の直接の責任者ではない。同氏の発言が係争事案に沿ったものかどうかは判断し難いが、では本事案があった時、元社員の上司の周囲はなぜ、上司を止められなかったのか。将来問題が起きた時、本当に止められるのか。または本事案以外にも現に起きている問題があれば、本当に止められるのか。猛省が求められそうだ。
同フォーラムのチャット欄では、参加者からの「(酒寄氏の)『平等への道は道半ば』という言葉の通り、簡単ではないのでしょうね。」というコメントもみられた。
同社では、元社員の入社後の配属先の説明が実際とは異なっていた問題や、障害者雇用状況報告未提出問題など、バックオフィスのずさんな雇用管理の状況も見つかっている。
セールスフォースは、障害者雇用率のデータは公式に公開していない。ただ2022年5月には雇用率を達成していたことが関係者リンクトインから判明している(この記述は10月30日現在はなくなっている)。2023年には厚生労働省による雇用率引き上げが予想されており、同社が今後も雇用率を達成できるかどうかは不透明。
一方で、同フォーラムの他の出展企業のPR動画には、障害者雇用率を達成しているというデータを示している動画も複数あった。
1日目・29日(セールスフォース社員の登壇するトークセッションは2:31:30から)
2日目・30日(セールスフォース・酒寄氏メッセージは56:38から)
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