女性にもダイバーシティがある~「女性」×「発達障害」として当事者発信する
ダイバーシティは「女性」だけではないし、「女性」にもダイバーシティがあります。
私は「女性」×「発達障害」として、雇用やダイバーシティに影響を与える本格的なオピニオンリーダーを目指して活動するライター・翻訳者です。
〇女性の働き方は以前と比べてどう変わってきていると思いますか。変わっているとすればどんな点ですか
私が社会に出た2000年代前半に比べると、ダイバーシティが唱えられるようになり、以前よりは女性が就職・転職活動をしやすい、働き続けやすい、リーダーになりやすい雰囲気ができたと思います。
また「ビジネスと女性」の文脈でオピニオンリーダーとして発信する女性が増えた印象です。インターネットやSNSが発展したことで、特に女性の働き方について積極的に取り扱う新興ウェブメディアや、SNSで当事者としてのリアルな体験を発信する女性、差別やハラスメントの問題に声をあげる女性が増えた印象です。
〇女性の潜在力を活かすには、どのような仕組みが必要、どんな点に注意が必要、だと思いますか
「女性活躍」という時の「女性」には、非正規雇用の女性(女性労働者の過半数)、あるいは障害のある女性(人口の5~7%)やLGBTの女性(人口の7%前後)は含まれているのか、という疑問を持つことがあります。「正社員でストレートの健常者女性」しか想定されないのは一種の無意識バイアスだと思います。
ある海外企業の女性活躍をテーマにしたオンラインイベントを視聴した時に、登壇者には白人女性だけでなく、アジア系女性、黒人女性、障害のある女性、性的マイノリティの女性が配されていたことがありました。ここはよく配慮されていると感じました。
「女性」に加え、「非正規雇用」「障害」「LGBT」など、マイノリティ性が加われば加わるほど、社会的立場は困難になります。これを「インターセクショナリティ(交差性)」と言います。
ダイバーシティ課題は、「まず女性、次にLGBT…」のように優先順位付けがされるものではなく、「その人」を見てその人の課題に同時並行で対応していくものだと思っています。
そこで、個々の違いに応じた課題への合理的な配慮ができる仕組みが必要だと考えます。
「女性」と一言でいっても、望む働き方は様々です。無理なく働きたい人もいれば、活躍したい人、リーダーになりたい人もいます。そのどれもに対応した受け皿が社会にあるといいと思います。男女平等の進んだ企業は業績もいい、意思決定の場には多様な人材がいた方が質の高い意思決定が行われやすい、というのは既に多くの場所で発表されている通りで、大切なことです。しかし誰もが意識高くある必要はないし、働きたくても働けない女性やリーダーになる気のない女性であっても、それぞれの立場で自分の課題に向き合えばいいと思います。
女性も自己理解を深め、自らのベストを出すにはどんなサポートが必要なのか、自分がベストを出せる環境はどんな環境なのかを知るべきだと思います。私は「私のトリセツ(自分取扱説明書)」を作って発信しています。
ハラスメントやジェンダー炎上の問題は、受け手の感じ方に委ねられています。どんな言動や表現にストレスを感じるのかは、女性本人に聞いてみないとわかりません。大切なのは当事者を交えて話し合うこと。女性当事者がどんな言動や表現にストレスを感じるのかを知れば知るほど、ハラスメントやジェンダー炎上は起きにくくなります。
〇あなたが女性に活躍してほしいと思う理由はなんですか
私は就職氷河期ぎりぎりの頃に就職活動をしました。当時、女子学生も厳しかったところに発達障害が加わるとさらに厳しいものになりました。強めの衝動性から思ったことを発言しやすいこと、こだわりの強さから対人関係で困りごとを抱えやすいことなどから、面接が大きなハードルでした。私はこれまで、新卒・中途・障害者採用、全て合わせると200~300社くらい応募して不採用になりました。ただ勉強はできたので、比較的女性が長く働きやすいとされてきた官庁の試験を受け、これで何とか就職がかないました。しかし発達障害の女性が続けていけるような体制はありませんでした。この他にも多くの挫折を経験しました。
そのことへの不満を言いたいのではないのです。
いま私は、「これからの人にこのような苦労をすることがないように」という思いで、雇用やダイバーシティに影響を与える本格的なオピニオンリーダーを目指して発信しています。「私が高校生や大学生の頃に、こんな仕組みがあればよかった」と思えるようなことを提言しています。
当事者が声をあげるということ。
#MeToo 運動に続いて #KuToo 運動、 進まない気候変動問題に声をあげたグレタ・トゥンベリさんの登場。障害のある女性が社会に自らを知ってもらおうと発信するのも増えました。
時に自分はどういう立場に立てばいいのか戸惑いを感じることもありましたが、先輩方が声をあげる当事者を応援しているのを見ながら、「でも少しずつ理解(わか)ってきた 戦うこと!!」。自分と向き合う時間を作り、メンタルを強化するトレーニングもしました。
もはや、黙っているのは現状の容認と同じ。戦わなければ、自分の存在がないことにされてしまう。
今では私も、特に抑圧され疎外されひとりで戦ってきた人が声をあげ立ち上がることを応援し、もっと言うと一緒に声をあげる存在であろうと思うようになりました。
そのことは、これまで戦ってきた自分をも癒すことになっています。
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