短編小説 『会話のないデート』 4/全5回
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長かった。これがいつまで続くのか、そう考えると少し億劫にもなって、でも、この時間を少しだけ楽しんでいる自分もいたりする。まあ今となっては、話さないことの方が普通に思えてくるくらい。ただ一日、……ううん、半日とちょっとくらいか。たった半日話してなかっただけなのに、すぐに順応しちゃうあたりが、私たち、っていうか、彼の良いところだと思う。
夜も更けた頃、コスモワールドにいた私たちは、なんとなしにクレープを食べて、ぼーっと夜景を眺めながら座っていた。彼がしきりに観覧車に目を向けるから思わず「乗りたいの?」と聞きそうになったけど、私はそれをぐっと抑えた。代わりに、クレープを食べ終えた彼の手を無言のまま引いて、私たちはその長い列の一番後ろに並んだ。「ただいま50分待ち」というプラカードをもった女の人の脇に着くと「どうぞこちらで~す」と促されるままに並ぶ。彼は驚いた顔を一瞬向けたけど、すぐに満足したような表情になって、握っていた私の手をもっと強く握った。
その時間が、なんだか一番長かった。それまで何時間も私たちは無言のまま過ごしていたのに、たかが50分。ただ呆然と列に並んでいるその時間は特別に長い。そんな時間だから、なんだか色々と考えてしまう。……ああ、もう夜も終わるんだなぁ。なんて。
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