「直感」文学 *大きな鏡*
インターホンがなったから、僕はそれに呼ばれてドアを開けた。
「お届け物でーす」
と言って宅配員のお兄さんが持って来たのは平たく、大きな箱だった。
「え?」
と声を漏らした僕に、「サインお願いしまーす」と元気よく答えるお兄さん。
宛名には、「瑞樹」と名前が書かれていて、僕は納得した。
「鏡を買ったの。大きな大きな鏡。今度届くと思うから」
そう言っていた彼女の言葉が思い出され、僕はお兄さんが差し出したそれにサインをした。
家の中にそれを入れると、その大きさはより際立って、その部屋のほとんどを埋め尽くしたように思う。
巻き付けられた紐を取り、丁寧に開梱する。大きすぎて、そしてそれが重たいせいで、ずいぶんな重労働だった。
箱の何かには、大き過ぎると言ってもいいような程に大きな鏡が入っていて、それがこの家に本当に必要なのかどうなのか、僕は疑問を持たざるを得なかった。いずれにせよ、既にその鏡はうちに届けられてしまっていて、開梱されてしまっている。僕の前に姿を現し、僕を真っ直ぐに見ていた。
「まあ、いいか」
溜息に混じった声が漏れ、僕はそれを立て、鏡の前に立った。
そこには僕が映り、僕以外のものも映っていた。
理解はそう簡単に出来そうにはなかった。しかし、その鏡は部屋を明るく照らしているようにも思えた。
これでいいのかもしれない。
そう思うのに少しの時間を要したけど、気付けば僕は納得していたのだった。
僕はいつだってそうだ。ほとんどの物事に納得しようと努める性格。
だから彼女も、突然こんな買い物をしたのだろう。
まあ、これでいいのだろう。
*********************
アマゾンKindleで各種電子書籍の販売をしています。↓
https://furumachi.link/kindle/
その他短編小説はこちら↓
■古びた町の本屋さん
https://furumachi.link