2017年5月の記事一覧
「直感」文学 *どこまでも、夢の中にいて*
目は、醒めないで欲しい。
私はただそう思うだけなのに、それはいつだって絶対に叶わない。
そう思った瞬間に目は開かれて、現実の世界へと戻されていくのは、私だけ。
〝あの人〟は夢の中に残ったままで、私だけ、この場所へ。
そうして待ち受ける現実では、私はただ息をするだけの生き物。
そうして夜になって、また〝あの人〟に会いにいく。
……夜がいつまで続けばいい。
そう思うのに、
「直感」文学 *深夜に鳴り響く轟音*
轟音が鳴り響く。
どこかで、だれかが、大きな音で何かを訴えているのだ。
強い音とは裏腹に、随分と繊細な言葉を口走っては、その暗闇の中に儚くも消えていってしまった。
僕の部屋まで微かに届くそれらの音は、決して僕の心までは届かない。
ここまで届くには、もうほんの少しだけの説得力が必要なのだと思う。僕は他人の言葉をそう簡単には受け入れられないから。
どこかで、だれかが、轟音を鳴
「直感」文学 *静寂の夢*
「そうね、もうちょっと落ち着いたらにしよう。その時まで電話待ってるから」
電話口から聞こえてくるサユの声は、嫌なくらいに落ち着いていて、なんだかその声に隠された真意みたいなものに、僕は少しだけ不安になった。
「うん、ごめん。今はまだ……」
「いいの。急ぐ必要なんてないんだから。……大丈夫。大丈夫だから」
いくら彼女が「大丈夫」と言ったところで、僕は一切安堵の念を抱くことなんて出来
「直感」文学 *お久しぶりです。*
今日、衣替えをした。
クローゼットの中に押し込まれていた洋服の数々は、随分と久しぶりに外の空気を吸って「さあ、出番だ!」とでも言っているようで、私はなんだか嬉しく思えた。
「お久しぶりです」
なんて声を掛けてみて、
でももちろん洋服が喋ることなんてない。
私はただ心の中で、「お待たせしました。今季もあなたから寒さを守ります」と洋服の声を真似て返答する。
……洋服の声?
「直感」文学 *春の唄*
マドカはこの時季になると、決まって同じ唄を口ずさんだ。
「また?って顔してるね」
僕が見つめていたことに気付くと、そう言って一度笑ってから、またその続きを唄った。
「どうしてその唄なんだ?……っていうか、そんな唄聞いたことないよ」
僕がそう問いかけても、マドカはその唄を口ずさみながら、僕の顔をチラッと見やるだけだった。
気候は次第に緩やかになり、もうほんの少しだけ春が顔を