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おな
2018年12月20日 19:00
でんぱちの力を借りて、やっとの思いで立ち上がった時、私の携帯が鳴った。彼の友達であるあの人がいない今、そんな携帯の相手が誰であろうとどうでもよかったし私はその電話に応える気なんてなかったのに、でんぱちがしきりに「おい、携帯鳴ってるぞ」と言うものだから、私はしょうがなくポケットから携帯を取り出し、相手が誰なのかも確認せずに通話ボタンを押した。「あ……お久しぶりです」その自信なさげな声、懐かしく
2018年12月18日 19:00
「それにも……」五分も待って、やっと届いたその弱々しい言葉に私は落胆の色を隠せずにいる。もたれ掛けたままの頭に力を入れ、彼の胸に圧力をかけた。「理由が必要かな?」そう言った彼はなんだか満足そうな心持ちで、私は彼の言葉の中から、その満足の色を見出した。それがまた私を落胆させ、小さな不満の塊が私の中でふつふつと息を始めたのを感じ、それを押さえ込むように言葉を発した。「理由なんてないって、そうい
2018年12月14日 19:00
「ああ……なんでだっけな」その理由を思い出すようにか、それともとぼけようとしているのか、彼は自分の頭を掻きむしっている。「そんな事憶えていないよ。ただ、見た時にいいと思ったんだ」「それが理由なの?直感的にいいと思ったって事?」「直感的……まあ、そんな所だと思う。それじゃ答えになってないかな?」「いえ、別にいいの。分かった」窓の外から明るい光りが嫌という程入り込んでいるというのに、部屋の
2018年12月11日 19:00
私は彼の胸に頭を預けたまま聞いた。日曜日の昼下がり、彼がどこかから帰ってきた後の事だ。「あの湯呑みあるじゃない?」「ここに来る時に買ったやつ?」「そう」「それがどうかしたの?」「なんで、あれを買ったの?」「え、なんで?」「うん。なんで?」「なんでって言われても……気に入ったからだよ」「気に入ったの?」「うん。そうだよ」「なんで気に入ったのよ?」彼の言葉が止み、視線は自分の