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英語のテストの記述部分は丸暗記でないと解けないと高校生が言っていたらそれは黄信号です

私の長男も同じく高校2年生なので、学校は異なりますが、保護者の立場について考えることがよくあります。ふと思い出しました。数年前のことですが、ある担任の先生からこんな話を聞いたのです。

「ある生徒のお母さんが、『英語のテストは丸暗記しないと点数が取れない』と子どもが言っているとおっしゃっていました。」

この言葉に対して、正直なところ少しもやもやした気持ちが残りました。その理由を整理しつつ、高校英語の試験における記述問題がなぜ解けないのかについて、学習者向けに考えをまとめてみたいと思います。

もやっとポイント1:で、丸暗記したの?

私自身も学生時代にはかなり丸暗記をしていました。というのも、言語学習にはある程度の暗記が必要不可欠だからです。入試前には単語帳を2冊丸ごと覚え、駿台の700選も1週間かけて暗記しました。また、定期テスト前には教科書の2ユニットくらいは念のために覚えました。もちろん、暗記だけで全てが解決するわけではありませんが、暗記なしでなんとかなるものでもありません。

教え子の中で特に印象に残っているのが瀧川くんです。彼は現在NHKのアナウンサーとして活躍していますが、高校時代にこんなことを言っていました。「僕は塾に行ったことがありません。英語は教科書を全部覚えただけです。」少なくとも中学校まではそれで十分通用しますし、実際にはコミュニカティブなアプローチの学習法であっても結果的に暗記してしまいます。彼はその後、高校でも堅実に勉強を続け、東京の某有名私立大学に進学しました。

丸暗記は決して悪いことではありません。その生徒もきっと一生懸命に覚えようと努力したのでしょう。お母様はその努力を続ける姿を見て心配されたのかもしれません。しかし、「覚えなければ解けない」と思うのではなく、「覚えることも一つの方法である」と捉えることもできます。

もやっとポイント2:授業中どうしてた?

当時もそうでしたが、最近ますます生徒たちはノートが取れなくなってきています。今の40代以上の方は、ノートを取るのが早かったと思いますし、優秀な生徒や学生は先生が板書しなかったことも聞き取ってまとめていました。

しかし、最近の生徒たちは、メモを取ることがとにかく苦手です。その理由として考えられるのは以下の5つです。

  1. 普段のスマホ生活による影響: スクリーンショットを撮ることが癖になっている。

  2. プリント学習の主流化: プリントを使った学習が多いため、文章としてまとめる力が不足している。

  3. 視覚情報への偏り: 動画視聴が多く、視覚情報には強いが聴覚情報に弱い。

  4. 英語の文構造を学ぶ機会の欠如: 英語の文構造について学ぶ機会が少なく、単語に頼って読んでいる。

  5. 人口減少の影響: 人口が減少しているため、競争意識が希薄になり、知識を深めようという意欲が低下している。

もし、このブログを読まれている保護者の方がいらっしゃいましたら、お子さんのノートを一度見てみてください。書き込みが極端に少ないかもしれません。その結果、テスト前に授業中の内容を思い出せず、「丸暗記」しかないと感じてしまうのです。ノートの余白に付箋やメモ書きで先生が授業中に話したことが書かれている場合、それは学びのポイントをしっかりと理解できている証拠です。

もやっとポイント3:重要な見落とし、それは○○

授業には目的があります。毎回の授業には、生徒同士で対話を通して学び合う力や、文構造を見抜く力、英語を通して世界を広げることなど、必ず目的があります。今回の指摘があったテストでは、長文読解の中で一部を和訳するという問題を出題しました。これは、文構造を理解する力を身につけるためのものでした。

英語は日本語とは異なり、文の構造によって意味が大きく変わります。授業中には、教科書の本文と同じ構造の異なる文を解釈する練習を行いました。これにより、単語や表現が変わっても同じように解釈し、読解できる力を養うことを目指しました。中には、単語に頼ってなんとなく読めてしまう生徒もいますが、それは「読めている」と思い込んでいるだけです。実際には解像度が非常に低い読み方であり、初見の文では詳細を理解できないことが多いのです。

この授業の意図は何か、何を学ぶべきなのか、何が求められているのかを考えることこそ、勉強で身につけるべき力です。なぜ、いまだに大学のレベルの高さを採用者が重視するかというと、学ぶ力を身につけた学生を求めているからです。教科で身につけるべきは知識だけではありません。今覚えていることのほとんどは将来忘れてしまうかもしれません。しかし、意図を見抜く力、構造で捉える力、学びを工夫する力は、一生の財産です。

さいごに

英語学習に限らず、すべての学びは生きる力となり、将来的に生活を支える力となります。「丸暗記」などと一括りにせず、まずは実際にやってみることが意外と重要です。私のクラスの生徒たちは非常に優秀で、日々の学びを楽しんでいる姿勢を見せてくれます。今回の夏休みの課題では、自由な学びを1つ出しています。非常に古典的ですが、ノート5枚以上に何をしても良いというものです。優秀な生徒たちがどんな学びをしてくるのか、何を記録するのか、見るのが楽しみです。


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江藤 由布(ゆう)
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