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まんぷく!近畿大学附属高校のSET近大2024に参加してみたら(2)

昨日行ってきたイベントの備忘録がちょっと盛りだくさんすぎたので今日は後半について書いてみます。

AI for 学校現場の問題解決 -by  高橋一也さん

SET近大のワークショップ2つ目は高橋一也先生(ELSA・東京理科大学)のお部屋をチョイス。テーマは「AI for 学校現場の問題解決」でした。最初に高橋先生が一言、「結論、無理です。」と。でも続けて、「無理だからどうするのか、という話をしましょう。」と、話の展開に期待感が膨らむスタートでした。

学校現場が抱える問題、AIが解決できること・できないこと

学校には毎日多種多様な問題が発生します。でも、視点を変えるだけで簡単に解決できることもあります。この「視点を変える」ためのツールとしてAIは非常に有効。いろんなアプリを教えてもらったので早く使いたくてうずうずしています。特に今使いたいのはNapkinかなー。

  • 文章作成やクレーム対応
    ClaudeはPDFを読み込んで要点を抽出するのが得意。

  • データ整理と視覚化
    GeminiはGoogle連携が強力で、Spreadsheetへの出力が得意。さらにNapkinを使えば、情報を図式化して構造化できる。

  • 音声読み上げツール
    Natural Readerを使えば、文章を効率的に読ませることが可能。

Napkinでこんなのが作れるそうです。これは当日のスライド。

リテリングとか英語学習にもいいし、論文を書くときにも思考の整理ができそう。

しかし、AIで解決できない問題も多い。それは、人間が「社会的な動物」である以上、環境や他者との関係性が重要だからです。

学習環境デザインに活かす視点

高橋先生は、「物理的な環境を変えることが、生徒の学びを変える第一歩」とおっしゃいます。当日、突然寒い廊下に放り出された私たち。

「この廊下を見てどうですか?」と聞かれ、思わず江藤は「無機質」と呟いていました。実際病院のように白くて何もないんですよね。学校の廊下を含めた環境は人をどう育てたいか、どう育ってほしいかのデザインだとしたらこれって相当に寒い・・・

さて、実際に教頭先生時代に実践した取り組みとして、以下のような工夫が紹介されました。

  1. 廊下と教室の活用

    • 教室前の掲示物に、授業内容を一面に貼り出す。

    • 廊下をホワイトボードに変え、生徒や先生が自由に書き込める環境を作る。

  2. 居場所づくり

    • 各フロアにレゴブロックを設置。生徒が教室に入れない時に遊びながら教師と対話できる仕組み。

  3. 差し色の椅子

    • 明るい色の椅子を配置することで、気分を前向きにさせる。

これらはすべて「意図的なデザイン」。物理的な環境から学びの環境を整え、生徒たちが学びに向かう気持ちを育てる仕掛けです。授業の前にちょっと授業に関連する雑談をすることでもパフォーマンスは上がるそうです。他教科が今何をしているかも一目瞭然で、めちゃくちゃいい取り組み!

他にも、学びのスタイルと空間の関係でいうと、マクドナルドとスターバックスの違いは、机と椅子の配置で変わる学びのスタイルにも置き換えられます。

  • マクドナルドは「効率」を重視する学び。

  • スターバックスは「創造性」を促進する学び。

実際に写真を見ると、生徒もすぐ分かるそうです。うーん、奥が深い。

デジタルとアナログの融合

「テクノロジとアナログが融合すると、世界はどう変わるのか?」
デジタルが進化する一方で、人間的な要素、特に「社会的つながり」がより重要になると高橋先生は強調します。

  • 共同注意 (Joint Attention)
    アイコンタクトは脳波の同期を生み出し、意思疎通やパフォーマンス向上につながる。廊下での立ち話やちょっとした挨拶が、実は脳科学的にも非常に効果的。

  • ステレオタイプの脅威
    社会的評価への不安が、学びのパフォーマンスを低下させる。だからこそ、安心感を与える環境づくりが不可欠。

共同注意については、かつて息子が被験者となった岐阜聖徳の永井先生の実験があったので、これまたシンクロしながら聴いていました。

ワークショップの問いかけ

「皆さんの学校はどうですか?」
高橋先生が問いかけると、参加者たちはMentimeterを使って意見を投稿。
「学校現場が抱える問題にはどのようなものがありますか?」という問いに対して出てきた回答を、CSVでDL、ChatGPTに分類・整理して分析。それをもとに、次の一歩を考える時間が設けられました。


最後に:鉛筆一本で考える力

ワークショップの終盤、高橋先生がこんな問題を出しました。
「鉛筆の年間生産本数を答えなさい。」
これ、旭川医科大学の入試問題で、答えの正確さよりも、「どのように考えるか」を試す問いです。真っ直ぐ前を向かされているとほんとグループでのブレストがしにくくて、この問いを通じて、物理的な環境を変えることで生徒の思考がどう変わるのかを考えさせられました。

スモールトークセッション(英語科)

生成AIが英語授業をどう変えるかをテーマに、古川先生がファシリをされました。参考文献に「ISLA(あたらしい第二言語習得論)」を挙げながら、AI活用の中で教師が果たすべき役割について議論。特に自律性や自己調整スキルの育成が重要とされ、心理的・リソース・認知的支援を通じて学生を導く必要性が強調されました。AIが効率化を促進する一方で、学びは依然として人間的な行為であり、教師がその橋渡し役となることの意義を再確認する時間でした。

やり方からあり方へ
教員こそ学び続ける!
あり方を変えないとやり方は変わらない

古川先生からの締めくくりの言葉

上から目線に感じられたらごめんなさいなのですが、私が近大付属を去った頃はこんな言葉が学校の中であまり飛び交っていなかったので、最後の一言はなんだか嬉しくなりました。

さいごに

デジタルとアナログの融合、物理的な環境のデザイン、そしてAIの適切な活用。「学校現場の問題解決」において、AIができることとできないことがあり、環境デザインなど人間が考えてできることが山ほどあるのにやっていないことに気付かされた時間でした。いやはや、この人のお話は盛りだくさんすぎて1週間くらい聴いていたい。笑

SET近大のブログもあるらしいので、他のWSが気になる方はどうぞ。ちょっとAI感は否めない文が多買ったですけどね。教員同士でも「これ、ChatGPTにさせたんですよ」とまだ笑いをとる人がいるくらいですから、使いこなせてなくても仕方ないのかもしれません。

あ、でもクロージングセッションでの生徒さんのスピーチはその日のベスト3に入ったくらい全員腑に落ちたことを付け加えておきます。だからSET近大、成功だったと思います。


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江藤 由布(ゆう)
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