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【日記】預かりボランティアやってるおばさんが犬と出会った時の話

◆おばさん、家を買う◆

それは、今から10年ほど前のことです。
私はまだ30代半ばでした。
20代のころは、いわゆる「ブラック」と言われる企業で働いていて、とても給料が安くて大変な会社でした。
一人暮らしをしていた私は毎日カツカツで、足りないときはカードローンに手を出したり、夜間にアルバイトをしたりして、なんとか生活していました。

しかし、30代になってまともな会社に転職してから、ガラリと変わりました。
仕事は同じくらい忙しかったのですが、給料が倍近くに上がったのです。
その時に今のパートナーとも付き合いだし最初の半年で借金も返し終わって、今まで都内だったのを千葉県に居を移し一緒に暮らし始めたので、住居費などの生活費もだいぶ安くなりました。
そのおかげで、念願のバイクの免許を取り、バイクも購入し、ツーリングにも行くようになりました。
女性用のライダースクールにも通って、ライダーとしてのの腕を上げ、バイクの競技でもやってみようかな・・・なんて思い始めたころ。

パートナーと遠出したレストランの近くにモデルルームがあり、なんとなく入ってみることにしたのです。
その少し前からパートナーとは「マンションとか買いたいね~」という話はしていたのですが、二人の収入では難しい金額だったので、半ばあきらめていたのです。
そんなこともあったからか、「夢を見にモデルルームに入ってみようか」という話になり、立ち寄ってみたのでした。
しかし、そこで調べてもらったところ、なんと私たちでも買える金額の部屋があることが判明し、あれよあれよと契約しそうなところまでこぎつけました。
ところがそこで、ある問題が判明したのです。
ペット可物件だったのですが、よくよく確認してみたら、小型犬しかダメということでした。
私は飼うなら中型犬か大型犬!と決めていたので、そこは断念せざるを得ませんでした。

しかし、手の届く金額が判明してしまったことで、私の持ち家熱が異常に高まってしまい、「戸建て」「庭付き」「駐車場2台」で本格的に探し始めてしまったのでした(^_^;
それからはパートナーそっちのけで、不動産屋さんと毎週のように家探しをするようになり、なんと、とうとうすべての希望を叶えた新築一戸建て(建売住宅)を見つけてしまい、速攻購入したのでした。

◆おばさん、犬について考える◆

家を買ってから1年ほどは、犬を飼うための準備に入りました。
どんな種類の犬がいいのか、散歩の距離はどのくらいが良いのか、私の購入した小さな家でも買えるサイズの犬はどれか、毎日調べまくっているうちに、気になる単語が出てきました。
それは「保護犬」「殺処分」という言葉でした。

その言葉で思い浮かんだのは、当時、駅前でよくやっていた譲渡会です。
残酷な写真と過激な説明、傍らの犬や猫。
私はてっきり、同情を買って流しで犬や猫を売りつけている人たちだと思っていました。
今となっては本当に申し訳ないのですが、当時はそのくらいの認識しかなかったのです。
同時に「東日本大震災」が発生し、様々なボランティアが現地入りして、「あのボランティア団体はおかしい」とか「愛護団体詐欺」とかいう言葉がネットを騒がしていた時期でもありました。
(後で調べたら、私が目にした団体のほとんど(全部は調べてません)は、怪しくないきちんとした団体でした)

当時はその噂が少し怖くて、その時は深くは考えずにスルーしていました。
その後、色んな掲示板で犬を飼うにはどの犬種が良いか、どのような心構えがあったらよいかを質問しまくっているうちに、あるアドバイスをくれた人からこんなことを言われたのです「保護犬という選択肢も考えてください」と。

そこで保護犬について、ネットで調べてみることにしました。
そうしたら続々と、今の犬の飼育に関する問題点についてのブログや記事が出てきたのです。
あまりの惨状に、私はどの犬種にしようかなんて、浮き浮きと考えていた自分が恥ずかしくなりました。
ミーハーにペットショップで購入した犬の末路、そして、その犬を繁殖している母犬や母猫の現状に、胸が潰れる思いでした。
そして私は思いだしたのです。
「私は別に『犬』であれば、どんな犬種でも良かったのだ」と。

私の年代の人なら記憶があるでしょうが、私たちが子供のころは、首都圏でも街中に「雑種の野良犬」「雑種の放し飼いの犬」がいました。
学校帰りに野良犬と出くわして、犬好きな子どもであれば連れて帰って、母親に「元居たところにおいて来なさい!」と叱られたり、犬嫌いな子どもが逃げて追いかけられるということなどよくある話でした。
(私の弟は野良犬に追いかけられたと言いながら帰ってきたことがある方ですし、私は家に連れて帰って怒られた方です)
うちはマンション暮らしなので、この年になるまで犬や猫は飼ったことがありませんでした。
せいぜいインコとネズミ(弟が学校で貰ってきたハツカネズミ)くらいです。
しかし一戸建ての友人の家では雑種の犬が飼われていました。
当時は知り合いや近所の家で子犬が産まれたとかでタダで貰ってくるのが普通でした。
数十万も支払ってブランドの犬を飼うなんて無縁の世界でした。
ふと、そんな子どもの頃のことを思い出したのです。

◆おばさん、ナナコと出会う◆

そこで、掲示板で聞いた「どこでも里親募集中」というサイトを見てみることにしました。
そこには、たくさんの「飼い主に捨てられた犬」や「元野良犬」がいました。

私は、実は首都圏では雑種の犬なんていないだろうと思っていたのです。
街中を歩けばブランドの犬ばかり。
そしてどこのホームセンターでも犬や猫が売られていて、みんながペットショップで買っている。
雑種の野良犬なんか、田舎にしないないんだろうなと思ってました。
ペットショップのサイトを探しながら、うっすらと脳裏には「田舎に行けばタダで犬がもらえるのにな。犬に数十万払うのもバカバカしいな。田舎に行って野犬を拾ってこようかなぁ」とも思ったりしました。
まぁ、当時は車も持っていなかったので、野犬を拾っても持って帰ってくる方法がなかったので、結局はペットショップで買うしかないと思っていたのですが(笑)
ところが、調べてみたら、私が住んでいる千葉県でも、大量の犬が殺されていることを知ったのです。

「どこでも里親募集中」にも色んな犬がいて、選ぶのに迷うほどでした。
どの子も可哀相で、うちで飼ってあげたいと思ってしまうからです。
私は、どんな犬が来ても愛せる自信がありました。
だから、条件で検索してみることにしたのです。
「中型犬」「留守番できる」「メス」「2歳」という条件でした。
私はパートナーと共働きだったので、昼間は家に誰もいません。
留守中に吠えまくられたら、買ったばっかりの家のご近所さんといきなりご近所トラブルになってしまいます。
また、子犬にはしつけが必要ということは勉強していたので、出来ればすでにしつけのできている成犬がいいと思っていたのです。

ヒットした犬は、たった1匹だけでした。
それが、現在の我が家の犬「ナナコ」です。
預かりボランティアさんのブログを見ると、そのお宅も共働きのようでした。
そして、なかなか里親希望が現れないとも書いてありました。
それなら、我が家で引き取ったらいいのではないかと、一目見て思ったのです。

◆おばさん、ナナコに会いに行く◆

ドキドキしながら初めて預かりボランティアさんに連絡を取って、「お見合い」をすることにしました。
愛護団体詐欺という話もネットで見ていたので、少し警戒もしていました。
そのお宅は、うちと同じくらいの大きさの一軒家でした。
ご夫婦で預かりボランティアをされていて、お子さんもおらず、共働きで、まるっきりうちと似たような環境でした。
そして、とても人当たりの良いご夫婦でした。
そこで出会ったナナコは、とてもおとなしくて、やせっぽちの犬でした。
いつもはハイパーな犬だそうで、「今日は随分おとなしいね~」とボランティアさんが笑っていました。
私は犬を飼った経験がないこと、何かあったら何でも質問してもよいか、犬を飼ったことがない代わりに今まで犬を飼うためにどんな勉強をしてきたか、何故保護犬にしようと思ったか、犬を飼うために一戸建てを買ったこと、もしこの子をくれたらこの子のためにドックトレーナーの資格を取りに行く予定でいることなど、「犬を飼いたい!」という気持ちをとにかく熱弁しました。
特に犬を飼うためにアピールする意図はなかったのですが、本当に犬が欲しいという気持ちが溢れて止まりませんでした(笑)
その熱意が伝わったのか、「独身」「未婚」「パートナーと同居」というあまり条件の良くない私でも、無事に犬を飼う許可を得ることが出来ました。
(当時は自分があまり条件が良くないという意識はありませんでしたが、今の私なら「本当にちゃんと飼えるの?」と警戒してしまう条件だったと思います)

ボランティアさんに改めて我が家に来てもらい、家の一階をチェックされました。
正直あまりいい気分はしませんでしたが、それが条件なのでお風呂まで見てもらいました。
「なぜお風呂まで?」と思ったら、どうやらシャンプーの時にお風呂の窓から逃げてしまうこともあるということでした。

◆我が家にナナコがやってきた!◆

それから数日後、とうとうナナコが我が家にやってきました。
子どものころから夢だったものの、数日間は「うちに犬がいる」という状況が信じられませんでした。
ちょうどその時、私が仕事の合間だったこともあり、お休みの取れやすい状況でした。
加えて、ドックトレーナーの学校も通い始めているところでもありました。
ちょうど数日、休みの取れるタイミングだったので会社を休んで、ドックトレーナーの勉強の復習をしがてらナナコにつきっきりでうちでの過ごし方を教育することにしました。

ケージでの留守番はできるようでしたが、クレートでは過ごしたことがない様子だったので、クレートトレーニングを行い、屋内トイレも完ぺきではなかったようなので屋内トイレのしつけもしました。
しかし、ナナコはきちんとそれらを習得し、すっかり留守番もできるようになりました。
心配していた無駄吠えもしない子だったので、とても助かりました。
(一応犬が来る前に、ご近所さんにはお手紙を出して、「しつけはしますがもし迷惑を書けたらすみません」とお断りしてました)

このような経緯で、ナナコは我が家にやってきました。
活発で賢くて可愛くて綺麗な子で、今でもしみじみと本当に最初の子がナナコでよかったと思っています。
検索した時にナナコ1匹しかヒットしなかったことも、預かりボランティアさんが寛容な人だったことも、初めてお見合いに行った子がナナコだったことも、すべて運命だったと感じています。

今ではナナコが他の犬にしつけもしてくれるので、とても助かっています。
ナナコでなければ、そのあとの預かりボランティアもできなかったかもしれません。
ナナコは今では推定10歳。コゲ茶の毛も、だいぶ白くなってきてしまいました。
まだまだ元気ですが、犬の年齢で言えば高齢です。
もっともっと長生きして欲しいし、いろんな場所に行って、楽しいことをもっとたくさんしたいと思っています。

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優庵
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