アイドルの異常さ

 最近、女性アイドルのライブ映像をよく見る。ライブをお客さんが撮影してSNSにあげることを許されている(むしろ推奨されている)みたいだ。全編通じてではないのだろうが、すごい試みだと思う。


 今までもそういうことをしているグループはあったと思うが、いわゆる地下アイドルに多かったような気がする。それが今ではテレビで引っ張りだこのアイドルも武道館やアリーナを埋められるほどのアイドルもファンによる撮影を許している。


 ライブ映像をSNSにあげることのメリットがデメリットを超えていったのだろうと思うと本当に多くの人が知恵を出しながらファンに満足感を与えつつお金を生み出す方法を考えていることに感動する。


 先日たまたま見かけた映像に前列の別のファンの方が映像とは別の画角にカメラを向けている姿が映っていた。あたりまえのことではある。何百人、何千人にそれぞれ推しがいて、推しが上手にいる人もいれば下手にいる人もいる。だが、舞台に立ったときに自分にカメラが向いていないことなんてわりと簡単にわかる。舞台からお客さんの顔はよく見えるなんて言う人はよくいるが、これは意外と本当にそうだ。だからカメラが向いていない、向いているカメラが少ないことにアイドルは気づいているし、それをわかっててもなお笑顔で最高のパフォーマンスをおこなう。とんでもないメンタルをしてる。


 人気なんてものは今の時代SNSのフォロワー数とかバズりとかを見ればすぐにわかってしまう。楽曲のポジション、歌割りとかでもわかってしまうものなのかもしれない。でもそれはまだマシというか、数字上のものであって目視できていないから事実と異なる可能性だってある。ところが、ライブで向けられるカメラの数というのは目の前で起きていることであり、メンバー間の人気格差を目の当たりにする瞬間なはずだ。最前列のファンが自分には目もくれず他の子を見ていたら「この人は私を見に来たわけでもグループを見に来たわけでもなくあの子を見に来たんだ」と思わないわけがない。

 それでも最高のパフォーマンスをする原動力はなんなのか。自分を見ないファンを振り向かせたいなのか、それともどこかで自分を見てくれているファンに素敵な姿を見せたいなのか、はたまた現状の立ち位置でやるべきことをやりきるという責任感なのか。いずれにせよ常人にはわかり得ないメンタルがなければアイドルなんて仕事はできない。


 僕は好き勝手生きてきた人間だし人にあれダメこれダメと言える人間ではないから、いずれ子どもができたとしても基本的にはオールオッケーのスタンスでいたいとは思うが、もし仮にアイドルになりたいなんて言おうものなら唯一止めてしまうかもしれない。まあ自分の遺伝子を継ぐ子どもがアイドルになれる容姿を持ち合わせるとは到底思えないのだが。

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