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出口調査から移民問題を考える
大統領選中にトランプが「ハイチ人はペットを食べている」といった炎上発言をしたことがあったが、こうした発言も含めて、有権者が移民問題をどのように捉えていたのか。NBCの出口調査から、その実態が少し垣間見える。
今回の選挙結果のデータによると、黒人男性やヒスパニック男性の多くがトランプ支持に回ったことがわかる。さらに、女性に関しても、バイデン支持が多かった前回に比べて、ハリスへの支持は大幅に減少している。つまり、すべてのマイノリティ層においても黒人女性であるハリスへの支持は予想外に低く、トランプの人気が際立っていることがうかがえる。
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もしトランプが人種差別主義者であるとすれば、皮肉なことに黒人やヒスパニック、一定の女性層が人種差別主義者を支持したことになるが、注目すべきは民主党が特に移民が多いラテン系層の支持を失ったことである。ちなみに、一般投票でもトランプは500万票差をつけて過半数を獲得している。
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移民問題にフォーカスをあてると、意外にも有権者の関心は低く、移民問題を最も重要な課題と考えている有権者はわずか11%に過ぎない。重要な課題の順位としては、1. 民主主義への危機、2. 経済、3. 中絶、4. 移民、5. 国際問題となっており、移民問題は有権者の関心事として4位に位置している。
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ただし、民主党支持者と共和党支持者では注目する課題がかなり異なる。民主党支持者にとっては「民主主義への危機」が圧倒的なトップだが、共和党支持者では「経済」が1位で、2位が「移民問題」になっている。ただし、共和党支持者の中でも移民問題を最重要課題と回答した人は、経済と回答した人の半数にも満たない。
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仮に移民問題が選挙に影響を与えたとすれば、バイデン政権が発足から3年半の間、不法移民の制限を十分に行ってこなかった事実も無視できない。以下のグラフにあるように、国境からの不法移民の数は2023年12月をピークに減少し、今年2024年6月に出された大統領命令による管理体制の強化が原因で急激に減少した。つまり、大統領命令によって国境管理が可能であることが示されたわけだが、なぜ3年半の間、そのような管理体制を整えてこなかったのかが批判の対象となっている。
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その意味で今回の選挙結果は、有権者の反移民姿勢というよりも、国境管理が不十分であるという認識、つまりダムが崩壊して洪水が発生しているにも関わらず政府の対応が遅れているといった、政府のインフラ管理能力に対する不安の現れかもしれない。