民主主義崩壊
「民主主義をつぶすものは何か?」
答えは、話し合えない環境です。
民主主義というのは、話し合いによって機能するシステムです。
立候補者が何を言っているのかが分からないと、結局誰に投票していいのかわからず、投票から足が遠のいてしまいます。
投票率が低ければ、組織票に左右され、民主主義とは言えない選挙が行われてしまう。
でも、日本では日本人同士なので言葉が通じないなんてことはありません。
でも、言葉が通じるからといって、話が通じるとは限らりません。
「”平和”を知らねぇガキどもと”戦争”を知らねぇガキどもの価値観は違う‼」
僕が大好きなマンガ「ワンピース」で、七武海のドフラミンゴはこんなセリフを言っています。
これはつまり、境遇が違う人間は、違った価値観を持つということ。
もし、平和を知らない子供と、戦争を知らない子供が話し合ったらどうなるでしょうか?
僕はまともな話し合いにはならないと思います。
まず、「平和とは何か?」「戦争とは何か?」といったことが共有できません。
戦争の国の子供は、銃弾が飛び交う街中で空腹でペンを握る力さえない。
それなのに、平和の国の子供は、彼らが勉強を怠っているから平和になれないんだと思うでしょう。
空腹になったことも、しストレスで眠れないなんてことも経験がないので、「なぜ彼らは勉強しないのか?」と考えたとき、「勉強が嫌いだからだ」「努力が足りないからだ」という結論に至るのです。
逆に、戦争の国の子供は、常に疑いの目を持つので、平和の国の子供の言ってることを信じません。
騙しだまされの世界では、信じることは死を意味するので。
そんな背景を持つ子供たちが話し合いをすればどうなるか?
たちまち争いになるでしょうね。これが大人でも、一緒です。
このように、価値観が全く異なる者同士では、話し合おうとしても話にならないので、まともな議論ができません。
すると民主主義は破綻するので、どちらが国を統治するのか、武力での争いになるのです。
中東やアフリカなので独裁政権が興るのは、価値観の違う両者をまとめる術が独裁以外にないからです。
もし、独裁が成立しなければ、その国はバラバラに分裂して、常に混乱状態が続くでしょう。
これは遠い国でのお話し。
そんな風に感じてしまいますが、日本のような先進国でも共通の価値観がなくなれば、こういったことになってしまうかもしれません。
アメリカの政治学者チャールズ・マレーは著書『階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現』で、知識層と労働者層では、全く別々のコミュニティに暮らしていると、郵便番号(ZIP)と世帯所得の統計調査から明らかにしました。(「上級国民/下級国民」より)
マレーは、大学や大学院を卒業した知識層と、高校を中退した労働者層の軌跡を追って、その後の人生がどう異なるかを社会調査データから検証しました。
まず知識層の人たちはスーパーZIPと呼ばれる都市に集まります。
スーパーZIPとは、ワシントンD.C.やニューヨーク、サンフランシスコ(シリコンバレー)のようなグローバル化に適した都市で、近年クリエイティクラスの富裕層が目立っています。
マレーは、スーパーZIPに暮らすひとたちを「新上流階級」と呼び、彼らは「自分と同じような人と一緒にいた方が楽しい」という理由で集まっています。
朱に交われば赤くなるというように、モチベーションの高い仲間に囲まれた方が自分を高めてくれるからでしょうね。
そして彼は、マクドナルドみたいなファーストフード店には一切近寄らず、お酒はワインやクラフトビールで、タバコは吸いません。
ニューヨークタイムズや、ウォールストリート・ジャーナルなどの記事に毎日目を通しますが、TVは見ず、スポーツ観戦もしない。
休暇は、ディズニーランドやラスベガスではなく、カナダや中米の大自然の中で過ごします。
一方、高校を中退するような労働者層は、主に五大湖周辺のラストベルト(石炭、鉄鋼、自動車といった旧来の産業の衰退が進む地域)といった寂れた街に住み、そこでは薬物やアルコールに溺れるような人が増えているようです。
こうした問題行動を取る人の割合が増えると、コミュニティは崩壊し、町全体が「新下流級」に堕ちてしまうのです。
こういう人たちと、知識層の人たちでは話が合うはずがありません。
だからこそ知識層の人たちは、モチベーションの高い仲間を求めて大都会に移り、独自のコミュニティを形成していきました。
彼らからすると、労働者層のアメリカ人よりも、海外の知識層の方が話が合うのでしょう。
こうした現象は、アメリカだけではありません。
どこの先進国でも同じで、日本でも都心のIT企業に勤める人と、郊外の工場で派遣として働く人とでは趣味趣向=価値観はが全く違うでしょう。
こうした隔たりが大きく開いていくことで、やがて互いに何を言ってるのか分からなくなり、民主主義が崩壊する。
東京の小池都知事はよく、「ワイズペンディング」とか「コーポレートガバナンス」とかカタカナ言葉を使います。でも、有権者の多くは分かっていないかもしれませんね。
現に政治家が庶民と同じ言葉を使わなくなっています。
話が通じないどころか、この調子でいけば本当に日本人同士言葉が通じなくなるかもしれませんね。
さて、ここで最初の質問に戻ります。
「民主主義をつぶすものは何か?」
答えは、話し合えない環境ですが、それを作っているのが「格差」です。
知識格差による経済格差。
こうしたものが、日本人から共有できる価値観を奪い、民主主義を崩壊させていきます。
参考
「上級国民/下級国民」(橘玲)192-198頁
MMT(現代貨幣理論)が暴露した不都合な真実(YouTube-「新」経世済民新聞 三橋貴明 公式チャンネル)
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