「ホープ」第1話 #ジャンププラス原作大賞#連載部門
暗闇の中で聞こえてくる優しい女性の声。
「そう。あなたはこの世界を救う希望の光。生きなさい。そして世界を知りなさい。そしたらきっと…」
徐々に身体に感覚を感じ始める。
「はぁ…はぁ…はぁ」
「暗い…冷たい…体が…凍りそうだ…いやだ…誰でもいいから…助けて…助けて…!!!」
ハッと夢から目覚める黒髪の少年。
散らかった部屋のベットの上で、眠気まなこで頭を抑える。
「またか、、、」
眠たそうにベットから立ち上がり、玄関を開け外に出る。
差し掛かる日差しに眩しそうに手をあてがう。
家の前にはアリウムの花がポツンと咲いていた。
花の前にしゃがみ静かに声をかける。
「おはよう、じーちゃん、、、行ってくるよ。」
空は明るい星空が広がっている。
宇宙空間に2人乗りの小型宇宙船が飛んでいる。
船内では林檎を手に、モニターの地図をいじる先程の少年。
「う〜ん…こっちか?いや、こっちもいいなぁ…まいっか、さまよってりゃそのうちどっかに着くだろう」
少年は林檎をモニター脇に置きモニターから目を離して寝始めた。
その時、壊れた菊の紋章がついた大きな宇宙船が現れた。
大窓に全身に雲をまとっている男の姿が見える。
雲男「おい、見ろ!小船だ!へへっボロい船だがパーツくらいは売れるだろうよ!捕まえようぜ!」
機関銃席には氷を纏った男の姿。
氷男は少年の船を攻撃し始めた。
ダダダダダ
飛び起きる少年。
黒髪の少年「うわ!なんだこいつら!」
攻撃はエンジンに当たり、船は墜落していく。
雲男「おい!打ってどうすんだよ!墜落するじゃねぇか!」
氷男「は?あんなボロい船、金にもならねぇよ。おれの憂さ晴らしになる方がよっぽど価値があるさね。」
船長席では少年の船をモニター越しに見つめる軍服を着た男の姿があった。
軍服の男「ん、あの船は…?まさかな…」
男は船に見覚えがあるようだ。
とある星の更地に不時着する少年の船
「うわぁぁぁぁぁぁあ」
ドカーン
砂ぼこりの中から出てくる少年。
「いてて…参ったなぁどこだここ?」
周りを見渡すが何も無い更地が広がる。
「なんもねぇ星だなぁ。よっと、ちょっと散策してみるか。」
船からサーフボードのような乗り物をとりだす。
乗り物に乗って周りを散策するが何も見つからない。
「ほんとになんもねぇ…」
諦めかけていた時…
「ってうわ!?」
岩の影で倒れている茶髪の少年を見つける。
「おい、おまえ!大丈夫か???」
苦しそうに声を絞り出す茶髪の少年。
茶髪の少年「君は、、、誰、、、?」
カップ麺に食らいつく茶髪の少年。
茶髪「いやぁ、助かった!このままじゃ死んじゃうのかと思ったよ!ところで…君は?」
黒髪「おれか?おれはミュート。ウルゴス・ミュート。」
茶髪「よろしくミュート。僕はディケオス・フレン。」
ミュート「フレンか!よろしくな!」
ミュート「なあフレン、お前はまたなんでこんなとこで倒れてたんだ。」
フレン「あぁ…実は、たまたまこの近くを通りかかった時に、リドュの連中に襲われてさ…」
ミュート「リドュ?」
フレン「え、リドュを知らないの!?」
ミュート「うん、知らねぇな」
フレン「リドュを知らない人がこの銀河にいるなんて…リドュは銀河中で不死族の惑星を襲ってる悪の組織さ」
ミュート「あぁ、昔じーちゃんからそんな話聞いたことあるなぁ。で、その不死族ってのはなんなんだ?」
フレン「えぇ!?それも知らないの???」
ミュート「ああ!知らねぇ!」
フレン「はぁ…じゃあほんとになんにも知らないだね。仕方ない。この銀河の基本から説明するよ。」
ミュート「おお!助かる!笑」
フレン「まず、この銀河には3種類の人類がいるんだ。それぞれ短命族、長命族、不死族と呼ばれている。名前の通り短命族は寿命が100年前後の人類。長命族は500年前後。不死族は唯一寿命の無い種族なんだ。僕らはいわゆる短命族だね。」
ミュート「ほうほう」
フレン「長命族や不死族は見た目に僕らと違った特徴を持っている。長命族は髪や爪に特徴があって、特殊な物質で出来ていたり自然現象のような見た目だったり、住んでる星の文化によって異なった見た目をしてるんだ。例えば氷で文明を築いてる星の長命族は髪や爪が氷で出来ていたりする。そして不死族は髪や爪に加えて肌や身体にも特徴がある。法則は長命族と似たようなもので住む惑星の文明によって身体が植物や土なんかで出来ていたり様々なんだ。」
ミュート「なるほどなぁ。そういやさっき体が雲みてぇな奴に襲われたな。」
フレン「体が雲…って事はもしかしたら不死族かもね?てか、君本当に何も知らないのかい?ほかの種族を見たことは?」
ミュート「さっき襲ってきた奴らが初めてだったな!」
フレン「へぇ…」
不思議そうな顔でミュートを見つめるフレン。
フレン「ああ、それでね。さっき話した僕が襲われたって言うリドュの連中は不死族を狙って滅ぼそうとしてるんだよ。きっと不死の能力に対するやっかみかなんかだと思う。」
ミュート「へぇ、ひでぇやつらだな。」
フレン「ほんとにね。」
フレンは心底悔しいそうな顔をした。
フレン「で、そもそも、ミュートはなんでそんなに何も知らないんだよ?」
ミュート「おれさ、じーちゃんとアブリって惑星に住んでたんだけど、物心ついた時からずっと2人暮らしで、生まれて一度も星を出たことがなかったんだ。」
フレン「へぇ。じゃあなんで今はここにいるの?その故郷の星を出たってことでしょ?」
ミュート「あぁ。おれは家族を探してるんだ。」
フレン「家族?」
ミュート「そう。さっき言ったように物心ついた時からじーちゃんしか近くに居なかったから、父ちゃんも母ちゃんもあった事がなくてさ。そもそも他に家族がいるのかも分からなかった。俺の家族はじーちゃんひとりだったんだ。」
顔をうつむけるフレン。
フレン「なんか悲しいね。」
ミュート「ん?」
フレン「いや、家族を知らないなんて、悲しいなって思って。」
ミュート「そうか?知らないんだから悲しいなんて気持ちにもなんないぞ?」
フレン「へぇ、そんなもんかい?」
ミュート「そんなもんさ。それになフレン!じーちゃんがよ、父ちゃんも母ちゃんもまだ生きてるって言ってたんだよ!だからおれ絶対に家族を見つけてやるって、そう決めてこの銀河に出てきたんだ。」
ミュートは目を輝かせながら話し出す。
フレン「なるほど、そういう事だったんだ」
フレン「でも、1人で出てきたの?おじいちゃんは?」
ミュート「じーちゃんは数年前に死んだ。」
フレン「あ…ごめん…そうだったんだ…」
ミュート「へへ、気にすんな。じーちゃんはなぁ、おれの神様みたいな人だったんだぁ。」
フレン「へぇ、おじいちゃんの話も詳しく聞きたいな」
ミュート「そのうち話してやるよ。でも、その前に。お前がここにいた理由も聞かねえとな!襲われたってことは旅でもしてたんだろ?」
フレン「ああ、僕か。僕はリドュに復讐するために一人で旅をしてたんだ。」
ミュート「リドュってさっき話した悪いやつらか。復讐ってなんのだ?」
フレン「父さんの。」
フレンの顔が少し曇る。
ミュート「父さん?」
フレン「僕の父さんはリドュに殺されたんだ。」
ミュート「へぇ。」
フレン「僕の父さんはね、凄く優しい人だったんだ。いつも沢山の友達が居て、色々な人達と交流があった。特に、隣の星の不死族の友達とはとても仲が良かったんだ。僕らは短命族、彼らは不死族で種族は違ったけど、お互いに助け合って生きていたんだ。」
遠い過去を思い出すように空を見上げるフレン。
フレンの父であるイーヴンの家に友人のウッドがやって来る。
リザ・ウッド(森の不死族)「おいイーヴン!」
ディケオス・イーヴン(フレンの父)「おぉ、ウッド!」
ウッド「調子はどうだ?」
イーヴン「お陰様で順調だよ!特にお前んとこの木材は本当に質が良くて、この街の家を建てるのに必要不可欠だ!」
イーヴンの住む短命族の惑星には建設中の家が沢山あった。
ウッド「そりゃよかった!まぁ、おれんとこの木材は折り紙付きだからな!がっはっは!」
イーヴン「それにしてもウッド、最近はまたリドュのやつらの活動が活発になってきてるらしいぞ。気をつけろよ。」
ウッド「あぁ、おれら不死族の力を羨ましがってるバカ達だろ?大丈夫だよ。おれ達ボワの連中は木材加工の技術があるしそのために鍛えた身体もある。そう簡単にくたばらねぇよ!」
イーヴン「はは!まあそれもそうだな」
ウッド「それにしてもおれら不死族の力にやっかみだなんてほんと馬鹿なヤツらだよ全く。」
イーヴン「はは、まぁ、、、そうだよな、、、」
イーヴンは複雑そうな、意味ありげな顔をした。
ウッド「ん?そういやお前さん短命族だろ?やっぱりちょっとはおれらのことを羨ましいとか思ったりするもんなのか?」
イーヴン「まさか!短いとはいえ同じ命だ!生きる喜びは神が平等に与えてくださったものだ。限られた時間を精一杯生きて死ぬ。ただそれだけだ。」
イーヴン「まぁ、おれが死ぬ時にお前を悲しませちまうのが唯一の心残りだがな!」
ウッド「違ぇねぇ。お前が死んだ時は全身全霊で弔ってやるよ。」
イーヴン「ありがとうウッド。そのためにも間違ってもおれより先に死ぬなんてことは辞めてくれよ!」
ウッド「なに縁起でも無いこと言ってんだよ!当たり前だろ!笑」
楽しそうに笑いあう2人だった。
とある夜にベッドで寝ているイーヴン。
窓の外から入ってくる赤い光に目を覚ます。
イーヴン「んん…なんだ?」
窓の外を見ると夜空が真っ赤に光っている。
イーヴン「まさか!?」
家を飛び出るイーヴン。
夜空を見上げると赤赤と光る隣の惑星ボワ(ウッドの住む星)の姿が。
イーヴン「そんな…まさかリドュが…まずい!」
ガレージへ向かい急いで船の支度をするイーヴン。
そこへ眠そうなフレンがやってくる。
フレン「お父さん?どうしたの?」
イーヴン「フレン!起きてたのか?大丈夫だフレン。父さんは今から大事な人達のところに行ってくる。お前は家で母さんと寝ていなさい。」
フレン「わかった…」
フレンの母サンクも後ろからやってくる。
サンク「あなたどこへ?」
イーヴン「ああ、ちょっとウッドの所へ」
サンク「ねぇ、あなたアレ大丈夫なの???」
心配そうに真っ赤な夜空を見上げるサンク。
イーヴン「あぁ、大丈夫だ、何も心配ない。ちょっと様子を見に行くだけだ」
サンク「あなた気をつけて行ってきてね」
優しく微笑み返すサンク。
イーヴン「うん…」
イーヴンは何かを考えているような顔をしていた。
イーヴン「サンク…」
サンク「なぁにイーヴン?」
優しく聞き返すサンク。
イーヴン「おれはこの幸せを死ぬまで愛していたかった。」
少し考えて話し出すイーヴン。
サンク「?」
サンクはきょとんとしてる。
サンクに抱きつくイーヴン。
サンク「???」
突然のことにビックリするサンク。
イーヴン「フレンを頼んだ。」
サンク「ふふっ。えぇ、ちゃんと寝かしつけとくわよ。それよりどおしたの?急に抱きついたりなんかして。」
イーヴン「いやぁ、たまにはいいじゃないか笑」
笑うイーヴン。今度はフレンの前にしゃがみこんで顔をのぞき込む。
イーヴン「大きくなっなフレン。母さんは好きか?」
フレン「ふぇ?うん、好きだよ…」
イーヴン「ふふ、母さんの事、頼んだぞ。」
フレンの頭を撫でるイーヴン
イーヴン「それじゃあ行ってくる。」
夜空に向かって船を出すイーヴン。
朝になった街。
布団で目を覚ますフレン。
家の外が騒がしい。
目を擦りながら階段をおりて玄関をあける。
家の前には座り込む母サンクの姿とその周りに人だかりができていた。
人々な皆気まづそうな顔をしている。
ふと振り返るサンク。
サンク「フレン…」
その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
サンク「フレン…!」
サンクはフレンを強く抱きしめる
フレン「どうしたのお母さん?」
不思議そうに尋ねるフレン。
サンク「…」
サンクは震えながら声を押し殺している。
フレン「お母さん?」
サンク「…お父さんが…お父さんが…」
少しずつ声を絞り出すサンク。
フレン「?」
サンク「お父さんが…死んだって…」
フレン「!?」
凍りつくフレン。
サンク「お父さんはみんなのために…」
フレンはその場で固まったまま喋れなくなっていた。
悔しそうな涙顔のフレン。
フレン「父さんは大切なウッドおじさん達を助けるためにボワに向かって、そこでリドュの奴らに殺されたんだ。」
ミュート「、、、」
ミュートは静かに話を聞いている。
フレン「だから僕はリドュを絶対に許さない。復讐してやるんだ。」
ミュート「悪いな。辛いこと思い出させちゃったみたいで」
フレン「ううん、いいんだ。気にしないで。」
フレンの顔の強ばりが解けた。
ミュート「で、復讐の為に旅してて、その途中でさっき言ってたようにリドュの連中の襲われたって訳か」
フレン「そういうこと。それでこのディシェットに不時着してたんだ」
ミュート「ディシェット?」
フレン「あぁ、ディシェットってのはリドュが滅ぼした後の惑星の残骸の事さ。」
今いる荒野を見渡すミュート。
ミュート「へぇ、ここあいつらに滅ぼされた後だったのか。通りでなんもねぇ訳だ。」
フレン「ウッドおじさんの星もこんな風になっちゃったのかな…」
ミュート「…」
フレン「あ、でも、ぼくリドュに復讐するって言ったけど、まだ喧嘩なんて売った覚えがないんだよ。
何もしてないのになんで襲われたか分かんないんだよなぁ。はぁ。」
ミュート「はは!お前弱っちそうだからじゃねぇか笑」
フレン「そんなぁ!酷いこと言うなぁ!」
フレンは怒りながら軽くふてくされる。
すると突然どこからか声がした。
???「そうだよ、お前が弱そうだからだよ!」
2人「!?」
我に返る二人。
???「まだ息の根があったとはな。しぶとい奴だ。」
そこには炎の髪を持つ男の姿が。
フレン「僕を襲った奴だ!」
炎髪男「話は聞いてたぜ。お前リドュに楯突こうってんだな。上等だ。ここでリドュの恐ろしさを教えてやるよ!」
フレン「そんな!僕を殺したって何にもならないだろ!なぜ僕なんだよ!」
炎髪の男「へへ、お前短命族のガキだろ?短命族は珍しいから奴隷として高く売れるんだ!生け捕りにして売りさばいてやるよ!」
フレン「や、やめてよ」
ミュート「へん!やれるもんならやってみろ!おれが相手だ!」
話に割って入るミュート。
炎髪の男「あん?」
フレン「ミュート!?ダメだよ!勝てない!」
ミュート「そんなのやって見なきゃわかんねぇだろ!」
炎髪の男「なんだこいつ?仲間か?はぁ、お前バカなのか?またはアホか?俺は長命族だぞ?」
ミュート「だからなんだ!」
炎髪の男「あ?だからなんだじゃねーだろ!?はぁ。まあいい、折角だ2人まとめて奴隷にしてやるよ!!!」
ミュートの言動に驚きながらも襲いかかってくる炎髪の男。
炎髪の男がすごいスピードでフレンの元に近づいてきて蹴りを入れる。
吹き飛ぶフレン。
フレン「うわぁ」
ミュート「おい!フレン!」
炎髪の男「へへ、所詮短命族。大人しく捕まってろ。」
ミュート「くそう、コノヤロウ!」
相手に殴り掛かるミュート。
こちらも炎髪の男に負けないスピードで相手に近づき殴りかかる。
炎髪の男「うわぁ!くそ、なんだコイツ。」
ミュート「よくもフレンを蹴ったな!」
ミュートと炎髪の男はお互い互角の戦いを繰り広げる。
炎髪の男「くそう、お前何もんだ、なぜ短命族の癖にそんなに強い!」
ミュート「うるさい!いい加減おれらを諦めてどっかへいけ!」
炎髪の男「へへ、せっかくの商品だから傷つけずに手に入れたかったが…仕方ない」
炎髪の男はミュートに向けて口から炎を吹き出す。
ミュート「うわぁ!あちい!」
ミュートの服が一部焼け焦げる。
炎髪の男「全く、短命族ごときが調子に乗るなよ。おら!」
今度はフレンに向けて炎を吹き出す。
ミュート「フレン!」
ミュートがフレンを庇う形で炎を手のひらで受け止めた。
すると何故か炎が無力化された。
炎髪の男「!?」
ミュート「え?なんだ今の???」
手のひらを見つめるミュート。
炎髪の男「おい、お前今何しやがった!」
ミュート「まあいい。よくもフレンを狙ったな。どりゃぁ!!」
殴り掛かるミュート、吹き飛ぶ敵。
炎髪の男「ぐわぁ!」
炎髪の男「くそ!なんだお前!なんで短命族のお前に長命族のおれが負けなきゃなんないんだ!そんなこと有り得ないだろ!?」
ミュート「なんださっきから短命族だの長命族だの!単に俺の方が強かっただけだろ?」
フレン「違う。」
話に割って入るフレン。
ミュート「???」
フレン「普通、長命族は短命族より圧倒的な身体能力を持っている。だから僕ら短命族が長命族に勝つなんて事そうそう無い事なんだよ!」
炎髪の男「そうだ!おかしい!一体お前はなんなんだ!」
ミュート「知らねぇよそんなん!どうでもいいけどもういいだろ!お前どっかいけよ!」
炎髪の男「くっそう。覚えてろよ。」
逃げていく敵。
フレン「ありがとうミュート助かったよ。」
ミュート「礼なんていいよ。おれも危ないとこだったし。それよりあいつ短命族だの長命族だの言ってたけどさぁ、どういうことだ?」
フレン「ああ、その事ね。」
フレンが説明を始める。
フレン「僕らみたいな短命族はさっき言ったように寿命は100年前後で身体能力があまり高くないんだ。個体差も少なくてみんな似たりよったりの能力値なんだよ。そして、そんな僕ら短命族はこの銀河の中ではとても数の少ない種族で、もちろん表立っては他の種族とも友好を保っているけど、裏では僕らを捕まえて見世物にしたり奴隷にしたりって事が行われてるらしい。」
ミュート「趣味の悪いことしやがるな。」
フレン「それに対して長命族や不死族はみな身体能力がとても高いんだ。そして個体ごとに何かしらの特性を持っていたりする。さっきいった髪や肌の特徴も関係があるみたいで、その特徴によって色んな能力を持ってるんだ。例えばある種族は傷を瞬時に治癒する力があったり、ある種族は何かの物質を体に纏って自由に操ったり。さっきのやつは炎を操る長命族だね。」
説明を終えたあと付け加えるフレン。
フレン「あ、でも、もちろん表向きにはみな友好的なんだよ。さっきの相手はリドュの連中だったから攻撃的だっただけ。僕の友達にも長命族や不死族はいっぱいるしね。」
ミュート「なるほどなぁ。でも、じゃあおれがあいつの炎を手で受け止めたのはなんだったんだ?」
フレン「う〜ん…」
フレン「僕もあんなの初めて見たよ。しかも短命族のミュートがどうしてそんな事が出来るのか…」
ミュート「ふーん」
フレン「君は本当に短命族なの?実は他の種族だとか…いやでも長命族や不死族の身体的特徴は見られないからなぁ…う〜ん」
ミュート「まあ、いいや!細かいことは分かんねぇけどあいつ追っぱらえたし!」
フレン「ん〜まぁとりあえずはそういう事にしとこうか。でも本当にありがとうね、助けてくれて。」
戦闘で敗れた服を着替えるためにミュートが船の中から服を取り出している。
フレン「そういえば、その船、随分古い型の船だね。」
ミュート「あぁ、じーちゃんの形見の船だからな。昔、じーちゃんがこいつで俺を連れて、故郷の星から逃げてきたんだ。」
フレン「逃げてきた?」
ミュート「そう。おれはちっちゃかったから覚えてないんだけど、じーちゃんと住んでたアブリから遠く離れた銀河におれの故郷があったみたいでさ。その故郷が、そのリドュだっけ?アイツらに潰されてさ。」
フレン「あぁ…なんかごめんね」
ミュート「なんで謝んだ?」
フレン「いや、悲しい思い出思い出させちゃったかなって。」
ミュート「だから悲しくねぇって笑 リドュに故郷を潰されたこともじーちゃんから聞いた話ってだけで、おれ全く覚えてねぇし。」
フレン「ふーん、そうなんだ。…それでもやっぱり…僕は…悲しいと思うな。」
ミュート「…へへ、お前いいやつだな。」
フレン「ん?えへへ、そうかな?」
少し照れるフレン
フレン「そういえば、家族を探してるって言ってたけど何か手がかりはあるの?」
ミュート「無い!」
フレン「えぇ!?じゃあどうにもならないじゃないか!」
ミュート「まあ、銀河中探したらそのうち見つかるだろ」
服を脱ぎながら話すミュート。
フレン「はぁ、あきれた。銀河中を探すだなんてそんなの無茶苦茶な…って、ん?…んん!?」
フレンはミュートの背中を見て驚きを見せる
ミュート「どうした?」
フレン「ミュート、その背中の紋章!?」
背中には丸い紋章があった。
ミュート「ん?これ?なんか変か?」
フレン「いや、死んだ父ちゃんにも同じ紋章があって…」
ミュート「へぇ…って、ん?これ誰にでもあるもんじゃないのか?」
フレン「ないよそんなの!僕は父さんの背中でしか見た事ないもん。それに何故か父さんはその紋章をいつも隠してるみたいだったよ。人には見られたくないものだったみたいだし。」
ミュート「へぇ、おれじーちゃんしか人間知らないからみんな普通にあるもんだと思ってた笑」
フレン「おじいちゃんもその紋章があるの!?」
ミュート「ああ、全く同じやつがある」
フレン「もしかしてそれが手がかりになるんじゃないかな?」
ミュート「…なんのだ?」
フレン「家族探しのだよ!全く…」
呆れるフレン。
またどこからともなく声がする。
???「そうだな」
振り返る二人。
二人「!?」
そこには軍服を着た長身の男が立っていた。
軍服の男「その紋章は家族探しの役に経つだろうさ。ウルゴスの末裔。」
ミュート「今度は誰だ!さっきのやつの仲間か!」
軍服の男「いや、違う。奴らはリドュの名前を偽って悪事を働いてるただのチンピラだ。あんなやつらと一緒にするな。」
フレン「え!?リドュの手下じゃないの!?」
軍服の男「リドュの手下があんな雑魚なわけないだろ。それにリドュは基本的に不死族しか襲わない。それが奴らの信念だ。絶対に曲げることは無い。」
フレン「そ、そうなんだ…」
軍服の男「それより、さっきおれの部下がお前の船を打ったみたいだ。すまなかったな。」
ミュート「あぁあんときの!!!よくもおれの大切な船を壊してくれたな!」
軍服の男「だからその件はすまなかったと謝っている。それより、お前の背中の紋様、家族探しの役に経つはずだ。」
ミュート「どういうことだ!この紋章は一体なんなんだ!」
軍服の男「それを教える義理はおれには無い。だが、これだけは言っておこう。お前の祖父のようにお前の父と母にもその紋章は存在する。つまりその紋章がある人物を探していけば家族は見つかるかもしれんな。」
ミュート「お前!じーちゃんを知ってるのか!?それに父ちゃんと母ちゃんも!?」
軍服の男「はは…知ってるも何も…」
男の話を遮るように子分がやってきた。
雲男「アクシディアの頭〜!はぁはぁやっと追いついた!1人で獲物独り占めなんてずるいっすよ!」
ミュート「あ!お前はさっきの!」
雲男「おう、お前生きてたのか笑」
その男はミュートを襲った宇宙船に乗っていた雲を纏った男だった。
フレン「不死族…」
ミュート「よくもおれの大事な船を打ちやがったな!」
雲男「打ったのはおれじゃねぇ!仲間がいきなりやりやがったんだ。まあ、どっちにしろその船は頂くぜ?パーツを売りさばいて金にしてやる。」
ミュート「何を!この船だけは絶対手出しさせない!」
雲を纏う男「うるさい覚悟しろ!!!」
アクシディア「やめろ!」
2人のやり取りを制止するアクシディア。
ミュート&雲男「!?」
雲男「でも頭、せっかく仕留めた獲物なのに」
アクシディア「いいんだ。それより、お前たちその船じゃこのディシェットからの脱出も不可能だろう。見たところエンジンが1機破損してるみたいだからな。」
ミュート「お前らがやったんだろ!」
アクシディアがディシェットの奥を指指す。
アクシディア「奥へ進んでみろ。古い船の残骸が山積みになっている。そこから交換用のエンジンを探してみろ。お前らでも仮の取り付けくらいは出来る。近くの星までならなんとかもつだろう。」
フレン「あの、なんでそんなことまで教えてくれるんですか!」
アクシディア「さぁな。気まぐれ…と言ったところか…」
少し間を置いて話し始めるアクシディア。
アクシディア「せいぜい頑張って生きてみろ、ウルゴスの末裔。そして、おれに未来を見せてくれ。」
ミュート「未来…?」
アクシディアは背を向けて立ち去っていく。
ミュート「あ、待て!まだ聞きたいことが!未来ってなんなんだよ!末裔って呼び方もそうだ!どう言うことだよ!おい!」
フレン「もういいよ、変に深追いするのはよそう!早く船を治してここから出なきゃ」
ミュート「くっそぉ〜」
雲男を連れて遠ざかっていくアクシディア。
アクシディア「光の指し示す先は希望か或いは滅亡か。どんな未来を見せてくれる。ウルゴス末裔よ。」