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満腹中枢

息子が生後1ヶ月の頃、ミルクを欲しがるのに与えると吐き戻すと相談したところ、「まだ満腹中枢が発達してませんからね。飲み過ぎて吐き戻しちゃうので、時間見て判断してください。」と言われて大層驚いた。
満腹感が分からないとは不便な生き物だな赤子。よく人類はそんな未発達な状態で生まれて今まで生存してきたものだと思った。
ちなみにこの感想は育児の中で繰り返し抱いている。

その後の乳児期は後にアレルギーが判明したこともあり、母乳のみになるとかなり頻回に授乳を求めたので、満腹中枢まだかと祈るようにして過ごしていた。
しかし今や立派な偏食家に育った息子は、食事が終わると次の食事のメニューを尋ね、間食に食べていいものがあるか確認し、好物が出ると食べ過ぎる傾向がある。

先日はというと、餃子10個とご飯をおかわりしたのにまだ食べたいと言うのでお腹を撫でると見事なポンポコリンであった。
聞くと「さっきから胸が苦しい。」と言うではないか。
「お腹いっぱいやそれは!!」
母は思わず叫んだ。満腹中枢はまだ仕事をしていないようだった。これまでの満腹中枢よ早く育て〜、と念じていた日々が走馬灯のように頭を過ぎった。

頭を抱えたい気持ちを抑えて深いため息をついた私に、心配そうに息子が言う。
「お母さん、僕のお腹治る?」
まるで初めて食べ過ぎによる腹痛を経験したかのような言い草だった。もはや食べるのをやめてじっとしているよう諭すのが精一杯であった。

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