幻惑
「それ」には気を付けた方が良いぜ。
何故って? たいそうタチが悪いんだよ。聞いたことあるだろう? 魅入られたら二度と抜け出せないモノだってことくらい。
話に聞く程度の知識で十分さ。現物はそれ以上らしいからな。
なんたって、「それ」に魅入られた奴らを取り締まったって、取り締まる奴らもひっくるめて魅入られちまうってんだからさ。
随分オソマツな結果だとは思わないかい?
ミイラ取りがなんとやらだ。
なに? なんで俺がこんな話をするかって?
決まってんだろうが。ここから先は「それ」が住む世界だからさ。この門をくぐる奴は二度と帰ってきやしないのさ。
で、だ。お前さんはここから先に行ってみるか? それともやめる?
選ぶのはお前さんだ。俺は行くと選んだ奴の為にここを開けてやるだけだからな。
さぁ、どうする? 行くのもやめるのもお前さん次第だ。
時間はいくらでもある。ゆっくり選ぶんだな。必要会ったら声掛けろよ。いつでも良いからさ。