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兵法書を読む順番

皆さまこんばんは、軍師の弓削彼方です。
兵法書を学ぶ時は自分が興味を持った書から読むのが一番ですが、それでも「お勧めの読む順番があるのかな?」と思う方もいることでしょう。
そこで本日はそのことについて触れたいと思います。
今回は武経七書に限ってお話ししていきます。

1.始まりの書「孫子」

兵法を学ぶとなれば、まず一番最初に孫子を読むべきです。
孫子を一通り学べば、兵法の要点の殆どを知ることができると言っても過言ではないぐらい重要な要素が詰め込まれています。
また他の兵法書を読む時に、孫子の内容と比較しながら読んだ方が理解しやすい場合が非常に多いです。
そう言う点から見ても「まずは孫子」と言ってよいと思います。

2.発展の書「呉子」と「三略」

孫子を読み終えたら、呉子と三略を学ぶことをお勧めします。
この二冊の中では先に呉子から読んでも三略から読んでも構いません。
呉子は抽象的な内容が多かった孫子と違い、当時の情勢を基にした具体的な内容が多く書かれています
ですので非常に読みやすく理解しやすい点がお勧めする理由です。
三略は軍事に関することよりも、内政や礼節と言った内容が重点的に語られています。
孫子で軍事に関することを中心に学んだ後に、三略で内政や礼節について学ぶことで、軍事と内政に関する知識を偏らずに持つことができるのがお勧めする理由です。
孫子を読んだ後に呉子と三略を読むことで、より深く兵法を理解でき、また軍事と内政の両面で幅広い知識を得ることができるのが、お勧めする理由となります。

3.深みを知る書「六韜」

上記の三冊を読み終わった後は、六韜を学ぶことをお勧めします。
六韜は武経七書の中でも飛びぬけて文書量が多い書ですが、その分幅広く細かい部分まで書き記されているのが特徴です。
六韜は文王と武王の質問に太公望が答えると言う形で話が進んでいきますが、主に文王との会話が内政について、武王との会話が軍事についての内容となっています。
軍を立ち上げる時に必要な人材の数や部隊編制、必要な武具の数やその仕様などが事細かに説明されています。
また実際の戦闘についてもいくつものパターンを例に挙げて戦い方を解説しており、孫子では抽象的だった実戦のイメージを掴みやすくなっています。
このような理由から、孫子・呉子・三略の後には六韜を読むことをお勧めします。

4.隙間を埋める「司馬法」と「尉繚子」

六韜まで読み終えたら、司馬法と尉繚子を読みましょう。
司馬法と尉繚子は軍法・部隊編制・兵の訓練と言ったような、軍などの組織管理に関する内容が多く書かれています。
孫子を始めここまで軍事について書かれてきた内容の殆どは、当然に整った軍があることを前提として話が進められています。
それに対し司馬法と尉繚子はまず整った軍を作るために、軍法を始め法令で組織を整えること、そしてその法令を守らせるために違反者は厳しく罰することを説いています。
またその法を守らせるためには君主や将軍には礼節や人徳が必要だと説き、一方的に法で縛り厳しい罰を与えることで服従させるわけではないことも説いています。
このように孫子などではあまり語られなかった軍と言う組織自体に関する内容と、法令と罰、その前提となる礼節と人徳について細かく述べられており、まだ語られていなかった隙間を埋めてくれる兵法書となっています。
どちらを先に読んでも構いませんが、次の書に行く前にこの二冊を読み終えると順序が良いと思います。

5.まとめと復習の「李衛公問対」

李衛公問対は一番最後に読んだ方がよいと思います。
李衛公問対は武経七書の中では一番新しい書です。
他の六書が2500年ほど前に成立したのに対し、李衛公問対は1400年ほど前に書かれたものなので、他の書と比べて大きな時間の隔たりがあります。
そのおかげなのか、李衛公問対では他の兵法書の言葉や著者である孫武や呉起の話、歴史上有名な曹操や孔明と言った人物の話がよく出てきます。
話の進み方は、太宗が「孫子にはこう書かれているが、それはこういうことなのだろうか?」と言う具合に尋ね、臣下の李靖が「孫子がその言葉で伝えたかったのは・・・」と言う風に答えていく会話形式になっており、理解しやすい形で兵法の要点を学べるようになっています。
すでにお話しした通り、他の六書の内容について議論されている場面も多いため、まずは李衛公問対以外を読んで他の書の内容を知り、その上で太宗と李靖が議論している内容を読んだ方が理解しやすいと思います。
また他の書の内容を再度確認し、自分の理解が正しいかも知ることができるため、李衛公問対は一番最後に読んだ方が良いのです。
このような理由で、李衛公問対は最後のまとめと今までの復習と言う位置づけが相応しいと思います。

■兵法書を読む意義

今回は私がお勧めする読む順番をご紹介しましたが、これはどの書から手を付ければよいか分からないと言う人向けの手引きのようなものです。
当然自分が興味を持った書から先に学んでいくと言うのも間違いではありませんし、今すぐ必要な知識から学んでいくのも間違いではありません。
自分の目的に合わせて読む書を選んでください。
前に一度お話ししましたが、兵法書を読む目的の一つに「兵法を通じて世の中の原理原則を知る」と言うことがあります。
皆さまが兵法を学ぶ事で世の中の原理原則を知り、それを基に自分の生き方に応用することができればより良い生き方を出来ると思います。
この記事がその手助けになれば幸いです。



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