見出し画像

軍隊の階級徹底解説

皆さまこんばんは、弓削彼方です。
今回は軍事学の話として、「軍隊の階級」について解説します。
分かりやすい解説は動画をご覧ください。
動画は概要欄で時間指定がしてありますので、見たい部分だけすぐ見れるようになっています。

いつもの注意事項ですが、軍隊の階級も国や時代によって変わる事が多い部分です。
今回も皆さまが歴史としてよく学ぶであろう、第二次世界大戦前後の陸軍を基準に解説していきます。



・階級の大きな分類

軍隊の階級は大きく3つの層に分かれています。
一番下が「兵」、その次が「下士官」、そして「士官(将校)」です。
士官はさらに3段階に分かれていて、尉官・佐官・将官となっています。
今回の解説では、後ほど説明する准士官は下士官として解説します。
また、士官と将校と言う言葉は同じ階級の層を指しますが、厳密な意味は違っています。
これについては次回のおまけ話で解説します。

兵の階層

兵は大体4つの階級で成り立っています。
徴兵制の国では、成人男性が2~3年この階層で兵役を務めます。

・二等兵
一番下っ端の基礎訓練中の兵士が二等兵になります。
大体半年、長くても1年もすれば自動的に一等兵になります。

・一等兵
大半の兵士がこの階級です。
この中で古参・新参(先輩・後輩)の違いはありますが、軍隊の規則上は古参・新参は関係なく同じ扱いとなります。
そして、徴兵制の国では大体この階級で退役します。
次々と新しい兵が入ってくるので、2~3年程度の兵役義務を終えたらどんどん出て行くという感じです。

・上等兵
兵士の中では少しエリートになります。
勤務態度が真面目で他の兵士の模範となる者や、剣道や柔道などの特技があって教官の指導の手伝いを出来る者などが選ばれ、同期の中で4・5人に1人が選ばれていました。

・兵長と伍長勤務上等兵
兵長は、第二次世界大戦の勃発による軍の大幅増員に伴って兵士が増えすぎたせいで、一つ上の伍長では兵士をまとめるのに人手が足りなかったことから、まとめ役として新設された階級です。
伍長勤務上等兵は非常に特殊なもので、第二次大戦前の皆さまの国である日本で、特に優秀な上等兵が伍長とほぼ同じ任務と権限を与えられた状態です。
定員の関係で伍長を増やせなかったので、伍長となる見込みのある兵につばを付けていた状態だと思えば大体合っています。
伍長勤務上等兵が退役し、戦争が起きて再度徴兵された時には、下士官として採用される特典がありました。

下士官の階層

下士官は伍長・軍曹・曹長の3階級から成るのが普通です。
直接兵士を指揮する分隊長として働いたり、より上位の部隊の先任下士官や経理主任などとして働きます。(部隊のついての解説はこちら)
下士官が兵と決定的に違うのは、兵は兵役によって誰もが強制的になりますが、下士官は自らが希望して試験を受けるか、上官からの推薦で試験を受けて合格して、初めて着任できる階級です。
ですので、誰もがなれるわけではなく、また自らなろうと言う意思がなければ下士官にはなれません。
通常ここから先の階級は、自分で軍人になると決めて軍に就職した「職業軍人」と言われます。
制度上は、皆さまで言う所の下級公務員と同じ待遇でした。

・伍長
上等兵が試験に合格して最初に就ける階級です。
伍長の「伍」は古い制度の「五人組」の意味があります。
ですので、5人程度の兵士のまとめ役や、分隊長である軍曹の補佐役を務めている場合がほとんどです。

・軍曹
この階級が全世界で一番有名な階級だと思います。
映画やドラマで有名な、サンダース軍曹やハートマン軍曹がこの階級です。
直接新兵を指導する教官役だったり、分隊長として10名前後の兵士を率いる、一番兵士に近い下士官と言えます。
その国の軍曹を見れば、その国の軍隊の強さが分かると言われるほど、兵士と行動を共にする下士官です。

・曹長
この階層では一番影が薄い階級かもしれません。
中隊クラスの部隊の最先任下士官として助言役を務めたり、部隊の経理の責任者や、厨房関係の総責任者を務めていることが多いです。
一兵卒から鍛えられてここまで来た人が多いので、軍隊経験の長いベテラン中のベテランが多いです。

・准尉と特務曹長
准尉は通常「准士官」と言われます。
曹長がさらに上の階級である少尉になる前に、下士官から士官に進むための準備段階としての階級になる場合や、軍人としての教育中も軍人として扱われる国では、一応の階級として士官学校の学生にこの階級を任じたりと、国と時代によって様々です。
特務曹長は、伍長勤務上等兵の曹長版。いうならば、少尉勤務曹長みたいな感じで扱う国があります。
また、准尉の代わりに特務曹長の階級を用意して、曹長が次の少尉に進むための準備段階としている場合もあります。
准尉と特務曹長はあまり重要ではないので、覚えなくても構いません。

士官の階層

ここから先は、専門の軍事教育を受けたエリートです。
軍隊は兵と下士官で全体の7割から8割、残り2割ほどが士官と言われますので、士官になれるのは一部となります。
通常は、士官学校などで専門の教育を受けてから少尉に任官します。

■尉官
・少尉
エリート軍人の第一歩がここです。
士官学校などを卒業すると、通常はこの少尉に任官します。
40人前後の小隊長となるか、より上位の部隊の事務の責任者などを務めます。

・中尉
最先任の小隊長か、上位の部隊の副隊長や事務責任者を務めます。

・大尉
150人前後の中隊長を務める場合が多いです。
映画「プライベート・ライアン」の主人公であるミラーがこの階級です。
士官学校を卒業した軍人にとって、大尉は単なる通過点に過ぎず、同期は大体同じ時期にこの階級まで昇進します。
逆に最初は兵として徴兵され、自ら職業軍人の道を選んで伍長となり、才能を認められてたたき上げで尉官まで昇進してきた者にとっては、この階級が終着点です。
一兵卒から始まってここまで来れたら大したものです。
平時であれば、一兵卒から始まって退役間際に大尉に昇進し、そして長い軍人生活を終えれば上出来の人生と言えるでしょう。

■佐官
通常は佐官以上を高級将校と呼びます。
少佐になる前の大尉は、軍学校や軍大学校でより高度な軍事知識を学んでから任官する場合が殆どです。
また、士官学校を卒業した同期でも、この辺りから昇進の差が出始めます。

・少佐
ここから上は本格的な指揮官となります。
尉官までの部隊指揮官は、上からの命令を過不足なくこなせれば合格でしたが、少佐より上は軍全体の事を考えて自分の部隊を動かさなければいけなくなります
大隊長を務めるか、上級部隊の幕僚を務めます。

・中佐
連隊の副隊長や参謀、上級部隊の幕僚を務めます。

・大佐
同一兵科(歩兵だけ・戦車だけのように)で編制される最大規模の連隊の隊長を務めます。
事実上の現場での最高責任者と言っても過言ではありません。
兵士にしてみれば神様のような存在です。
よくあるゲームや小説で、国王や将軍を差し置いて実は敵の黒幕だったりする有名な階級です。

■将官
ここから先は軍人の中でも極一握りの人しかなれません。
士官学校を出た同期の中でも、特に優秀な主席や次席の者しか将官には昇進できない狭き門です。
陸軍だと「将軍」、海軍だと「提督」と呼ばれるのはここからです。

・准将
この階級は存在する国としない国があります。
旅団長を務めたり、上級部隊の幕僚になります。

・少将
師団長を務める場合が多いです。
もしくは上級部隊の幕僚になり、参謀長などの重要な職を務めます。
皆さまの国の昔の日本ですと、陸軍省とか海軍省などの局長クラスを務めることも多かったようです。

・中将
皆さまの国の昔の日本ですと、中将が師団長を務める場合が多かったようです。
他国では、さらに上の軍団長を務める場合が多かったようです。

・大将
平時の場合の最高位です。
軍司令官や陸軍・海軍大臣を務めるなど、歴史に名を残す人物になります。
日本で初めて大将の階級に就いたのは、あの西郷隆盛です。

・上級大将
一部の国にある階級です。
ナチスドイツ軍には上級大将の階級があり、軍司令官・軍集団司令官を務めていました。


さて、長くなりましたので、今回はここまでと致しましょう。
補足やまだ説明しきれていない部分は、次回に解説致します。
皆さまが気になっている元帥の解説も次回ですよ。

画像1


次の記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?