482: ハトの恋人たちのロマンティックな軌跡色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話…

パタタタ…
白やグレーの鳩が一斉に飛び立った｡
噴水がある広場に，走ってたどり着いた青年は，
息を切らしながら
「ご，ごめん。待たせちゃった」と
若い娘に声をかけた｡

女性は，鳩が一斉に飛び立った羽音で顔をあげ，少し向こうから全力で走ってくる青年を見つけ
パァッと輝く笑顔になって青年を迎えた。

「大丈夫｡ 鳩たちの動きを見ていたら
案外楽しくなっちゃって，時間を忘れていたわ」
「でも，こんなに手が冷たくなっちゃってる。
遅れに遅れた僕が言うのもなんだけれども，
体を冷やしちゃダメだよ。本当にごめんね？」
「この埋め合わせは，
ちゃ〜んとしてもらいますからね」
「もちろんだよ！僕は君のしもべさ！
何なりとお申し付けくださいお嬢様」
「まぁ！ゲンキンな人！」

恋人たちは無事出会えたことに喜びながら
笑顔で他愛無い会話を繰り広げ，
手を取り合い歩き出した｡

その後ろには，飛び立った鳩たちが
さーっと半円を描きながら舞い戻り，
公園に降り立つ様子が見える｡

これから2人は近い将来のことを話し合い，
それぞれの家に挨拶に行く段取りをするのだ｡
足取り軽い2人に幸あれと，
公園にいたものたちはエールを送る｡
そんな2人のあの日の公園の色が，
この瓶には入っています｡

お手に取っていただくと，
貴方にもお裾分けが来るかもしれません…

鳩(dove)…
純潔な人，可愛い人という意味を持つ。
鳩(pigeon)…
騙されやすい人，若い娘という意味を持つ。