221: 甘い果汁を滴らせる南国の果実の色
森の奥深く
あなたが知っている
もしくは知らない場所にある色屋のお話。
ぷるん。
皮を剥くと予想とは違い,
真っ白な実と細かいタネが出てきた。
と,同時に甘い香りと共に果汁が手を伝う。
“おっとっと。
この果汁が服につくと
蜂が寄ってきちゃいそうだな〜。
分からなくもない甘い香りと味だけれどもな“
「お客様,お味はいかがですか?」
「とっても美味しいです。
白い実が出てきたのに驚きました。」
「みなさんそうおっしゃって驚かれます。
たくさん食べてくださいね」
そう言って薄い布をグルリと巻いた
民族衣装を着た女性はテーブルを離れていった。
“色屋さんに,この果実の瑞々しさと
皮の色を届けたら喜ぶだろうな〜。
しかし,最近ピンク系ばかりの納品だから
何かいいことがあったのかと
からかわれそうだよな〜。
この実,外の見た目は可愛い色なのに、
突起などが出て不思議な形だなぁ〜”
そう言いながらもう一つ果実を頬張った後,
青年は瓶を取り出しそっと色をすくいあげた。
生ぬるい夕方の風がテラスから
テーブルまで届く。
暑いはずだけれども,
そして果実もぬるいけれども、
不思議とこれでピッタリと
ピースがはまっている気がした。
辛い食事の後だからか,歩き疲れたからなのか,
その両方からか,トロリとした
ピンク色と,不思議な突起を持つ皮の果実は,
人々を魅了する。
今日もまた1人の青年を虜にした。
あなたもあの果実に触れてみてください。
たちまち虜になってしまうかもしれませんよ?