43: 週末スポーツの紅潮色
森の奥深く
あなたが知っている
あるいはしらない場所にある色屋の話。
風を切って走る。
空気の間を滑る。
地面と空の間に浮かぶ。
愛用の自転車で駆け巡る週末。
グッとペダルを踏み込むと,
ぐんと前に進み出す瞬間が,始まりを予感させて
ワクワクと,少しの不安とを沸き起こさせる。
もちろん,登りはキツいし,下りは気が抜けない。
これにライバルがいるとなると,
勝負の駆け引きも加わるので
本当にきつい。
でも,それも昔の話。
今は愛車のメンテナンスをして,
気ままに漕ぎ出す,週末の,
楽しみの為のスポーツになっている。
漕ぐ,進む。
次第に足と腕,背中にも
心地よい負荷がかかってきた。
身体中の血が湧き踊る。
きっと,赤くなりやすい頬がポウっと,
紅潮して見えているだろう。
昔はそれが恥ずかしくもあり,
それだけ打ち込んでいるのだという
誇らしさもあった。
どこまで行こう。
あの道の終わるところまで行こうか。
あの森の中の行けるところまで進んでみようか。
ああ,楽しい。
きっとこれからも愛車にまたがって,
自分の足で世界を広げ続けるだろうな…
という,スポーツ用の自転車に乗った方が,
偶然店の前に辿り着き,
驚きながらも立ち寄ってくださり、
あまりにもイイお顔で店内を見ていらしたので,
色を取らせていただいたのです。
今でも,季節の変わる頃に森の色の移ろいを
楽しみながら,訪れてくださって,
訪れた先々のお話を聞かせていただきます。
ご自分の足で進まれるからでしょうか,
取りこぼしてしまいそうな小さな色の
素敵なヒントをくださいます。
次に訪れてくださるのは,
もう少し季節が進んだ頃でしょうか…
イイ色の頬を,貴方様にも見ていただきたいです。
お買い上げありがとうございました。
え?貴方も次は自転車で来てみる?
いいですね。
お待ちしております。