241: ささくれだった気持ちをとろけさせる甘やかなハグの色
森の奥深く
あなたが知っている
もしくは知らない場所にある色屋のお話。
バーーン!
「おじさま聞いて!
私とっても怒っているの!
クラスの男子が私を見てからかうし,
パパだってニヤニヤするのよ!」
「おや、もみじ。
そんな頬を真っ赤にしながら
プリプリと膨らませてどうしたんだい?」
「クラスの男子が赤い葉を見て
♪もみじ〜もみじ〜なぜ赤い〜?♪って
意味のわからない歌を歌って
葉っぱを降らすんだもの!」
「もみじは綺麗に色がついた葉は嫌いかい?」
「だって彼がずっとからかうんだもん!イヤダ」
「それはいけないな。
僕も,もみじが戦うのに加勢するよ」
カランコロン…
「もみじ〜,1人で走っていかないでよぉ〜」
「おや,姉さんまで来たのですか?」
「もみじが涙目で出て行くから,
パパがオロオロしちゃって…
私が様子を見に追いかけてきたの」
「パパもスオウも嫌い!」
「おや。
もみじをからかうのはスオウって言う子かい?」
「そう!いつも突いたり
髪を引っ張ったりするんだもん!」
「ふむ…
(チラリと姉を見るとニヤリと笑って頷く)」
「もみじおいで。僕がもみじに魔法をかけるよ」
ぎゅぅ〜。
可愛い姪に,元気が出るようにハグをする。
「もみじは可愛いからね。
皆がもみじとお喋りしたいんだよ。スオウも
もみじに気にして欲しかったんじゃないかな?」
「でも…イヤなんだもん…」
「怒るとますますイタズラするから,
ニッコリ笑って「ヤメテ」って言ってごらん。
そこから怒り顔で「でないと一生口をきかない」
って言ってみて,それでもやめないなら,
僕のお店に連れておいで。
2人で懲らしめてやろうじゃないか」
「…うんやってみる。。」
ぎゅう〜。もみじもハグを返してきた。
“可愛らしいお姫様もやる気になったようだね”
「あんたたち,仲が良さすぎ。
ほら,もみじの頬っぺたとココロの色を
汲んでおいたからお店に並べなさい。」
「ママっ!恥ずかしいじゃない!
もみじはおじ様が大好きなんだもん!」
「もみじがスオウ君と
そんな色のやり取りが出来るようになったら
僕は嬉しいんだけれどもな」
「もう!おじさまもパパと同じように言う!
でも,ニヤニヤはしないのね?」
「もちろんだよ。僕は大真面目だよ?」
ぎゅう〜。お互いにハグをしなおす。
「やれやれ。おアツイこと。
もみじ,帰るわよ。 アンタもまたね。」
「はい。義兄さんにもよろしくお伝えください」
カランコロン
振り返りながら遠くになるまで手を振るもみじ。
彼女が,とろけるような笑顔を向ける,その
相手ができる日が来るのが,
嬉しいような寂しいような気持ちを抱きながら
ドアを閉め,瓶を棚に置く色屋でした。
とろける笑顔,向けられたかな?