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223: ベリーを摘みに行く軽快な足取り色
森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。
ふんふふ〜ん♪
甘酸っぱい香りが立ち込める
ベリー農園のどこからか、鼻歌が聞こえる。
時には遠く、気がつくと,すぐ近くに。
あっているのかあっていないのか
捉え所のないリズムがゆるゆると聴こえる。
「八塩さ〜ん!ベリーのカゴ、
いっぱいになりました〜!」
ハタと鼻歌が途切れる。
「保冷バックにそっと移しておいておくれ!
潰すんじゃないよ!!そぅ〜っとだよ!」
「は〜い!(ちょっとつまみ食い)」
「食べすぎんじゃないよ!」
「はいっ!!」
ビクッと肩を跳ねさせて,
青年は数個のベリーを口に放り込むと、
またベリー摘みに戻って行った。
ふんふんふ〜ん♪
ふふふ〜ん♫
別の鼻歌も重ねて聞こえ出した。
「色屋,ご機嫌な鼻歌はいいけれど,
いい色は取れたのかい?」
「ええ。可愛らしい色が取れていますとも。
この農園は素晴らしいですね!
淡い色付きから,充分に熟した色まで,
いい香りと共に取り込めています」
「僕はこれらで作ってもらえる
八塩さんのスイーツが気になります!」
「色々できるよ。
甘いのから酸っぱさを残したのまでね。
それには口じゃなく手を動かしておくれよ!」
「もちろんですよ〜!ふんふふ〜ん♪」
「本当に調子がいいヤッコさんだよ」
「いや,私も楽しみです」
「お前さんはベリーのジャムが好きだもんね」
「ええ。1日の始まりに、ほのかに色づく
この色を,白いパンの上やヨーグルトにおくと
特別な1日が始まるような気がするんです」
「じゃぁ,さっさと色屋の仕事を終わらせて
ベリー摘みに参加しておくれな。
この農園中のベリーを摘まなきゃ,
店のスイーツやジャムには到底足りないよ。
端から食べてるヤッコさんもいるようだしね」
「美味しいです!」
「手!」
「(もぐもぐ〜) !」
んっんんん〜♪
ふんふんふふ〜ん♫
ふふ〜んふ〜ん♪
それぞれの鼻歌が,跳ねるように
染み渡るように,あちらこちらへと
場所を移動させつつ,広がっていく。
それらの音の答えるよう,ほんわりと
色が濃くなるベリーたちでした。
八塩さん謹製のベリージャム,
私も食べたいです…
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